上 下
374 / 388
第五話

一応拘束してみた<13>

しおりを挟む
「なにより命の恩人だ。それにあの厄介な飛行物体を二つも破壊してくれたのだからな」

 そこまで知っているのか。一体どこから魔王は見ていたんだ? というかどこまで知っているのか凄く話をしてみたい。

 けど、この人と情報を共有することはさすがに危険な気がする。

「魔王、少なくとも人類の敵である貴方の今の目的はなんなのでしょうか」

 どうすべきか躊躇っているとセレーネが話に割って入ってきた。

「とても元部下の粛正だけに来たとは思えませんが」

「……聖女よ。この問題は人間や魔物……いや神や悪魔なども超えた、超法規的で世界全体の問題だ」

「世界全体の問題?」

 少し大袈裟な言い回しにも聞こえるが、実際世界全体の問題ではある。

「それはもしかして勇者様が先ほど仰っていたことでしょうか」

「多分、そうだと思う」

 ちらりと魔王を見てしまう。

「少しは話をしていたか、ならば話は早い。ではこれだけは言っておこう。この問題の解決に最も近づけているのはこの少年である」

「勇者様が?」

「そうだ。だから連れ帰りこの問題の早期解決をと考えていたがそれは余計だったようだ」

 拉致するのではなく、共闘しようとしていたってこと? なんて分かりづらい。

「問題解決のためであれば、私は勇者であろうと神であろうと休戦し共に戦うことを厭わぬ」

「……それほどの問題なのですか?」

 セレーネが俺の顔を見て聞くと黙って首を縦に振った。

「だが一つ懸念がある」

「懸念ですか?」

 おっと、この話でよくある流れが来た。これ話を間違えると殺されるやつや。

「少年よ。お前は集めたそれらをどうするつもりか?」

「もっとちゃんと管理しろって説教の一つでもして元の持ち主に突き返す。自分で使うつもりはない……まあ、さっき土竜の支配解除のために使ったから少し説得力が足りないけど」

 一応問題を解決するためにモンスターの支配を解除するためって名目はあるけどね。

「その言を信じるに値することが出来ましょうか? 少なくともそれだけで強力な武力を持つことになりえるものですので」

 マジシャンナイトっていう魔術師が疑問を突きつけてきた。

「……ふっ、ふふ」

「魔王様?」

 何故か笑い出す魔王。

「ふふふっ……すまん、余りに面白くてな。そうかハゲ共に説教をするのか、それは是非ともしてほしい。それなら納得だ」

 ハゲ共って宇宙人のことを言っているのか。やはり魔王様は正体を知っている? どこまでか分からないが魔王もあの連中を好んでいないのだけは分かった。

「魔王様、その様な小僧の言を信じるのですか?」

「使うので有れば既に使っていよう。あれだけのことが起きても彼はそれを選んですらいない。つまりそれを使うことがどれだけ危険かを理解している証拠だ」

「……申し訳ございません。口が過ぎていたようです」

「魔王様、こちらをどうぞ」

「そうか」

 マジシャンナイトが謝罪をしていると、ダークエルフが影からヌルッと人らしきものを浮かび上がらせた。

「ご苦労、渡してやれ」

「はっ」

 それは車から飛び降りて逃げたあの商人だった。しかし既に事切れているようで全く動かない。

「ああ!?」

 驚きの声を上げるセレーネ。

「必要であろう」

「何故殺した?」

 魔王に向かって汗を垂らしながらアティウラが問う。
 生粋の戦士である彼女には相手の恐怖が肌で分かるらしい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。

可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?

処理中です...