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第五話

人質<Ⅰ>

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「お前等全員武器を捨てろ!」

 アッキーと呼ばれているハーフエルフを、後ろ手に掴んで首元にナイフを突きつけた。
 勢いとはいえ俺はなんでこんなことしているんだろう。

 ちなみに他の三人はまだ隠れるように言ってある。

「な!? お前は勇者! 勇者のくせに卑怯すぎだろ!」

「うるさい。お前等のような論外チーター相手に正面から戦えるか!」

「や、やるならやるのだ! 我らはそんな卑怯な手段には応じない!」

「え、ちょ! サリ様!?」

「どうせ僕ちゃんにそんな度胸があるわけがないのだ」

 子供扱いされて、少しだけイラッとする。

「ぷぷっ、実際に手が震えているじゃないか。そんなんで大丈夫なのか?」

 確かに手が震えている。まあ慣れないことしているからな。

「そうなの? じゃあ」

 上腕のところに軽くナイフの刃を当てる。

「痛っ!?」

「うわ!? 切った、本当に切ったのだぁ!」

 動揺するサリ様。
 俺もこの世界で何度も戦いを見てきたので、この程度はどうってことはない。

「ほら、早くしないともっと酷い目に遭わすぞ」

「そうですよ! サリ様、凄く痛いんです!」

 人質のわりになんか余裕があるなこの人。

「わ、わ、分かったのだ! それ以上は止めて上げて!」

「だったら武器を地面に置いてこっちに蹴るんだ」

 相手は渋々手に持った武器類を放ってくる。

「そこのサリ様! 嘘をつくな。あんたはまだ持っているはずだ」

「ぬおう?! な、なんで分かるのだ!」

「サリ様……それじゃ持っているのがバレバレではありませんか」

「しぃまったぁ! この勇者、可愛い顔して鬼畜なのだ!」

 いやあんたが勝手にボロ出しただけだろ。

「よし、じゃあデル頼む」

「な、仲間がいたのか!?」

 そりゃそうだろ。なんで俺がこんなところに一人で居ると思ったんだ?

「“コーマ”!」

 昏睡の魔法で雲が発生しそれに包まれていった黒タイツの戦闘員が次々と倒れていく。

「な、なんだこの雲は!?」

 だがサリ様には効かなかったようで何が起きたのかと慌てている。

「眠らせただけだから」

「そうなの!? よかったぁ……」

 今はそんな心配をしている場合じゃないと思うのだが、まあなんだかんだで結構良い人なのかもしれない。
 アティウラにアッキーを任せて、落ちている武具を集めて、眠っている戦闘員を縛り上げていく。

 そしてアッキーとサリ様を人質にとり、そのままUFOの置いてある場所まで出ていくと、同じく黒タイツ共を除装させて全員を縛り上げる。

「くそ! こんなことをしてただで済むと思うなよ!」

「むしろお前達こそ、このままで済むと思っているのか?」

「な!?」

 サーチと宇宙人アイテムサーチの両方を使って残りがいないか探す。どうやらこれで全員だと分かって一安心。

「ふう……」

「ふうじゃないわよ。無茶しやがって」

「ごめん、咄嗟だったからさ。訓練とかしておくものだね、おかげで助かったよ。アティウラ、デル」

「それならよかった」

「そ、そう」

 少し照れる二人だった。
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