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第四話

そんな話

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「そういう話をしてきました……」

「はぁ……」

 宿屋で全員目が覚めた後、道具屋の一件を話すとデルは開口一言大きなため息だった。

「本当に次々と話が舞い込んでくるね」

 今回ばかりはアティウラも少し呆れた様子。

「しかもメチャクチャ大きいじゃん。いくらこいつが特殊な力を色々と持っているたって国一つを動かすなんてそんな簡単に出来るわけないじゃん」

「そうですよ。いくらなんでも勇者様、それはあまりにも……」

 セレーネもさすがに反対する立場のようだった。

「ただ働きが過ぎます!」

 そっちかい。確かに残念なことに無力化した迷宮のお宝を手に入れようという計画は水泡に帰してしまったしからな。

「あ、でもそれなら、これくらいはもらったけど」

 雑嚢からおじさん達から貰った宝石や宝飾類を出して机に並べる。

「え、え……わっ、うわ!?」

 びしっと決めたセレーネだったが、それを見るなり差した指が宝石の方に向いていった。

「こ、これ……主様がもらった……の?」

 アティウラも呆れた顔が違う意味で呆れた顔になっていた。

「まだ鑑定していないから、ちょっと待って」

「どうせ、安物でしょ」

 デルの言うとおりそれほどの高いものではないと思うが、直ぐさまディテクトで価値を調べてみる。

「うーん、どうやら全部で金貨2千枚以上の価値があるっぽい」

「そんなに!?」

 それまであまり興味なさそうにしていたデルが座っていたベッドから立ち上がって宝石類をマジマジと見始めた。

「確かに個人としては高額ではありますが……」

「そんな程度の金額で国と戦うつもりなの?」

 セレーネとアティウラは意外と冷静だった。

「一応、そこまでのつもりはないって言われていたけど……」

「そう、ですか。それなら」

 セレーネが俺の話を聞いて少しだけ頷く。

「うん、やっぱり返してきた方が良さそうだよね」

「ちょっ!? ゆ、勇者様、お、お待ちください! 殿方が一度渡したものを返すのは少々失礼になるかもしれませんし……相手方の自尊心を傷つけるかもしれません」

「でも、これだけの高額なものをやっぱりただではいただけないよ」

「いや、あの……で、ですが……」

 セレーネは必死で止めようとするが、俺の気持ちを察してか残念そうな顔で諦めた。

「なんか聖女様は何時になく必死だね」

「え、そ、そういうわけでは……」

 デルがウキウキした顔で宝石を見ながら、そう言った。

「別にただなんかじゃないよ。これは多分助けて貰ったお礼と口止め料が含まれているんでしょ」

「お礼と口止め料?」

「そう、あの場にあんたが居たことで助かった謝礼金と、正体がばれたことを黙っていて欲しい口止め料に、そして残りは一縷の希望としてあんたへの投資ってことでしょ」

 デルが目の前の宝飾品の一つを手に取りながら相手の気持ちの詳細を説明した。

「お金を払うには十分な話」

 アティウラもデルの説明に納得したように宝石を手に取った。

「……す、凄い。デルって、天才かもしれません」

「いや、聖女様の目が宝石の前で曇っていただけじゃないかな」

「ぬぐっ!? きょ、今日は妙に痛いところを突いてきますね……」

 セレーネは普段は聖女らしい聖職者だが、お金特に大金が絡むとどうも目の前の欲に流される傾向がある。

「主様はこの先冒険を続けるんでしょ?」

「まあ今のところはそのつもりだけど」

「もしかしたらもしかするかもしれない。だからお金は必要」

「なるほど……、そういう大きな出来事に直接絡むなんてあるのかな」

「それはもちろん」

「十分に」

「ありえますよね」

「まじで?」

「勇者様は大胆な行動をするわりに、こういうときは自身の評価を低く見過ぎかと」

「そうかな? 所詮出来ることなんて、他人にMPを渡すくらいだし」

「いやいやいや! 全然それだけじゃないじゃん。あんたは20年間攻略されなかったダンジョンをたったの一日で攻略しちゃったんだよ?」

 うんうんとセレーネとアティウラが首を振る。

「それにセレーネが仲間に居るじゃん。しかもデレッデレでだし」

「彼女はこの界隈で知らない人は居ない。国の教会を動かすことも出来る」

「それはさすがに誇張しすぎではないでしょうか」

 困った笑顔のセレーネ。

「謙遜は要らない。貴女は絶大な人気があってその気になれば一大勢力になる」

 アティウラは扱く冷静に仲間を評価していた。

「私はただのメイドだから2人に比べると微妙」

「いや、そんなことないだろ。この世界でトロルを倒せる存在って勇者とかを除いたら指で数える程度しかいないはずだし」

「あら、嬉しい。ではもっと精進しないと」

 確かに色々なことが出来る気はするけど、その分彼女達に負担を追わせることになるし危険な目に遭わせることにもなるだろう。
 まだまだ未知なるこの世界、自分がどの辺りの強さなのかもよく分からない。

「もしさ、あの勇者パーティと戦ったら勝てるのかな」

「戦うおつもりなのですか?」

 セレーネが心配そうな顔で聞いてきた。

「あ、いや違う、今この世界でどれだけ強いのかなと思っただけ」

「勇者様その話だと4人総出で戦って勝てない相手に、一発の魔法でほぼ再起不能に追い込んだデルの方が強いことになるかと……」

 あ、それもそうか。

「正面から戦うとしてこっちは前衛は1人だけで向こうは二人だし、嘘くさいほど強い剣があるしね。まあ僕が前に出て1人抑えるって方法はあるけど」

「それは難しい。あのドワーフは強い」

 ちぇーっとデルが少しふて腐れる。だからお前は前衛じゃなく後衛だろうが。

「そういえば、パーティらしい戦いってしたことなかったな」

「そうだよ。あんたは一足飛びに話が進みすぎなの。そもそも僕はまだ新米冒険者なんだし」

 そんな強力な魔法が使える新米冒険者なんてあんまり居ないと思うけど。

「いずれにしましても、一度王都に戻って正式な登録を致しましょう」

 それもそうだな。
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