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第三話
戦いが終わり……被害の方は<Ⅱ>
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「大丈夫だ。デルにはなんの責任もない。心配ならずっと握ってろ」
その言葉にデルは少しだけ笑顔になると小さく頷いた。
埃を払いながら、旦那様も立ち上がるとぎっと睨んできた。
「とにかく何がなんでも支払わせるからな!」
「……はぁ、だったらあそこで寝てるトロルを起こしましょうか? それで本来起こった悲劇がどれほどのことだったか少しは分かるでしょ」
「き、貴様、勇者のくせに脅すつもりか! なんて悪魔のような考えが出来るんだ……」
また悪魔かよ。
「いいか! この問題は必ず大きくさせるからな!」
「それは無理だと思いますよ」
「五月蠅い! 余計なこと……え、せ、聖女様……!?」
治療を終えたのか、いつの間にかセレーネが直ぐ近くに来ていた。
さすがの旦那様も怒鳴った相手が聖女だったことに驚いて一気に声のトーンが変わった。
「今回のことはわたくしも大変残念な出来事だと思っております。ですがが彼らを責めるのは全くのお門違いです」
「いくら聖女様の知り合いだとしても、やってしまったことに代わりはありません!」
「ですが、3バ……3人の巡回騎士の力を持ってしても全く歯が立たなかった相手ですから、もしかしたら軍隊を持ってしても倒すのは難しかったことでしょう」
一瞬3バカと言いかけたよね? さすがの聖女様でも彼奴らのことをバカだと思っているのか。確かにバカだけどさ。
「そうだったかもしれませんが聖女様、だからと言って家を破壊していいはずがありません!」
「いえ、むしろ勇者様がここにいらっしゃったからこそ、あの魔物達を倒し、これだけの被害で済んだのです」
セレーネは旦那様の抗議を全く聞き入れず自分の話を続ける。
「もし王国軍を動かそうものなら、どうなるとお思いでしょう。彼らは勝利を第一に考えて、大規模な人員で田畑は馬や兵士に踏み荒らされ建物も好き放題使われ、最悪の場合この辺りに火をかけられ二度と人が住めない土地にされてしまったかもしれません」
「さ、さすがにそこまでは……」
「い、いや聖女様の言うとおりだ」
親族の1人が青ざめた顔をしながらセレーネの話を肯定した。どうやらこの国の軍隊はかなり荒々しいらしい。
ドガとここは国が違うのか? それとも軍の部隊が違うのだろうか。
「そこまでしないと倒せない相手なのです。一部の家屋の被害だけで済んだなどむしろ奇跡と言えないでしょうか」
「そんな……祖父の代から少しずつ貯めてやっと建てられた家だったのに……」
旦那様はいきなりしおらしい態度に変えて話し始めた。
やれやれ、今度は泣き落としでいくつもりらしい。
「まあそうだったのですか。それはなんという悲劇でしょう……それで具体的にはどのように貯めていたのでしょうか」
お金の話になると食い付きのいい聖女様だった。
「え? それは……」
「これだけの貯蓄方法、是非ともご教授願いたいです」
「そうですか? ともかく贅沢は決してせずにですね極力慎ましく生活を続けるのです」
「本当にそれだけでしょうか? もっと色々な手法をお持ちのように見受けられますが」
「さすがは聖女様、実はですね……実際の収穫量をほんの少しだけ少なく見積もってですね……」
「ほうほう」
感心したように話を聞くセレーネ。
「後はこう重りをちょこっと細工して……」
え、それって不正じゃないの?
「つまり収穫量と実際の売り上げを少しずつ誤魔化して建てた家なんですね」
「ま、まあ……そんなはっきりと仰らなくても……」
「つまり皆さんが精魂込めて作った作物の売り上げなどを何年にも渡って騙していたわけですね!」
その場に居る全員に聞こえるようにセレーネが大きな声で旦那様の不正を告発した。
「いい!? そ、そういうわけでは……」
旦那様がセレーネの口を慌てて塞ごうとするが、さすがに聖女様に触れるのはマズいと思ったのか出来なかった。
「なんだと、それはどういうことなんだ?」
「そんな、わたしらは騙されていたの?」
村人達が旦那様を見る目が変わっていくのが分かった。
「ま、待て、待つんだ! い、今のその……聖女様が、いや、その、その言葉のあやだ……ちょっと話を盛っただけだ!」
「昔から何処かおかしいと思っとったんだ。なんでアンタだけがそんなに金があるのかって」
「そうだ。おらんところの爺様も昔から言っていただ!」
「ち、違う! 違うんだ!」
元々疑惑があったんだろう。詰め寄る村人達に旦那様は必死で否定し続けるが親族以外は誰も信じようとはしない。
幾ら何でもあの家は豪華すぎだったもんな。真っ当な儲けじゃとても建てらないよな。
「それでは裁定をしていただきましょう。騎士様!」
「うむっ!」
セレーネの背後から3人の馬鹿、いや騎士が現れた。
「って、アンタ等まだ居たのか。なんか真っ黒だけど大丈夫なのか?」
それにしても本当に凄い鎧だな。
あんなに爆心地の近くに居たのに、被害はほとんどないなんて。
「裁定を申し渡す! 民を騙すとは不届き千万、その罪重いとしれ! 確保!!」
騎士達は旦那様を確保するのだった。
俺はその間、気になった騎士達の鎧をこっそりとディテクトで調べてみる。
