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第三話

女戦士族<Ⅰ>

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 アティウラに肩を貸しながら森の中を歩くこと1時間と少し。
 それまで鬱蒼としていたところから等間隔に植えられた場所に変わりしっかりと道らしきものも確認出来たので、どうやら魔物の森を抜けて人が足を踏み入れるところまで辿り着いたらしい。

「ごめんね……」

「気にしなくて良いよ。そのおかげで助かったんだし」

 最初彼女の言葉だと1時間で辿り着くはずだったが、思った以上に身体が動かず歩く速度がままならないためかなり遅れていた。

「この辺りで少し休憩をしよう」

「でも……」

「急ぐ気持ちは分かるけど大分歩いたし、先のことを考えたら少し休憩を入れた方がいいと思うよ」

 アティウラは黙って頷いたので適当に座れそうな倒木に腰掛けさせると、雑嚢から水筒を取りだして渡す。

「ありがとう」

 ぐいっと一口水を含む。
 水の補給が何時出来るか分からないので、がぶ飲みはしない。

 その間にサーチでトロル達の動向をうかがうと動き始めているのが分かった。
 距離は大分あるので、少しの休憩くらいで追いつかれる心配はないだろう。

 ついでにアティウラの状態を調べるとステータス異常は変わらず表示されている。アマゾネスならしばらくしたら回復するってどういう意味なんだ?

「あのさ……アマゾネスって……」

「あ……私は“アマゾネス”……亜人よ」

「そうなの?」

「“女戦士族”って呼ばれているけど……」

 どうやら普通は知っている結構有名な亜人らしい。
 しかし裸を見たけど、特におかしなところや変わったところは感じなかったけど……。

「分からない?」

「あ、うん……綺麗なメイドさんとしか」

「……そう」

 少しだけ頬赤くするアティウラ。

 現地の人間から見たら顔つきが違うとかなんだろうけど、俺はまだこの世界、いや星に来たばかりでそんな些細な違和感は分からない。
 むしろ合う人、全員が外国人のように見えているくらいだし。

「もしかしてボクは“勇者”?」

「え、あ……まあ一応そうなんだけど……」

 一瞬だけアティウラの顔が強ばったが、直ぐにそれはため息に変わる。

「いや、倒すなら……機会はあったものね」

 勇者と聞いて直ぐに討伐されると身構えたってことかよ。ああもう、勇者の諸先輩方は一体どれだけのことをこの星でしでかしたんだ?
 本当に何処に行っても、こんな感じでさすがに嫌になってくるな。

「俺は経験値とかそういうのにあまり興味ないから」

 要らないとは言わないが美人や可愛い子を倒してまで手に入れるものではない。
 それに職業ニートでレベルが上がっていくのはなんとなく躊躇いがある。

「命の恩人なのに……ごめんね」

「いや、恩人ならお姉ちゃんの方じゃない」

 それに良いものも見せてもらったし、おっぱいは固かったけど。

「……不思議な子」

「そうかな? まあそう見えるのかもしれないね」

 何せ、世界に降りる前にネタバレしているからな。
 この世界に神はいないし、いるのは宇宙人と世界を管理するAIだけだってな。

 そのせいで世界の何もかもを穿って見てしまうから、レベルやら経験値など所詮彼らが作ったモノと全く興味が持てないわけだ。

 アティウラに水筒を再度手にするともう一口だけ口に含んだ。

【“ワードサーチ”アマゾネス】

 彼女が水を飲んでいる間にアマゾネスのこと調べてみる。

【女戦士族(アマゾネス):神々が自分を護る戦士として造った“ワルキューレ”の末裔である。雌型しか存在しない珍しい種族で人間に酷似しているが身体的な能力は格段に上である】

 まじか。なんか凄え格好いい設定じゃないか。

【非常に優れた戦士であり1人で人間10人分以上の兵力があると言われおり、部族単位で戦場を渡り歩く優秀な傭兵集団である】

【亜人にしては珍しく初級の全てと中級の一部の剣技の使用が可能であり、初級者クラスの勇者では対応を間違えるとあっさりと負ける】

【更にリジェネレイトと呼ばれる回復能力を持っており、MPが許す限り自身の身体の回復が可能である。効果は瞬時ではないがおおよそ10分に1HPずつ回復していく】

 どうやら、マジで強めの種族らしいな。

【人間との違いはわざとらしいほどプロポーションが良いことと、犬歯が通常よりも明らかに長い】

 なるほど多分普通の人間と並べば体型の違いで直ぐに分かるみたいだな。
 あまり口を開かないのは、牙を見られるのを避けているのかもしれない。

 しかし結構スペック高めの彼女ですらトロルには勝てないのか。そもそも単体で戦う相手じゃなくていわゆるレイドボスみたいなものか。
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