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第三話
今更の紹介<Ⅰ>
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ご飯を食べ終わるころに外はすっかり暗くなっていた。
「あ、そうだった。とりあえず紹介しておくと……彼女はアティウラ」
「今更!?」
デルが少しわざとらしく驚いた。
「仕方ないだろ、なんか色々とあったんだし」
「一体何処でメイドさんを雇ったのでしょうか」
今更になってセレーネとデルは少しばかり引き気味に見ている。
「ち、違うって、彼女はアマゾネスの戦士だから。森の中を一人で行動するのは危険だから護衛として雇ったんだよ」
「既に手込めにされたメイドです」
「はあ!?」
この人、また余計なことを言い始めたよ! さっきの謝罪とかはなんだったんだ。
「だって昨晩、あんなに一緒に汗だくになっじゃないですか」
「あ、汗だくぅ!?」
涙目で何故か俺に訴えるように見てくるセレーネ。
「お前なあ、さっきは女の子怖いとか言っておいてすることはしているんじゃねーか」
アティウラが余計なことを言ったせいでデルが一瞬睨むと直ぐに呆れた顔をした。
「何度も汗だくになって大変でした」
「な、何度も!? そ、そんなぁ……わ、わたくしには素っ気ないのにぃ……」
セレーネはデルと少し反応が違って、何故か少しふて腐れてしまった。
「さ、サウナに一緒に入っただけでしょう!!」
「そうとも言います」
「そうとしか言わないって!」
「え、サウナ? なんだサウナですか……って、一緒に入ったのですか!? あのお知り合いになったのは昨日ですよね?」
そこは君も人のことは言えないと思うのだけど、知り合って直ぐに色々とあったよね。
「運命的な出会いだったので」
「運命的な出会い? それってもしかして……」
「と、とにかく! 彼女はデル。魔法使いって言っていいの?」
デルが余計なことを聞く前に無理矢理割って入って話を戻す。
「思い切り言ってるんだけど、まあ身なりでバレバレだからいいけどさ。僕はヴェンデルガルト、一応紋様族で魔法使いってことになるのかな」
「紋様族ですか……」
「……今バカにした?」
紋様族と聞いてアティウラは少し含んだような言葉にデルは少しカチンときた。
「馬鹿になんて、少し知っているってだけ」
「え、僕等のことを知ってるの?」
「故郷の近くに紋様族の里があるから」
「え、もしかして、あの里のアマゾネスってこと……うわぁ」
「なにか?」
「いや、なんでもないよ」
今度はデルが反撃とばかりに含んだ言い方をするとアティウラは即真顔になった。どうやらお互いに何かあるらしい。
「一応、デルは成体のワイバーンを一撃で倒せるほどの実力者だからな。それに駆け出しとはいえ魔法使いの勇者を一人でボコボコにもしてるし」
「そう……なの?」
「本当なんだって」
あまり信じていないって顔をしているアティウラ。
「気にしなくて良いって、あくまでもアンタの力を借りて出来たことで、どっちにしても僕の実力じゃないもの」
いやでも魔法使いをボコボコにしたのは明らかに君の実力だったよね。
「そして彼女はセレーネで聖職者だ」
「よろしくお願いします。見ての通りの巡回聖職者です」
そう言って聖職者らしく挨拶をする。
「アティウラです。先ほどは色々とどうも……よろしく」
「こちらこそよろしくお願いしますね」
この2人はどうやら何か通じる物があるらしい。
その通じる物を深く考えたくないので今は黙っておこう。
「それでコイツとの運命的な出会いってもしかしてさ……」
「ま、まあ、暗くなったしそろそろ中に戻ろうぜ」
デルが再び余計なことを聞こうとする。きっと良くない流れになりそうなので慌てて話を逸らそうとする。
「川辺で用を足しているとき……」
「ちょ、あ……」
止めようとしたが、アティウラは構わずに話すと二人は呆れ気味にため息をついた。
「やっぱりそうなのか」
「やっぱりって……もしかして二人とも?」
「ええ、わたくしも勇者様との出会いは同じでした」
「じゃあ……」
「そうだよ、僕も少し油断してたんだよ」
三人が一斉に俺の方を見た。
「……やっぱりわざと?」
アティウラがボソッとそう言った。
「そんなわけあるか! どうやったらあんな状況でワザと出来るんだよ!」
「やはり……勇者様は女性が用を足しているところをこっそり覗き見るのが趣味だったのですね……」
「ぶー!! 何を言ってんだ!」
セレーネは恥ずかしそうな顔をしながら、恐ろしいことを言い出した。
「うわっ、マジで最悪じゃん」
「なるほど……そっか」
セレーネの爆弾発言にデルとアティウラがマジで引いてしまう。
「わ、分かりました。わ、わたくしのそんな姿で勇者様の気持ちが晴れるのでしたら、が、頑張ってみます……」
「しなくていいから! 馬鹿なことを言うな!」
「よろしいのですか? どうしてもと仰るのでしたら、わたくしは構わないのですけども」
「え……」
どうやらセレーネは本気らしい。見るのは別に嫌ではないが、それを本当の性癖と思われては甚だ困りものである。
「い、いや、そんなことしなくていいから」
「今、少しだけ間があったね?」
「うん、あった。やっぱりそう言う趣味なんじゃん」
先ほどからドン引きしているアティウラとデルは突っ込みを繰り出してくる。
「そ、そうですか。分かりました……では」
