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第五話
一応拘束してみた<Ⅻ>
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「その通りなんだけど、例え魔王を倒しても直ぐ次が生まれるだけだし」
「つまり勇者様は殺したくはないと」
「ごめん」
「一応土竜を倒していただきましたし、アティウラも助けていただきましたしね」
「あれは……、ごめんなさい」
謝るアティウラ。
まあ、まさかのクールタイムなんてね。
「では……」
セレーネが魔王に回復魔法を使って目を覚まさせる。
「は!?」
目を覚まして正気に戻った魔王様は一瞬何が起きたのか分からないという表情だったが、直ぐに状況が整理出来たらしく頭を押さえた。
「何故殺さなかった?」
「一応土竜を倒してもらったのと、アティウラを助けてくれたので」
「そうか。こちらこそ迷惑を掛けた」
「それはいいのですが、貴方様の部下の方々が……」
「二人がどうかしたのか?」
「えっと、あっちで切り刻まれてバラバラになってる」
「なんだと!?」
すぐさま魔王様は立ち上がると倒れている二人の元へ。
「やってしまった……」
魔王は手を前に出すと何もないところから大きな本が出現し、宙に浮いたままそれはページを開く。
何かしらの文字らしきものが書かれているようだが遠いせいか自動翻訳が機能しなかった。
その宙に浮いた本が輝き出すと倒れているマジシャンナイトも同じく輝きだして切り刻まれて部位が復活していく。
「これは、蘇生術?」
「違う……こいつらはまだ生きている。ただの回復術だ」
え、まじで? これだけバラバラにされているのに生きていたのかよ。さすが魔王の側近てことなのか。
そして同じくダークエルフの方もそれで回復させた。
「とりあえずもう何をする様相でもないな」
「こちらもこれ以上戦うつもりもありません」
「まあ、こちらは本来の予定は完了しているからな」
「本来の予定?」
ああ、そうか。秘密結社の連中か。
「全ての処分しております」
「うむ」
ダークエルフがそう報告する。
おそらく黒タイツも傭兵も全員の息の根を止めたのだろう。
「……貴方も知っているのですね」
「少しな……だがお前の方が詳しいはずだ」
魔王様もこの世界の仕組みの一端を知っているのだろうか。
なにも全員を殺さなくてもと、一瞬やり過ぎと言いたくなるが実のところ魔王様の判断は正しい。どこであんな代物が存在していると知られてしまうか分からないので軒並み口封じするのは効率が良い。
分かっていても俺はそんな簡単に実行は出来ないけど。
「……って、あれ? それって俺も含まれていないか」
ヤバいことに気づいてしまった。
ここで生かされている理由は、もしかして情報を聞き出すためだとか?
「手際は問題ないが詰めが甘い」
「……はい?」
悩んでいたら、魔王の方から話し始めた。
「お前は魔術索敵が得意のようだがそれに頼りすぎだ。強い力というものは逆に察知もされやすい。使われていることが分かれば対抗する術はいくらでもある」
な!? そういうことか。俺はサーチを好き放題使っていたが範囲を無駄に大きくしたりで強い魔力を使ってしまったが故に、サーチが使われたと察知されていたのか。
要するに便利アイテムを使ったのではなく、俺がサーチに頼りすぎてアンチ魔法みたいな方法で索敵されないようにしていたのに全く気づけなかったんだ。
「慈悲心など、ここでは脚元を救われるだけだ」
ぐぬっ、分かってはいるけどやはり人を殺すのはどうしても躊躇いがあった。
「……むっ。いやこれは言い過ぎだな。私にも出来なかったことをされて少々嫉妬していたのやもしれぬ。そこは訂正しよう」
「え、あ、そうですか」
なんか意外にもあっさりだった。
「つまり勇者様は殺したくはないと」
「ごめん」
「一応土竜を倒していただきましたし、アティウラも助けていただきましたしね」
「あれは……、ごめんなさい」
謝るアティウラ。
まあ、まさかのクールタイムなんてね。
「では……」
セレーネが魔王に回復魔法を使って目を覚まさせる。
「は!?」
目を覚まして正気に戻った魔王様は一瞬何が起きたのか分からないという表情だったが、直ぐに状況が整理出来たらしく頭を押さえた。
「何故殺さなかった?」
「一応土竜を倒してもらったのと、アティウラを助けてくれたので」
「そうか。こちらこそ迷惑を掛けた」
「それはいいのですが、貴方様の部下の方々が……」
「二人がどうかしたのか?」
「えっと、あっちで切り刻まれてバラバラになってる」
「なんだと!?」
すぐさま魔王様は立ち上がると倒れている二人の元へ。
「やってしまった……」
魔王は手を前に出すと何もないところから大きな本が出現し、宙に浮いたままそれはページを開く。
何かしらの文字らしきものが書かれているようだが遠いせいか自動翻訳が機能しなかった。
その宙に浮いた本が輝き出すと倒れているマジシャンナイトも同じく輝きだして切り刻まれて部位が復活していく。
「これは、蘇生術?」
「違う……こいつらはまだ生きている。ただの回復術だ」
え、まじで? これだけバラバラにされているのに生きていたのかよ。さすが魔王の側近てことなのか。
そして同じくダークエルフの方もそれで回復させた。
「とりあえずもう何をする様相でもないな」
「こちらもこれ以上戦うつもりもありません」
「まあ、こちらは本来の予定は完了しているからな」
「本来の予定?」
ああ、そうか。秘密結社の連中か。
「全ての処分しております」
「うむ」
ダークエルフがそう報告する。
おそらく黒タイツも傭兵も全員の息の根を止めたのだろう。
「……貴方も知っているのですね」
「少しな……だがお前の方が詳しいはずだ」
魔王様もこの世界の仕組みの一端を知っているのだろうか。
なにも全員を殺さなくてもと、一瞬やり過ぎと言いたくなるが実のところ魔王様の判断は正しい。どこであんな代物が存在していると知られてしまうか分からないので軒並み口封じするのは効率が良い。
分かっていても俺はそんな簡単に実行は出来ないけど。
「……って、あれ? それって俺も含まれていないか」
ヤバいことに気づいてしまった。
ここで生かされている理由は、もしかして情報を聞き出すためだとか?
「手際は問題ないが詰めが甘い」
「……はい?」
悩んでいたら、魔王の方から話し始めた。
「お前は魔術索敵が得意のようだがそれに頼りすぎだ。強い力というものは逆に察知もされやすい。使われていることが分かれば対抗する術はいくらでもある」
な!? そういうことか。俺はサーチを好き放題使っていたが範囲を無駄に大きくしたりで強い魔力を使ってしまったが故に、サーチが使われたと察知されていたのか。
要するに便利アイテムを使ったのではなく、俺がサーチに頼りすぎてアンチ魔法みたいな方法で索敵されないようにしていたのに全く気づけなかったんだ。
「慈悲心など、ここでは脚元を救われるだけだ」
ぐぬっ、分かってはいるけどやはり人を殺すのはどうしても躊躇いがあった。
「……むっ。いやこれは言い過ぎだな。私にも出来なかったことをされて少々嫉妬していたのやもしれぬ。そこは訂正しよう」
「え、あ、そうですか」
なんか意外にもあっさりだった。
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