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第五話

捜索中

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「主様、朝よ」

「……んっ、あ、ああ……そっか」

 空が薄らと白む頃にアティウラが起こしてくれる。
 直ぐさま準備をしてシェルターから出るとサーチで件の商人の位置を探る。

「どう?」

「昨日から位置は変わっていないかな」

 距離にしてここら大体10km。
 ここまで距離になればその周囲の様子も窺えるはずなのでサーチの精度を上げていく。

 商人以外にも周りに10人くらい反応……いや少し離れたところに数十人いる。

「なんだこれ、そこに集落でもあるのか?」

「この辺りにその様ものがあるのは聞いたことがありません」

 王国とロンロールの国境付近。一応王国側だと思われるがセレーネも分からないという。
 まあ明確に国境の線とかあるわけじゃないしね。

「なんかさ、妙に焦臭くない?」

 デルの言うとおり嫌な予感しかしないので出来れば近づきたくない。
 だが、大金が掛かっているので仕方なく進めていく。

「焦臭いから俺達に仕事がまわってきたわけだし、それ相応の報酬は支払われるわけだから行くしかない」

 サーチを繰り返しながら進んでいくと道は徐々に荒れていき途中に深い轍などがあり軽トラが大きく揺れる。

「うわ!? どうしたの?」

 本を読んでいたデルが危うく車から落ちそうになった。

「道が悪いんだ。しばらく揺れると思うからちゃんと捕まっててくれ」

「主様、何かいる」

 アティウラが指差す先に荒れた道の上に馬車数台が見えた。
 サーチに出ている反応はまだ遠いため、それと直接関係はなさそうである。

 ゆっくりと近づいていくとどうやら一台の馬車が深い轍にはまって立ち往生していて、なんとか馬車を動かそうと数人で押したりしているがなかなか上手く行かないみたいである。

「う、うーん……」

 一応急いではいるものの、見てしまった以上無視することも出来ず助けることにする。
 ロープで軽トラと馬車を繋げて引っ張ると轍から一気に脱出させられる。

「やったあ!」

 喜ぶ馬車の一団の人達。

「私共は旅芸人の一座でして、昨夜から難儀していました。本当に助かりました」

 団長とおぼしき男性が丁寧に感謝してきた。

「これからロンロールに向かいますので一月ほど巡業をしております。もしよろしければ是非来てください。もちろん御代は要りませんので」

「旅芸人てどんなことするの?」

 主な演目は目隠しして投げナイフや綱渡り、火を使った危険な芸などらしい。

「なんか面白そう」

 そういうものを見たことがないデルは興味津々だった。
 大体30人くらいだろうか。それにしても妙に若い女性が多いような。

「女性のほとんどは踊り子」

「ダンサーか」

「それとは別に接客もする」

「接客?」

 接客って要するに……、ああそういうことか。
 この世界は意外と娯楽が少なくみんなそういうのに飢えているから意外といい商売になるという。昼は芸を売って夜は春を売る。
 つまり子供から大人まで楽しめるってことだな! あ、いやちょっと下品だった。ごめんなさい。

 この街道は王都には向かっておらず、別の貴族の領地に繋がっていてあまり往来が多くないことから、あまり整備がされていないという。
 そのため馬車がはまる程の轍がどんどん出来ていく。もう少し整備しないとその内誰も使わなくなるぞ。この道の貴族というか領主は馬鹿なのだろうか。

「あの、もしかして聖女様では?」

 そろそろ離れようとしたときに、一人の女性が話しかけてきた。

「はい? どうかなさいましたか」

「あの……ど、どうかお願いがあります!」

 必死の女性に、急いでいることもありセレーネは話を聞くことになってしまう。

 その女性付いていくと馬車に寝かされている1人。
 踊り子の一人だと言うが、魘されるように辛そうな声を上げていて、かなり顔色が悪い。

「前の公演からずっとこんな調子なんです」

 セレーネが少し診るが症状は分からないようなので、俺が代わりにディテクトで状態を調べてみる。

「ステータス異常になっているけど、これは……病気じゃなく何かの中毒らしい」

「中毒ですか?」

「何か腐ったモノを食べたとか」

「私らは基本的にみんな同じ物を食べていますけども」

 様子を見ている踊り子の女性達には心当たりがないらしい。

「ということは……毒のようなものを盛られた可能性……いやさすがにそれはないか」

「毒なんて、そんなので私らを殺してどうするんですか」

「あ、姐さん……」

 何か心当たりがあるらしい女性が居た。
 その人の話だと、どうやらお金持ちの客と酒を飲んだ後具合が悪くなった記憶があるという。

「間違っていたら申し訳ないんだけど、そういう行為をするのに変な薬みたいのを使うって話はある?」

「ああっ!」

 その話をした途端、踊り子の女性達は一斉に思い当たることが出て来た。
 質の悪い客が、そういう薬を飲ませて意識を混濁させて好き放題することがあるらしい。

「だとすると、その馬鹿が飲ませる量を間違えたりしたのかも」

「ええ!? じゃあこの子は助からないんですか!?」

 少しだけ心配そうにセレーネまで見ている。

「いや、この場合は普通に解毒で良いと思うよ」

「そうですよね」

 聞いたセレーネが小さくため息。
 直ぐさま神聖魔法で解毒をかけると、直ぐに肌の血色が良くなり魘されるような声は止んで規則正しい呼吸となった。

「……よかった」

 それを見た仲間達は一斉に安堵のため息を漏らす。

「とはいえ体力は大分減っていると思いますので数日は様子を見てください」

「本当にありがとうございます!」

「それではこちらは急いでますので」

 そう言って走って車に飛び乗ると直ぐに発車するのであった。

「お大事にー!」

「あ、あのお礼は!? 行っちゃった……なんか聖女様って変な人だったね」

「もう少し、お堅い方かと思っていたんだけど」

「不思議……あの男の子と凄く仲良さそうだったし」

「きっとまた何処かで会えるよ。そのときにちゃんと感謝をしよう」

「そうだね」
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