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第四話

そして秘密結社は行動に移す

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 夜になりサリの一団は誰にも気付かれないようにダンジョンの側に来ていた。

「うわぁ、なんか賑やかだね。あー、あの串焼き美味しそう」

 仄かに肉の焼ける匂いがあり、サリはお腹を擦りながらゴクリと生唾を飲んだ。

「はいはい。そういうのはちゃんとお仕事を終えてからにしましょうね。サリ様は出来る子なんですから、分かりますよね」

「お、おうっ! 分かってる!」

 そう言いつつも、お腹を擦るのは止まらない。

「うーん、入口は閉じているようですね……」

 アッキーは面倒くさくなったのか、サリに適当な携帯食を渡すと自分の仕事に戻った。

「自爆しちゃったの?」

 ボリボリと音を立てながらサリが聞いてきた。

「……もしそうなら結構な揺れを感じるはずですので、おそらく閉鎖しているのでしょう」

「そうか! じゃあサリ様のニューアイテムの出番だな! ちゃらりらっちゃらー!」

 サリが持ち出した新アイテムはまるでハンディ掃除機のような形をした光線銃であった。

「この辺に開けていいの?」

「ええ、この下は迷宮になっているはずので構いません」

「いよっしっ!」

 しゅいーん!

 まさに掃除機の音が鳴り始めるとノズルを向けた先の地面が崩れて吸い込まれていき、地下のダンジョンが見えるのだった。

 そこから戦闘員達は飛び降りて周囲を警戒し、問題が無いと上に合図を送る。

「ほら、降りますよ」

「え? え? いやサリ様はこの高さから落ちたらさすがに怪我をすると思うんだけど……」

「早くしてください」

 どげしっ!

「え、うにゅあー!? な、なにすんだー!」

 アッキーは躊躇いなくサリを蹴って落とすのであった。

 ダンジョンに真っ逆さまのサリだが床にぶつかる瞬間落ちる速度がゆっくりとなった。

「あ、あれ……?」

 共に落ちてきたアッキーは綺麗に床に着地した。

「な、なに? なんで?」

「サリ様……我々に支給されているベルトにそういう機能があるんですよ。知らなかったんですか?

「そうなの!? そ、そっか……だから上空から落ちても生きていたんだ」

「……そんな目に遭ってなんとも思わなかったんですか!?」

「サリ様が強運の持ち主なんだって思ってた!」

「ったく……」

 ヤバい上司と組まされたもんだと、もう何度目か分からないため息を漏らすアッキー。

 戦闘員は言葉を発さず、手信号などで周囲の警戒は問題ないと教えてくる。

「どうやら閉鎖されたことでモンスターの類も不活性となっているみたいですね」

 少々拍子抜けと言った感じでアッキーは周りを見渡す。

「その方が戦闘員さん達も苦労しないんだいいではないか」

「え?」

 その言葉に驚いて全員がサリのことを見た。

「え、サリ様は今何か変なこと言った?」

「い、いえ、そういうわけでは」

 秘密結社の幹部達は戦闘員をほぼ使い捨てと考えている。そのためサリが部下を気遣ったことに驚いたのだった。

「この天然は……」

 アッキーも彼女と組まされて最も驚かされたが、本人が全く分かっていないことにやはり呆れさせられるのであった。
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