上 下
161 / 388
第二話

奇跡の生還?<Ⅲ>

しおりを挟む
「ちょ、こ、こらぁ……」

「だからこうしていても、よいではないか、よいではないか」

「も、もう、くすぐったいって……」

 デルも黙っていればかなりの美少女だから、こんなことが出来るのは主になった特典とも言える。
 それにしても乙女の太ももの間はたまらんなぁ、この仄かに汗の臭いが混じってるところまたなんとも……。

 物凄くおっさんぽい……いや元々はおっさんだけどさ。
 肉体が若返ったからなのか少しばかり考え方まで若くなっている気がする。

「全くもう……なんて主なんだか」

 やれやれと言った口調で俺にされるがままになってくれる。

「どっちにしても僕達の主様になってくれてありがとね」

「あの形だと断れないだろ」

「……ま、まあそうだったかも」

 君達は本当に姿形は天使みたいなのに意外に強かだよな。
 可愛いは正義というのはまさに真実なんだと実感してしまう。

 同じことをオークやコボルドに言われたとしても間違いなく断っただろう。
 俺には他の世界に飛んでいった諸先輩方のようにモンスターの盟主になるのは厳しい。だってノールなんてコボルドをまんま生で食うし、すげえ血とか内蔵が飛び散ってたし。
 もしあれを食事で出されたらグロすぎてとてもじゃないが食べられん。

「あとさ、僕のストーンピラーが暴走したときも止めてくれたでしょ、あれって魔導柱を落としたんだよね」

「異変に気付いたときに直ぐにやったんだけど、どうしても時差があるんだよな」

「ううん、凄く助かった。あのとき大体おおよそ半分くらい放出した感じだったから出し切ってたら、あの辺一帯柱だらけにしてたと思う」

「あれで半分だったのかよ……凄えな」

「魔法は途中で止まったんだけどMPは全部取られちゃった」

「無理矢理落としたからかな。でもその辺りの再検証は難しいな」

 とりあえず魔導柱を落とすと途中の魔法でもMPが全部奪われると憶えておこう。

「そのあと僕をゴーレムから庇ってくれたでしょ」

「ああいうのは咄嗟のことだからよく憶えていないし、結局あっちの副長さんが倒したんだから格好も付かないけどな」

「そんなことないよ。咄嗟の時こそ人の本性が出るものなんだから」

 デルに褒められるとなんか妙に恥ずかしくなり俺は照れ隠しに、顔をスリスリして誤魔化す。
 本当にこの弾力のある柔らかさときめ細かな肌触りがたまらないな……。

 調子に乗って動かしていたら脚の付け根の方にまで顔が当たってしまう。

「ちょ、ちょっと……うわぁ、なんかやっぱ変態っぽいって、うー、あんまり余計なことするんなら止めさせるからね」

「お、主に逆らうのかね。それにあー、急にお腹の辺りに痛みが……あー、これ誰かに蹴られたからなー……」

「ぬぐっ、このぉ……ふん、だったら好きにすれば良いじゃない!」

「ふっふっふ、好きにさせて貰うぜ。お、なんだか良い匂いがするな……なんの匂いなんだろうか。くんくん……」

 デルの脚ではなく身体の方から仄かに良い匂いがする。

「ぎゃー! 何処の匂いを嗅いでいるんだよ!」

「だってこっちの方からなんか良い匂いがするんだけど」

「へ、変態! や、やっぱりそういう人間なんだな!」

「おしっこの匂いなんていってねーよ」

「ば、ばかっ! って、そ、そうなの? い、一応……香油を付けてるからその匂いだと思うけど」

 おしっこの匂いでも嗅いでいたのかと思っていたみたいだな。

「なるほど香油か。こんな匂いがするのか……これは結構良いかもしれない」

「だ、だからってそこの匂いを嗅ぐな!」

 チョップが来るかと思ったが、ギリギリで止めていた。

「全くそれだけスケベなくせにセレーネはよく一緒に行動しているわよね」

「そこは、俺も不思議なんだよな」

 一応、賠償責任があるけど。

「男女二人旅で、そういうことをしないってもしかして聖女だから厳しいのかな」

「いや、そういうことじゃな……」

 そこまで言いかけて慌てて言葉を噤んだ。

「なに、もしかして何かあったの?」

「な、何もないよ……」

「ちょ、こ、こら……そうやって誤魔化そうとすんな!」

 黙らせようとデルの脚に再びしがみついて顔を埋めたが、怒られてしまった。

「ノーコメントで」

「言いたくないのか。もしかしてセレーネとの相性が悪かったとかだったりして」

「相性以前の話……いや、なんでもない」

 こいつ……意外と話を引き出すのが上手いな。

「じゃあ、あれね。失敗しちゃったんでしょ」

「ぐぬっ……」

「まじか……。そういうのって男の方は結構気にするっていうけど本当なんだね」

「う、うるさいなぁ……」

 図星を突かれて拗ね気味な言い方をしてしまう。

「あ、ごめん……気にしてるんだよね。でもセレーネはそんなに気にしていないと思うよ」

 だとしても俺が気にしているんだよ。
 とは言えず黙ってしまう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。

可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました

Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、 あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。 ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。 けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。 『我慢するしかない』 『彼女といると疲れる』 私はルパート様に嫌われていたの? 本当は厭わしく思っていたの? だから私は決めました。 あなたを忘れようと… ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

処理中です...