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第三話
卿御洲の逆襲
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それから本の少し前の時間。
「大将!」
「え……」
一人縛られ動けずふて腐れている卿御洲の側に、二匹の魔物が走ってきた。
「……ど、どうして?」
「何か巨大な化け物が出たとかで、人間共がパニックになって逃げ出したんでさあ」
「その間に、俺っちが縄を食い千切ったんですよ」
「そ、そうなんだ……」
彼ら二匹が来てくれた。それだけで涙が出る思いだった。
「さ、今すぐ逃げやしょう」
「! う、うしろ……後ろ!」
「え?」
「はい?」
振り向くとそこには巨大な化け物が立っていた。
「うわっ! うわっ! うわぁああ!!」
ばきんっ! がたん! がん! ごん!
「ちょ! 喰うな! 俺は多分不味い!」
どがしゃんっ!!
「あれ、あ、外れた?」
「よしっ! 逃げやしょう!」
巨大トロルが子供を無理矢理引きがそうとして荷馬車が半壊したことで卿御洲に繋がっていた鎖が外れ、一人と二匹は慌てて物陰に隠れるのだった。
「はぁはぁ……し、死ぬかと思いやした……ぶふぅ」
「まさに九死に一生……、危ないところでしたね……はぁはぁ……くぅん」
「う、うん……」
いきなり巨大なトロルがこちらに向かってきたときは心底身体が凍る程の恐怖だった。
「……あ、あれ?」
物陰にしばらく隠れていたが、妙に静かなので気になって一人と二匹は物陰からそっと様子を伺う。
「ど、どうし……て……」
何故か巨大なトロルは大人しく子供のトロルを抱え上げて去って行こうとしていた。
「嘘だろ……トロルが黙って去って行くなんて」
「あのへんてこ勇者には何かがあるのかもしれやせんね」
ノールとオークもその光景に驚いていた。
「い、今……今の、ウチに逃げよう……」
「あ、そうでしたね!」
「よ、よしっ! え、えっと……あっちから回って行きましょう!」
ノールが道筋を指示しながら見つからないように物陰越しに少し回り道をして森に戻ろうとする。
「あ……あ、れは……」
逃げようとしたところであるものが卿御洲の目にとまった。
それは昨日奪われた自分の配下に置くことが出来るあの光線銃だった。
巨大トロルにでも使おうとしたのだろうか。手に持ったままあのクソハーレム勇者はトロルの方を見ていてこちらに気付いていない。
「よ、よし……」
そして、あの光線銃に向かって卿御洲は走り出した。
「大将!」
「え……」
一人縛られ動けずふて腐れている卿御洲の側に、二匹の魔物が走ってきた。
「……ど、どうして?」
「何か巨大な化け物が出たとかで、人間共がパニックになって逃げ出したんでさあ」
「その間に、俺っちが縄を食い千切ったんですよ」
「そ、そうなんだ……」
彼ら二匹が来てくれた。それだけで涙が出る思いだった。
「さ、今すぐ逃げやしょう」
「! う、うしろ……後ろ!」
「え?」
「はい?」
振り向くとそこには巨大な化け物が立っていた。
「うわっ! うわっ! うわぁああ!!」
ばきんっ! がたん! がん! ごん!
「ちょ! 喰うな! 俺は多分不味い!」
どがしゃんっ!!
「あれ、あ、外れた?」
「よしっ! 逃げやしょう!」
巨大トロルが子供を無理矢理引きがそうとして荷馬車が半壊したことで卿御洲に繋がっていた鎖が外れ、一人と二匹は慌てて物陰に隠れるのだった。
「はぁはぁ……し、死ぬかと思いやした……ぶふぅ」
「まさに九死に一生……、危ないところでしたね……はぁはぁ……くぅん」
「う、うん……」
いきなり巨大なトロルがこちらに向かってきたときは心底身体が凍る程の恐怖だった。
「……あ、あれ?」
物陰にしばらく隠れていたが、妙に静かなので気になって一人と二匹は物陰からそっと様子を伺う。
「ど、どうし……て……」
何故か巨大なトロルは大人しく子供のトロルを抱え上げて去って行こうとしていた。
「嘘だろ……トロルが黙って去って行くなんて」
「あのへんてこ勇者には何かがあるのかもしれやせんね」
ノールとオークもその光景に驚いていた。
「い、今……今の、ウチに逃げよう……」
「あ、そうでしたね!」
「よ、よしっ! え、えっと……あっちから回って行きましょう!」
ノールが道筋を指示しながら見つからないように物陰越しに少し回り道をして森に戻ろうとする。
「あ……あ、れは……」
逃げようとしたところであるものが卿御洲の目にとまった。
それは昨日奪われた自分の配下に置くことが出来るあの光線銃だった。
巨大トロルにでも使おうとしたのだろうか。手に持ったままあのクソハーレム勇者はトロルの方を見ていてこちらに気付いていない。
「よ、よし……」
そして、あの光線銃に向かって卿御洲は走り出した。
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