へぇ、なるほど……これは凄え性能だ。あ、なんだこれ? ほう……なんか上手いこと使えそうな感じだな、ぐふふ、悪いことを考えてしまうのだった。
その言葉にデルは少しだけ笑顔になると小さく頷いた。
埃を払いながら、旦那様も立ち上がるとぎっと睨んできた。
「とにかく何がなんでも支払わせるからな!」
「……はぁ、だったらあそこで寝てるトロルを起こしましょうか? それで本来起こった悲劇がどれほどのことだったか少しは分かるでしょ」
「き、貴様、勇者のくせに脅すつもりか! なんて悪魔のような考えが出来るんだ……」
また悪魔かよ。
「いいか! この問題は必ず大きくさせるからな!」
「それは無理だと思いますよ」
「五月蠅い! 余計なこと……え、せ、聖女様……!?」
治療を終えたのか、いつの間にかセレーネが直ぐ近くに来ていた。
さすがの旦那様も怒鳴った相手が聖女だったことに驚いて一気に声のトーンが変わった。
「今回のことはわたくしも大変残念な出来事だと思っております。ですがが彼らを責めるのは全くのお門違いです」
「いくら聖女様の知り合いだとしても、やってしまったことに代わりはありません!」
「ですが、3バ……3人の巡回騎士の力を持ってしても全く歯が立たなかった相手ですから、もしかしたら軍隊を持ってしても倒すのは難しかったことでしょう」
一瞬3バカと言いかけたよね? さすがの聖女様でも彼奴らのことをバカだと思っているのか。確かにバカだけどさ。
「そうだったかもしれませんが聖女様、だからと言って家を破壊していいはずがありません!」
「いえ、むしろ勇者様がここにいらっしゃったからこそ、あの魔物達を倒し、これだけの被害で済んだのです」
セレーネは旦那様の抗議を全く聞き入れず自分の話を続ける。
「もし王国軍を動かそうものなら、どうなるとお思いでしょう。彼らは勝利を第一に考えて、大規模な人員で田畑は馬や兵士に踏み荒らされ建物も好き放題使われ、最悪の場合この辺りに火をかけられ二度と人が住めない土地にされてしまったかもしれません」
「さ、さすがにそこまでは……」
「い、いや聖女様の言うとおりだ」
親族の1人が青ざめた顔をしながらセレーネの話を肯定した。どうやらこの国の軍隊はかなり荒々しいらしい。
ドガとここは国が違うのか? それとも軍の部隊が違うのだろうか。
「そこまでしないと倒せない相手なのです。一部の家屋の被害だけで済んだなどむしろ奇跡と言えないでしょうか」
「そんな……祖父の代から少しずつ貯めてやっと建てられた家だったのに……」
旦那様はいきなりしおらしい態度に変えて話し始めた。
やれやれ、今度は泣き落としでいくつもりらしい。
「まあそうだったのですか。それはなんという悲劇でしょう……それで具体的にはどのように貯めていたのでしょうか」
お金の話になると食い付きのいい聖女様だった。
「え? それは……」
「これだけの貯蓄方法、是非ともご教授願いたいです」
「そうですか? ともかく贅沢は決してせずにですね極力慎ましく生活を続けるのです」
「本当にそれだけでしょうか? もっと色々な手法をお持ちのように見受けられますが」
「さすがは聖女様、実はですね……実際の収穫量をほんの少しだけ少なく見積もってですね……」
「ほうほう」
感心したように話を聞くセレーネ。
「後はこう重りをちょこっと細工して……」
え、それって不正じゃないの?
「つまり収穫量と実際の売り上げを少しずつ誤魔化して建てた家なんですね」
「ま、まあ……そんなはっきりと仰らなくても……」
「つまり皆さんが精魂込めて作った作物の売り上げなどを何年にも渡って騙していたわけですね!」
その場に居る全員に聞こえるようにセレーネが大きな声で旦那様の不正を告発した。
「いい!? そ、そういうわけでは……」
旦那様がセレーネの口を慌てて塞ごうとするが、さすがに聖女様に触れるのはマズいと思ったのか出来なかった。
「なんだと、それはどういうことなんだ?」
「そんな、わたしらは騙されていたの?」
村人達が旦那様を見る目が変わっていくのが分かった。
「ま、待て、待つんだ! い、今のその……聖女様が、いや、その、その言葉のあやだ……ちょっと話を盛っただけだ!」
「昔から何処かおかしいと思っとったんだ。なんでアンタだけがそんなに金があるのかって」
「そうだ。おらんところの爺様も昔から言っていただ!」
「ち、違う! 違うんだ!」
元々疑惑があったんだろう。詰め寄る村人達に旦那様は必死で否定し続けるが親族以外は誰も信じようとはしない。
幾ら何でもあの家は豪華すぎだったもんな。真っ当な儲けじゃとても建てらないよな。
「それでは裁定をしていただきましょう。騎士様!」
「うむっ!」
セレーネの背後から3人の馬鹿、いや騎士が現れた。
「って、アンタ等まだ居たのか。なんか真っ黒だけど大丈夫なのか?」
それにしても本当に凄い鎧だな。
あんなに爆心地の近くに居たのに、被害はほとんどないなんて。
「裁定を申し渡す! 民を騙すとは不届き千万、その罪重いとしれ! 確保!!」
騎士達は旦那様を確保するのだった。
俺はその間、気になった騎士達の鎧をこっそりとディテクトで調べてみる。
へぇ、なるほど……これは凄え性能だ。あ、なんだこれ? ほう……なんか上手いこと使えそうな感じだな、ぐふふ、悪いことを考えてしまうのだった。
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