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第五話

アランディ砦の攻防<Ⅳ>

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「『馬鹿な勇者達がやられてしまっただと!?』 そのとき何故か勇者達は強大な力を行使することが出来なくなり、魔王とその配下である暗黒騎士達の手によって次々と6人の勇者が倒されていってしまったのです」

「………………」

「一人残された弓を使う少女だけは難を逃れるために自害をしてポータルへ飛び去りましたが、残された5人は魔王に捕まってしまいます」

「………………」

「後方の街を撹乱され、前線では頼みの綱である竜騎士と勇者がいなくなり砦側が瓦解するのは誰の目にも明らかでした」

 え、えーっと。

「『さあ、皆のモノ! 今こそ我らが砦を奪い返すのだ!』その号令と共に一気に攻勢をかける魔王軍。ですが砦側も必死の抵抗をします『この砦は死んでも守るのだ!!』」

 実はずーっとセレーネ一人で熱の入った独演をしておりました。

「ですが魔王軍の先頭にいる土竜はそれでなくても硬いのにその上に特製の鉄鎧を被せていたのです。そのため砦からの攻撃がほとんど通らず土竜はとうとう城壁にまで辿り着いてしまったのです!」

 立ち上がって両手を広げながら語るセレーネに、気が付くと周りまで静かに彼女の一人演劇を聞き入っていた。

「……って、あ、あら?」

 食堂が静かなのに気が付いたセレーネ。

「も、申し訳ありません、五月蠅かったでしょうか?」

「いや、みんなセレーネの話を聞いていただけだよ」

「はわ!? お、お恥ずかしい……」

 あれだけ熱演して置いて今更恥ずかしいのか。

「あ、あの聖女様……その続きはどうなったのでしょうか」

「とても気になります」

 話の続きがみんな気になるらしい。

「その後どうなったの?」

「えっとですね……鉄の鎧を着けた土竜は3重の城門ではなくダークエルフ達が調査した城壁の弱くなっている部分に突撃をして破壊し、その開いた穴に魔物達が一斉になだれ込み砦はあっという間に陥落してしまいました」

「そうなんですか!?」

「なんだよー……」

 最後のくだりで人間側の勝利で終わらなかったのを聞いていた人達は一斉に残念がった。
 お話としては面白くなるように脚色している部分はあるのだろうけど魔王軍側が勝利して砦を奪ったのは事実なんだよね。

「それで聖女様、あの兵士達は生きているのでしょうか?」

「え? あー……」

 どう答えるべきか迷うセレーネ。そりゃそうだその辺は明らかに創作だろうし。
 さすがに名もなき一兵士がノンフィクションなわけがない。

「そこは想像にお任せ致します」

「じゃあ、やっぱり魔物に食べられたのか!!」

「うわーん!」

 みんな意外と想像力たくましいんだな。
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