「いいから! しなくていいから! もう暗くなったんだから早くシェルターに戻ろう!」
これ以上変な方向に持って行かれたくないので話を無理矢理中断させた。
「あ、そうだった。とりあえず紹介しておくと……彼女はアティウラ」
「今更!?」
デルが少しわざとらしく驚いた。
「仕方ないだろ、なんか色々とあったんだし」
「一体何処でメイドさんを雇ったのでしょうか」
今更になってセレーネとデルは少しばかり引き気味に見ている。
「ち、違うって、彼女はアマゾネスの戦士だから。森の中を一人で行動するのは危険だから護衛として雇ったんだよ」
「既に手込めにされたメイドです」
「はあ!?」
この人、また余計なことを言い始めたよ! さっきの謝罪とかはなんだったんだ。
「だって昨晩、あんなに一緒に汗だくになっじゃないですか」
「あ、汗だくぅ!?」
涙目で何故か俺に訴えるように見てくるセレーネ。
「お前なあ、さっきは女の子怖いとか言っておいてすることはしているんじゃねーか」
アティウラが余計なことを言ったせいでデルが一瞬睨むと直ぐに呆れた顔をした。
「何度も汗だくになって大変でした」
「な、何度も!? そ、そんなぁ……わ、わたくしには素っ気ないのにぃ……」
セレーネはデルと少し反応が違って、何故か少しふて腐れてしまった。
「さ、サウナに一緒に入っただけでしょう!!」
「そうとも言います」
「そうとしか言わないって!」
「え、サウナ? なんだサウナですか……って、一緒に入ったのですか!? あのお知り合いになったのは昨日ですよね?」
そこは君も人のことは言えないと思うのだけど、知り合って直ぐに色々とあったよね。
「運命的な出会いだったので」
「運命的な出会い? それってもしかして……」
「と、とにかく! 彼女はデル。魔法使いって言っていいの?」
デルが余計なことを聞く前に無理矢理割って入って話を戻す。
「思い切り言ってるんだけど、まあ身なりでバレバレだからいいけどさ。僕はヴェンデルガルト、一応紋様族で魔法使いってことになるのかな」
「紋様族ですか……」
「……今バカにした?」
紋様族と聞いてアティウラは少し含んだような言葉にデルは少しカチンときた。
「馬鹿になんて、少し知っているってだけ」
「え、僕等のことを知ってるの?」
「故郷の近くに紋様族の里があるから」
「え、もしかして、あの里のアマゾネスってこと……うわぁ」
「なにか?」
「いや、なんでもないよ」
今度はデルが反撃とばかりに含んだ言い方をするとアティウラは即真顔になった。どうやらお互いに何かあるらしい。
「一応、デルは成体のワイバーンを一撃で倒せるほどの実力者だからな。それに駆け出しとはいえ魔法使いの勇者を一人でボコボコにもしてるし」
「そう……なの?」
「本当なんだって」
あまり信じていないって顔をしているアティウラ。
「気にしなくて良いって、あくまでもアンタの力を借りて出来たことで、どっちにしても僕の実力じゃないもの」
いやでも魔法使いをボコボコにしたのは明らかに君の実力だったよね。
「そして彼女はセレーネで聖職者だ」
「よろしくお願いします。見ての通りの巡回聖職者です」
そう言って聖職者らしく挨拶をする。
「アティウラです。先ほどは色々とどうも……よろしく」
「こちらこそよろしくお願いしますね」
この2人はどうやら何か通じる物があるらしい。
その通じる物を深く考えたくないので今は黙っておこう。
「それでコイツとの運命的な出会いってもしかしてさ……」
「ま、まあ、暗くなったしそろそろ中に戻ろうぜ」
デルが再び余計なことを聞こうとする。きっと良くない流れになりそうなので慌てて話を逸らそうとする。
「川辺で用を足しているとき……」
「ちょ、あ……」
止めようとしたが、アティウラは構わずに話すと二人は呆れ気味にため息をついた。
「やっぱりそうなのか」
「やっぱりって……もしかして二人とも?」
「ええ、わたくしも勇者様との出会いは同じでした」
「じゃあ……」
「そうだよ、僕も少し油断してたんだよ」
三人が一斉に俺の方を見た。
「……やっぱりわざと?」
アティウラがボソッとそう言った。
「そんなわけあるか! どうやったらあんな状況でワザと出来るんだよ!」
「やはり……勇者様は女性が用を足しているところをこっそり覗き見るのが趣味だったのですね……」
「ぶー!! 何を言ってんだ!」
セレーネは恥ずかしそうな顔をしながら、恐ろしいことを言い出した。
「うわっ、マジで最悪じゃん」
「なるほど……そっか」
セレーネの爆弾発言にデルとアティウラがマジで引いてしまう。
「わ、分かりました。わ、わたくしのそんな姿で勇者様の気持ちが晴れるのでしたら、が、頑張ってみます……」
「しなくていいから! 馬鹿なことを言うな!」
「よろしいのですか? どうしてもと仰るのでしたら、わたくしは構わないのですけども」
「え……」
どうやらセレーネは本気らしい。見るのは別に嫌ではないが、それを本当の性癖と思われては甚だ困りものである。
「い、いや、そんなことしなくていいから」
「今、少しだけ間があったね?」
「うん、あった。やっぱりそう言う趣味なんじゃん」
先ほどからドン引きしているアティウラとデルは突っ込みを繰り出してくる。
「そ、そうですか。分かりました……では」
「いいから! しなくていいから! もう暗くなったんだから早くシェルターに戻ろう!」
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