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第五話

敵の手に渡るくらいなら<Ⅱ>

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「これですね」

「あ、ちょっと!」

 サリ様の手の中にあったスイッチみたいのを奪った。
 それはなんともアナログな赤いボタンが付いたスイッチそのものだった。

「ぽちっとな」

 とりあえずそのボタンを適当に押してみる。

「ば、バカめ! ただ押しただけでは何も起こらないわ!」

「じゃあ自爆」

 ぽち。

 するといきなり何もない空間から閃光が走ると先ほどのアダムスキー型と同じく霧散するように消えていった。

「ぎゃー!! バカー! なにすんだ!!」

「バカはサリ様ですよ! 黙っていればいいのになんで余計なことを言っちゃうんですか!」

 アッキーがとうとう怒り出してしまう。

「よし、とりあえずここは完了したと。さて、そろそろ砦に向かった方をどうにかしないとな」

「それじゃあこの人達はどうするのよ?」

「殺る?」

「ひっ!?」

 アティウラが武器を構えてるとサリ様が小さい悲鳴を上げた。

「殺さなくてもいいよ。このままここに置いていこう。運が良ければ助かるだろうし」

「それでいいの?」

 残念とばかりに武器を下げた。

「多分本拠地はかなり遠いところだと思う。空飛ぶ乗り物がなくなった以上帰ろうと思ったら相当な時間がかかるんじゃないかな」

「歩いて帰れと言うのか!?」

「サリ様はもう黙って!」

 ありがとうサリ様。おかげで相当遠いのが分かったよ。

「それにお金も持っていないから戻るのは大変だろうね」

「くっ……」

 その言葉にアッキーが悔しそうな表情を浮かべる。

「例え戻れたとしても、この人達ならまた敵として現れても対処は楽そうだし」

「んがあ!! ば、馬鹿にするなぁ!」

「あなた方が戻る前に、組織そのものが潰れてしまう可能性もあると思いますけど」

「な、なんだと! そんなことはさせないぞ!」

「サリ様、我々の今の状態で何を言っても格好悪いだけですよ」

「ぐぬぬぬ……やっと、やっとここまで出世出来たのに!」

「出世しても世界がなくなったら何の意味もないだろ」

「そんなの分からないだろ!」

 いやさすがに世界がなくなったらどんなに出世しても意味はないだろ。

 だが勝てば官軍ともいうので、今のところ此奴らはテロリストが良いところであるが本当に力を持ってしまうと本当に官軍になってしまう。
 だから力を持つ前に刈り取っておかないとな。

「せいぜい頑張って生き抜いてください。一応ここに水と簡単な食糧を置いておきますから」

「ちょ!? そこじゃ取れないじゃないか!」

「……そんなに甘いと、後々後悔することになるかもしれませんよ」

「いやいやいや、アッキーどう見たって酷い扱いじゃないか!」

「サリ様、今の私達は殺されてもおかしくないところを見逃されているのです」

「なんと!? そうか実は勇者は良いヤツだったのか!」

「どこをどう見たら良いヤツになるんですか。こうやって拘束されているんですよ」

「やっぱり悪い奴か!」

 もしかして、この2人は芸人として生きていけるんじゃないだろうか。
 もう少しこの漫才を見ていたいところだけどやることが多いのでそのまま放っておくことしよう。

「結局どっちなのだ!?」

「どっちでも良いでしょ」

「勇者はどっちが良いのだ? ってあれ? 誰も居ないぞ。おいこら、サリ様達を置いていくなぁ!」
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