上 下
377 / 388
第五話

ロンロール合議院

しおりを挟む
 メチャクチャ大変な一日を過ごした次の日の商業都市ロンロール。
 議院からの使いが合議員の一人の元に来ていた。

「なんだと!? 勇者達が戻ってきただと、馬鹿な……」

 合議院が依頼をしてから、まだ二日しか経っていないのに勇者パーティが戻ってきたという。

「……いやそうか。やはり失敗したということか。ほうら見てみろ、だから買い被りすぎだと言ったのだ」

「それがその……ちゃんとそれらしき遺体を持って来ておりまして」

「な、なんだと!? 一体どうやったら二日足らずで、見つけて戻ってこられるんだ?」

 彼らの予想では早くても2週間、遅ければ一月は掛かると予想し、それも結局見つけられなかったと失敗するだろうとも考えていた。

「これはどうやら、彼らへの考えを改めねばならんようだな」

 元々勇者の噂には懐疑的であった彼だがそこは商人。目の前で起きた現実はしっかりと受け止めた。

「合議員は全員集めているのだろう?」

「はい。ただいま招集中です」

「分かった。では直ぐに私も行こう」

「お願いします」

「そうだ。婦人も呼んでおけ、一応見分もしておくべきだからな」

「分かりました」

「それと兵団も展開させておけ」


「ふわぁぁ……眠い」

 ロンロールの合議院で待たされること2時間が過ぎていた。

 運んできた遺体を誰かが確認してもらえばそれで終わりだと思っていたが合議の義員達が集まるまで待たされることなってしまった。
 待たされた部屋は豪華な造りをしていて、ふかふかのソファに座ってのんびりしていたらウトウトと眠くなってくる。

 デルはずっと本を読み続けており、アティウラは拾ったポールウェポンが思ったよりも出来がよかったらしく嬉しそうに手入れを続けている。
 そしてセレーネはお金が入ったらどうするかという話をしていたが、今は俺の肩に頭を預けてすやすやと寝ていた。

 遺体となってしまったとはいえ報酬はかなりのものであり4人で山分けしてもかなりの間なにもしなくて生きていけるレベル。
 そうなると何処かに家でも買ってしばらくのんびりするのもありかもしれない。

「主様」

 何かに気づいたアティウラが手を止めて、窓から外を伺いだした。

「どうしたの?」

「外が騒がしい」

「外って……」

 その言葉にデルも窓から外を覗き見る。

「……なんか兵士っぽい人達がいっぱいいるみたいだけど」

「なんだそれ」

 セレーネを起こさないようにそっと動いて、俺も外を見てみるがそんなにいる様に見えない。

「げっ……」

 念のためサーチで調べてみると、合議院を取り囲むように100人単位の兵隊が展開しているのが分かった。
 普通の兵士以外にも魔術師と思われる人物もちらほら見受けられ、続々と後続がこちらに向かってきている。

「これって、どういうこと?」

 デルが不思議そうに聞いてくる。

「多分訓練の類ではないと思うけど」

 普通に考えれば俺達に関わることだろうけど。

「それでも一体何が目的なんだ?」

 やはり俺達が目標なんだよね? 四人を100人単位の兵士で取り囲むとか一体どうするつもりなんだ。
 もしかして口封じをしようとしているとか? いや下手に聖女を殺そうものならアデル教徒全体を敵に回すことになり王国相手の戦争よりも恐ろしいことになりかねない。

 だとすると……拘束するとか?

「いや今は話なんてどうでもいいか。俺達が窮地であることに代わりはないし、とにかく今すぐここに脱出しよう。ほらセレーネ起きて」

「報酬ですね!?」

「えっと残念ながら……」


「奴等はまだ揃わんのか?」

「それが……皆仕事が忙しいと」

「馬鹿者が! 今は仕事どころではないのだぞ。これはロンロールの明日がかかっている問題になのだ!」

 合議院は大店の商人達の寄り合いであり、元より全員が自分の店の切り盛りで忙しい身でもある。

 招集をかけて既に2時間以上が経過しているが、院に集まったのはたったの二人しかいなかった。
 いっそのことその二人で問題を解決すればいいのだが、そこが合議制の面倒なところである程度人間が揃って多数決で可決しないと問題解決に進めないのである。

「大変です!」

「なんだ?」

「勇者様方が部屋を出て行ってしまいました!」

「どういうことだ。まさか、こちらの動きがバレたのか!?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。

可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...