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第五話
意外と良い感じの宿<Ⅰ>
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「え、えーっと……」
「はい?」
何故か俺の部屋にセレーネがニコニコしてベッドに座っていた。
先ほど寒気を感じると言ったせいかセレーネが一緒に寝ると言い出したのだった。
たまには二人きりでゆっくりすればとデルとアティウラ。
「明日は早いからほどほどに」
「やっぱりあの馬のない馬車の運転、僕も憶えようかな」
運転が出来るのは俺のみ。なので基本的に俺のコンディションに左右される。
もう一人くらい運転が出来ると休憩せずに移動を続けられるので悪くない提案である。
そう言った後眠そうに二人は自室に入ってしまった。
個室一つ取ってもいつもの安宿より贅沢な造りで、ベッド以外にソファとか付いておりベッドにしても1人用にしてはかなり大きいサイズだった。
「って窓にガラスまで使われているし」
何時もの部屋は窓っていうより木の板で塞いだ程度のものだからな。
……なんて久々に二人きりで落ち着かず思わず余計な話にしてしまったが、それももう限界だ。
ずっともう一度ファーストタイムのやり直しを望んでいたはずだが、ここのところずっとアンリの監視があるためため敵わず気づけば数ヶ月経っていた。
そしてふってわいたこの時間。だがいざ二人きりになるとなんとなく照れくさい。
「……えへへ」
セレーネと目が合うと、彼女ははにかむように笑顔になった。
多分俺の方はキモい笑顔になっていると思う。
とはいえアティウラから釘を刺されたように明日は日の出と共に出発なのでなるべく早めに寝ないとならない。途中からは場合によって徒歩になると予想されるので疲れを残さないようにしないとならない。
いやまあぶっちゃけ10代のこの身体なら問題ない気もするけど……なんていってその油断が元で身内を危険にさらすのはいただけない。
いけないが……。
二人してベッドの上に座ってお見合いがまだ続いている。こんな事を続けていても仕方がない。こういうときくらい男を見せねば。
「……セレーネ」
「はい、どうぞ」
「失礼します!」
セレーネは俺を受け入れる様に両手を差し出してくれる。
いつもならお腹の辺りに抱きつくが、今は普通に肩の辺りに手を回してぎゅっと抱きついた。
わっ!?
そうなるとは思っていなかったセレーネが驚いた声を漏らす。この匂い、この感触に温もり……。
「ずっとこうしたかった」
「はい。わたくしもこうしたかったです」
「なんだか凄く良い匂いがする」
「あん、そうやってまた……変な臭いとかはしませんか?」
恥ずかしがるセレーネが身悶えする。
「うん、良い匂いしかしない」
「そうですか……良かったです」
目の前の首筋が艶めかしくて思わず舐めてしまう。
「ひゃんっ!」
いきなりの行為に声を漏らすセレーネ。
くすぐったいのか身体を強ばらせる彼女の姿が楽しくてしばらく続ける。
「も、もう……」
このなんともいえない女性特有の張りのある肌の感触と柔らかさというか温もりがたまらない。
すると今度はセレーネが頬にちゅっと軽くキスをしてきた。
「……おおう」
少し驚いた俺は彼女から少し離れる。
するとやった本人も恥ずかしいのか、真っ赤な顔を手で隠そうとする。
「にやにや」
「もう、今度はわたくしの番ですよ」
お返しとばかりに襲いかかるように抱きついてきて、そのままの勢いで押し込まれてセレーネが上に乗るような状態にされてしまう。なんか完全に押し負けてる。
「勇者様……」
そして同じように首元や耳などにセレーネの唇が触れる。
「ちょ! うあ! ひゃあ!」
なにこれぇ!? 思った以上にくすぐったくて思い切り声が漏れてしまう。
「んふっ、勇者様、可愛らしい♪」
あまり見せてはいけない姿を晒してしまった様な気がする。更にセレーネは俺の顔に手置いて動かないようにして頬など顔の至る所にキスをしてくる。
今までアンリの目が合ったが今はあの鬼のような聖職者はいない。
彼女とは過剰な接近は控えていた反動なのか今日の聖女様は積極的である。
「じゃあ、俺も」
だから好きにしていいんだとばかりにイチャついていた。
セレーネの頬にまでキスをしているとそこでいったん止まってお互いに目と目が合う。
この後どうして欲しいのか。どこにキスをしたいのか。何も言わなくてもすぐに分かった。
今度は俺が上になって彼女の頬にそっと手を置く。そして顔をゆっくりと近づけてキスをする。
MPの補給とかそういう名目はない。ただ2人がそうしたかった。
それはただのキス。何度もして慣れているはずなのに妙にドキドキしてしまう。それにいつもはもっと濃厚なのをしているのに。
