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第四話

街についたら当然楽しみは食事です<Ⅲ>

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「ええ、もちろん相手をさせて……いただきます」

「え、まじで!?」

 そう言ってアティウラが抱きつくようなポーズで近づくと、俺様男はうひょう! と嬉しそうに抱きつこうとした。
 もちろん抱き合うことなど無く、アティウラは其奴の腕を掴み上げるとそのまま柔道のような背負い投げとかではなく無造作に持ち上げて投げたのだった。

「うわあ!!」

 どすんっ!

 投げ飛ばされた男は建物の壁に衝突すると、そのまま地面に落ちた。

「おお、飛んだ」

 ドワーフが感心したようにそう呟いた。

「ぐっ……、な、なんなんだお前等!」

 さすがに投げ飛ばされて実力差が分かったのか俺様男は、痛そうに胸の辺りを押さえながら立ち上がって、ビビリの入った声を漏らす。

「ふんっ!」

 デルが仁王立ちで睨み付ける。

「お、憶えてろ!」

 え、そのセリフ言っちゃう? それ言ったら三流悪役のレッテルを貼られちゃうんだぞ。

「忘れ物!」

 地面に落ちていた長剣を拾うとアティウラはぶん投げると、凄い勢いで飛んでいき走り去る男の脚元に深々と突き刺さった。

「ひゃあ!?」

 変な悲鳴を上げて驚き、一応大事なものだと分かっているのか必死で長剣を引き抜こうとするが直ぐには抜けず、何度か引っ張ってやっと抜ける。だがその長剣は無残にも少し曲がってしまった様子。
 どうやらあまり質の良い代物ではないらしい。

「ったく……」

 デルがため息をつく。

「それではこの落とし前は誰が付けてくれるのでしょう」

「うわ!?」

 やっとお祈りを終えたら目の前の料理が消えていた。さすがの聖女セレーネも今回ばかりはかなり怒っている様子で頬膨らませながら、俺やデル、アティウラを交互に見ている。

「え、えーっと、あの戦士を捕まえて来た方がいいかな」

「そ、そうね……」

 追い返してから気が付いた。そうだった……これじゃ料理がダメになった責任を取らせる相手が居ない。

「むぅ……」

 可愛く頬を膨らませて怒っているセレーネ。
 彼女は意外と尾を引くので怒らせると後が怖い。

「と、とりあえず俺の食べかけだけど……」

 ぷんぷんのセレーネに食べかけのパンとスープを差し出すとそれを素直に受け取って食べ出す。

「あ……美味しい……」

 少しだけ笑顔に戻るセレーネ。

「って、なんであんただけちゃっかり回避しているのよ!」

「ホントだ!?」

 ホッとするのも束の間、デルとアティウラはあることに気づき今度は俺が非難される対象になってしまう。
 二人とも空腹でイライラしているので普段よりも攻撃的であった。

「あー、それなんだが……」

 3人で困っているところに、ドワーフと神官服を着た女性が割って入ってきた。

「いやあなんとも済まないことをした。この場はワシが弁償しよう。それにしてもなかなか良い動きをするのう」

 ドワーフはがははと笑いながら弁償を申し出てきた。

「それなら、ここはわたくしが持ちま……え、せ、聖女様!? こ、これは大変申し訳ありません!」

 俺様男に絡まれていた女性神官がセレーネに気付いて慌てて姿勢を正して正式な挨拶をしだした。
 ぱっと見、彼女の方がセレーネよりも年上に見えるが妙に畏まっている。

「こちらこそ、ご丁寧にありがとうございます」

 丁寧な挨拶を受けてセレーネも同じく挨拶をする。

「ま、まさか聖女様がこの様な場所にいらっしゃるとは……」

 よく分からないが、話しぶりからして女性神官はセレーネに失礼なことをしたらしい。

「わたくしはこの辺りはよく利用しますよ。安くて美味しいものがいっぱいありますから」

「そうなのですか!?」

 神聖な聖女のイメージがあるからか、こんな下町風の場所には来ないと思っていたのだろうか。

「なんじゃ知り合いか?」

 そのままドワーフと女性神官も交えて食事をすることになった。

 二人はこの辺りでは有名な冒険者で他に勇者の戦士とエルフの魔法使いが仲間いるという。
 ここから南にある大きなダンジョンの最も攻略に近いパーティで、必要な物品を買いに王都に戻っている最中らしい。

 そのダンジョンは20年ほど前に突如発生したもので、昨今やっと攻略されるとのこと。
 ダンジョンてそんな感じに発生するものなのか? ああ、そういえば宇宙人のおっさんが飽きないようにアトラクションが色々と設置してあるとか言っていたのを思い出した。

 そんな世間話をして食事が終わると彼らと別れ、用件のために壁の向こう側に向かうのだった。
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