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第三話

そして深く落ち込む

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「はぁ……」

「深いため息、どうしたの?」

 卿御洲達に寝藁を渡した後、テントまで戻るとアティウラがたき火をしながら待っていた。

 セレーネはまだ戻ってきていないが、先に寝ても怒るようなことはないだろうがなんとなく悪いかなと思ってたき火のあたっていたが、そうなると余計なことばかり考えてしまう。

「さっきのはちょっと冷たかったかなとか、作戦立てた本人が作戦破るとか、もう少しスマートに出来たんじゃないかなとか……いつもながら反省材料が多いなって」

「死者が出ていないのは凄いよ」

 アティウラが俺の独り言のような反省を聞いてフォローしてくれる。

「それはたまたま上手く行っただけで、一手間違えたら全員トロルの腹の中だったかもしれないし」

 改めて考えるとよくもまあトロル相手に生きていたよな。

 やばい。今日も来るかな……、手が震え始めそれが徐々に身体全体に行き渡る。

「大丈夫?」

「あ……うん、多分」

 頭がどれだけ冷静でも、身体の方の制御が効かず震えが止まらない。
 そんな震える手にアティウラはそっと握ってきた。

「本当に?」

「どうかな……情けないことに見ての通り止まりそうもないや」

「無謀なのに、こういうときは繊細なんだね」

「え、わっ……」

 アティウラが優しく俺の頭を抱きしめた。

「セレーネの代わりにならないかもだけど……」

 いや十分に……なってます。凄い質量が押し付けられて……うおう!?
 今日はちゃんと胸当てを脱いでおいでらしい。

「どうせ僕じゃ力不足、いや乳不足だよっ」

「主様は本当に面白い……凄く頭が回るのに向こう見ずだったり」

「ついでに、スケベで嫌味だけどね」

「ああもう本当に可愛い……大丈夫、護ってあげるから」

「い、いやでも……」

 アティウラとはここで依頼が完了のはずだが、張りのある柔らかなおっぱい様に顔を埋められ、なんとも言えない感触と香りに余計な考えは止まり、ずっとこうしていたくなり思わず俺も抱きしめ返してしまう。

「……落ち込んでいるわりに積極的」

「ごめん……」

「冗談。好きなだけ良いよ」

「ありがとう、これも護衛の料金に含まれているの?」

「私が好きでやっているだけ」

「そうなの?」

「私は年下好きなの」

 絶対に言っていない。それに俺は見た目こそ年下だが、中身は確実に年上のおっさんだ。
 それにしてもあんな重たそうな武器を振り回しているのに、なんでこんなに柔らかいんだろう。

「元気がないのに触り方がエッチだ」

「あ……」

 アティウラが少し呆れた声を上げながらそっと身体が離れていく。

「それならもう大丈夫ね」

 今し方年下が好きだと言ったばかりなのに意外にもあっさりとした対応だった。

「女の言葉を真に受けてはだめ」

「な、そうか……今の言葉も真に受けたらいけないのか?」

「んふふっ、それはどうかな」

 向こうからはベタベタしてきても、こっちからするのはNGなのか。
 中身はおじさんになっても女性というのはなかなか理解が難しいものだと改めて思う。

「ソイツは、そうやって若く見えるけど中身は結構歳がいっているんだって」

「構わない。あんまり言動が子供っぽいのは好きじゃないから」

「なんだそりゃ、えらく面倒な好みだな」

「そうだね。そう思う」

 でもその面倒な好みって、俺と合致していないか?

「だから尊い」

 何が尊いんだよ。

「ここは厳しめにって思ったけど……」

 むぎゅっ。

「うわ……」

 一度は俺から離れたアティウラだったが、結局同じように抱きついてきた。
 今度は先ほどのような優しくではなく、なんか強めに頭を抱きしめられる。

「やっぱり……なんでも叶えて上げたくなる」

「な、なん……でも?」

「よからぬことを……でも、ちょっとくらいなら」

 ちょ、ちょっとならいいのか?

「ご、ごくり……い、いいのか」

 思わず手をワキワキとさせながら、アティウラのおっぱいを触ろうと……。

「ご、ごくりっ、じゃねーよ! お前等さっきから二人だけの空気作ってるけどここには僕が居るって分かってんのか!」

 だが邪魔者がそこに居て、デルがいきなり怒り出したのだった。

「いきなりじゃねーよ! ちゃんとここに居たじゃん!」

「そ、そうだったっけ……ごめん。気付かなくて」

 実は最初からずっとデルもたき火の側にいたらしい。

「いやいやいや気付かないって、さっきからずっと話しかけてただろ!」

 さてどのセリフがデルだったでしょうか。

「盛るのは勝手だけど人前はさすがに止めろっつーの! たき火の側から離れたらメチャクチャ寒いんだし」

 デルは見た目通り寒さに弱い。そのくせ薄着を好むので余計に寒いはずである。

「悪かったわね! そんな脂肪の塊が付いてなくて!」

「何も言っていないだろ……」

「アンタの目で分かるわ!」

 マジか!? デルはそんな特殊能力を持っているのか。

「目と顔で大体のことが分かるから」

 アティウラは俺の考えていることが分かるかのように補足してきた。

「そうなの!?」

 そういうのは都市伝説の一種だと思っていたが、どうやら本当らしい。

「ゴメン……あ、じゃあ、3人でする?」

「はぁ!?」

 デルが驚くと同時に、身体の紋様を紫っぽい色を浮かび上がらせる。
 どうやら驚きと困惑と、少しの興味があるらしい。

「ば、ばばば、ば……ば、馬鹿、バカ! バッカじゃないの!」

 動揺して語彙が少し足りなくなっているらしい。

「こんなところで出来るわけないでしょ! だ、大体……そのえっと……そ、そうセレーネが知ったら面倒なことになるか、めっちゃ怒るでしょ!」

「……そうだった。じゃあここまでね」

 俺を諭すような口調だが、それはむしろアティウラの方ではないのかと突っ込みたかったが、頭をぎゅっと抱きしめれると考えるのが面倒になり何も言う気がなくなった。

 やばい……これはマジ癒されてしまう。こんなにも柔らかで温かいのか。
 ずっとそうしていたくて、結局アティウラに手を回して抱きしめる。

「もう、甘えん坊さん」

「ただいま戻りましたー」

 そこへちょうど暗がりからセレーネが現れたのだった。

「ああ!」

「あらら……」

 タイミング悪く、抱きしめ合う形をセレーネに見られてしまった。

「その役目はわたくしのはずですのにぃ……」

 その後彼女は拗ねてしまったが、デルの機転でアティウラの好みを教えるとセレーネはそれに食いつき人を話題の肴にして女性陣はキャッキャと楽しそうに話し始めるのだった。

 確かにデルには感謝するが、だからとって俺をダシにしなくてもいいじゃないかと言いたい。
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