お互いの顔が離れて、セレーネと目が合うと頬を染めながらなんとも幸せそうに微笑んでくれた。
「はい?」
何故か俺の部屋にセレーネがニコニコしてベッドに座っていた。
先ほど寒気を感じると言ったせいかセレーネが一緒に寝ると言い出したのだった。
たまには二人きりでゆっくりすればとデルとアティウラ。
「明日は早いからほどほどに」
「やっぱりあの馬のない馬車の運転、僕も憶えようかな」
運転が出来るのは俺のみ。なので基本的に俺のコンディションに左右される。
もう一人くらい運転が出来ると休憩せずに移動を続けられるので悪くない提案である。
そう言った後眠そうに二人は自室に入ってしまった。
個室一つ取ってもいつもの安宿より贅沢な造りで、ベッド以外にソファとか付いておりベッドにしても1人用にしてはかなり大きいサイズだった。
「って窓にガラスまで使われているし」
何時もの部屋は窓っていうより木の板で塞いだ程度のものだからな。
……なんて久々に二人きりで落ち着かず思わず余計な話にしてしまったが、それももう限界だ。
ずっともう一度ファーストタイムのやり直しを望んでいたはずだが、ここのところずっとアンリの監視があるためため敵わず気づけば数ヶ月経っていた。
そしてふってわいたこの時間。だがいざ二人きりになるとなんとなく照れくさい。
「……えへへ」
セレーネと目が合うと、彼女ははにかむように笑顔になった。
多分俺の方はキモい笑顔になっていると思う。
とはいえアティウラから釘を刺されたように明日は日の出と共に出発なのでなるべく早めに寝ないとならない。途中からは場合によって徒歩になると予想されるので疲れを残さないようにしないとならない。
いやまあぶっちゃけ10代のこの身体なら問題ない気もするけど……なんていってその油断が元で身内を危険にさらすのはいただけない。
いけないが……。
二人してベッドの上に座ってお見合いがまだ続いている。こんな事を続けていても仕方がない。こういうときくらい男を見せねば。
「……セレーネ」
「はい、どうぞ」
「失礼します!」
セレーネは俺を受け入れる様に両手を差し出してくれる。
いつもならお腹の辺りに抱きつくが、今は普通に肩の辺りに手を回してぎゅっと抱きついた。
わっ!?
そうなるとは思っていなかったセレーネが驚いた声を漏らす。この匂い、この感触に温もり……。
「ずっとこうしたかった」
「はい。わたくしもこうしたかったです」
「なんだか凄く良い匂いがする」
「あん、そうやってまた……変な臭いとかはしませんか?」
恥ずかしがるセレーネが身悶えする。
「うん、良い匂いしかしない」
「そうですか……良かったです」
目の前の首筋が艶めかしくて思わず舐めてしまう。
「ひゃんっ!」
いきなりの行為に声を漏らすセレーネ。
くすぐったいのか身体を強ばらせる彼女の姿が楽しくてしばらく続ける。
「も、もう……」
このなんともいえない女性特有の張りのある肌の感触と柔らかさというか温もりがたまらない。
すると今度はセレーネが頬にちゅっと軽くキスをしてきた。
「……おおう」
少し驚いた俺は彼女から少し離れる。
するとやった本人も恥ずかしいのか、真っ赤な顔を手で隠そうとする。
「にやにや」
「もう、今度はわたくしの番ですよ」
お返しとばかりに襲いかかるように抱きついてきて、そのままの勢いで押し込まれてセレーネが上に乗るような状態にされてしまう。なんか完全に押し負けてる。
「勇者様……」
そして同じように首元や耳などにセレーネの唇が触れる。
「ちょ! うあ! ひゃあ!」
なにこれぇ!? 思った以上にくすぐったくて思い切り声が漏れてしまう。
「んふっ、勇者様、可愛らしい♪」
あまり見せてはいけない姿を晒してしまった様な気がする。更にセレーネは俺の顔に手置いて動かないようにして頬など顔の至る所にキスをしてくる。
今までアンリの目が合ったが今はあの鬼のような聖職者はいない。
彼女とは過剰な接近は控えていた反動なのか今日の聖女様は積極的である。
「じゃあ、俺も」
だから好きにしていいんだとばかりにイチャついていた。
セレーネの頬にまでキスをしているとそこでいったん止まってお互いに目と目が合う。
この後どうして欲しいのか。どこにキスをしたいのか。何も言わなくてもすぐに分かった。
今度は俺が上になって彼女の頬にそっと手を置く。そして顔をゆっくりと近づけてキスをする。
MPの補給とかそういう名目はない。ただ2人がそうしたかった。
それはただのキス。何度もして慣れているはずなのに妙にドキドキしてしまう。それにいつもはもっと濃厚なのをしているのに。
お互いの顔が離れて、セレーネと目が合うと頬を染めながらなんとも幸せそうに微笑んでくれた。
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