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第二話
タイマン勝負<Ⅴ>
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「無知だと!? 俺が、俺のことを無知だというのか!」
どうやら頭が悪いと言われることに強いコンプレックスでもあるのだろうか。
デルなどを見る限り魔法の使い方もヘタだしそれほど頭の良い部類とは思えない。
「ああ、だから魔法使いなのか。戦士だと“バカ”だって思われるかもしれないのが嫌だからか!」
「な!? ふ、ふ、ふざけるな!!」
図星か。最初はちゃんと後衛にいて慎重なのかと思ったけど、ただ単に卑怯なだけだったし。
そもそも魔法の性質も理解出来ていない。レーザーの性質や、絶対防御と高を括ってどの系統には効果が無いとかも分かっていなかった。
「この野郎! お前らを道連れにしてでも殺してやる! “ファイアーボール”!」
柱の上で無理矢理杖を構えて呪文を唱えた。
………………。
「な、なんでだ!? ……な、わ!?」
だが魔法は発動せず、それに驚いた彼は杖を見てそちらに意識がいったのか、狭い柱から手を滑らせて落ちてしまう。
「ば、馬鹿野郎!」
「“マディ”!」
………………。
慌てて何かの魔法を使うデルだったが、当然こちらも同じく何も起こらない。
まだ魔導柱は復旧していないので発動不可の状態だった。
ぐしゃっ!
近くのゴツゴツとした岩場にイヤな音を立てて背中から落ち、鈍い音がする。
「ぐふっ! ……な、なんで……つ、つえ……」
強か打ち、口から血を吐き出した。
慌ててセレーネが彼の元に走り寄ろうとするが俺が彼女手を掴んでそれを制する。
「……此奴らはどうせ死なないんだ。回復させるだけ無駄だよ、その分は紋様族に使ってやって」
「で、ですが……」
俺はそれ以上言葉を出さなかった。それに何かを感じたのか言葉を止め、小さく頭を上下に動かした。
そしてセレーネの代わりに俺が奴の近くに寄る。
「な、なんで……、ま、魔法が……」
「少しは懲りたか? お前よりも強い魔法使いや存在は沢山居るんだ」
「ぐはっ……、ば、バッカじゃねーの……なにゲームにマジになってんだ……よ」
血を吐き出しながらそれでも姿勢を崩さない彼に、俺の言葉は通じなかった。
「そうか、まあそうだな、これはゲームなんだよな。だったら俺も好きにしていいんだよな」
俺は未だに大事に持っている杖を奪う上げる。
「な、何をする!」
抵抗はするが、力が入らないのか俺でも簡単に奪えた。
「“コンソール”!」
奪った杖を早速魔法で調べる。
魔力向上、MP向上、MP補助、詠唱無用、レベル5呪文全利用可能、攻撃魔法絶対防御……。
うわぁ……どれだけオプションが付いてんだよ。
この杖は持っているだけで魔法が使える代物ってわけだな。
やはり此奴は魔法の原理や仕組み何一つ理解していない。つまりこの杖を奪われたら魔法使いなのに魔法が使えない状態になるのか。
「最後に聞くけど、彼らを諦めるつもりはないか?」
「……は? ぐふっ……ふざけんな……どうせ俺は復活する……そうしたら今度は絶対……」
「よし分かった。“アナライズ”!」
【analyze..........】
魔法の杖の周りに魔方陣が複数展開される。
「……な、何だ……それ……」
口周りを血まみれにしながらも、自分の大事な杖に何かが起こったのを驚きの目で見た。
「勇者様?」
「な、何をするつもりよ……」
それを見たデルとセレーネが驚いている。
「今ちょっとこれを解析している」
「……は、はったりだ……」
力なくそういう魔法使いだが目には不安の様子がうかがえる。
「はったりかどうかもうすぐ分かるさ」
俺以外全員が固唾をのんでそれを見ている。
ぐるぐると回る魔方陣、杖に輝き始めそれが全体に回ると鏡のように割れた。
【....complete】
光がおさまるとそこには何も変わった様子のない杖が置いてあった。
「よし、帰属解除完了だ」
デルがそんなバカなという言わんばかりの顔をする。
「嘘でしょ?」
「嘘かどうか。触ってステータス見れば分かるよ」
「………………」
魔法使いは力なく黙ってこちらを見ている。
そろそろ限界かもしれない。
「うわっ!? ほ、本当に……帰属されていない……」
「……そ、そんなはず……う、嘘……だ。 だ、騙しているだけ……」
デルの驚いた声に、力が入らなくても必死に否定する魔法使い。
「だったら装備ウィンドウを見てみろよ」
「……っ……っ!? ば、バカな……」
震える手でステータスを拡げて確認をするが彼の装備品から大事な杖が消えているのが確認出来たらしい。
「残念だったな」
「……くそっ、くそ……くそーっ!! ふざけるな! その杖は俺のモノだぞ! 返せ! 返せよ!!」
身体はほとんど動かないはずだが、最後の力を振り絞ったのか必死の声を上げた。
「そんなに暴れると危ないですって!」
セレーネはそう指摘するが、魔法使いにとってそれどころではないらしく暴れていた。
「返せっ! 返し……うっ! がっぐ……ぐはっ!」
大量の血を吐き出す魔法使い。もうそろそろかもしれない。
「お前が死んでポータルに戻る前に一つ良いことを教えておこう。この杖はずっと未帰属のまま俺が持っていてやる。取り返したかったら俺のところまで来い」
「ふざ……け……」
「だがお前はこの杖のおかげで魔法を使えていただけだ。本来の魔術師達のように基礎から勉強したわけじゃない。適当な杖を手に入れたところで魔法は使えまい」
「そ、それ……は……」
「まあ、必死で勉強すればなんとかなるかもしれない。いっそ剣士にでも転職するか? でもこんな小さな女の子にも勝てないのがどうやってなるかは知らないけどな」
「ぐぼっ! た、たかがゲームで……何をマジになってんだよ……」
「ああ、たかがゲームじゃないか。PKって楽しいだろ?」
「なっ! こ、このや……!」
何か言いかけたところで魔法使いの身体が光の球となって飛んでいく。ポータルに戻されたようだな。
彼の大事な杖は、俺の手の中から動くことはなかった。どうやら本当に帰属解除ができているようだな。
「ふう……終わったな」
あれに刃物とはよく言ったが結局魔法らしい魔法を使わせることなく勝てた。
「……お疲れ、何もそこまで悪役にならなくても良かったのに」
「そうですよ……」
デルとセレーネが俺の顔を心配そうに見ながら、ワザと悪役に徹したことを指摘してきた。
「うーん、でもああいう手合いってしつこそうだしさ」
「あいつ戻ってくるかな?」
「戻ってくるのは無理だな。杖がない以上単身で魔物の森の入口辺りですら生きていけないよ」
「そうなの? 確かに強力な魔法を使う割に使い方が素人みたいだったけど」
「この杖のおかげなんだよ。こいつのおかげで無理解でも無詠唱で魔法が使えていただけなのよ」
「なるほどね……、それなら確かに魔物の森にすら入れないわ」
そう言ってデルは心底疲れた様子で手頃な岩に座り込む。
「しかし、まさかデルがあんなに強いなんて思いもしなかったよ」
「そうかな、一族で一番大きくて力が強かったから自然と身についていったんだよね」
「俺から見たら小さめの可愛らしい女の子しか見えないんだけどな」
「な!? ば、バカなことを言ってんじゃないわよ!」
顔を赤らめると同時に紋様も赤く輝いていた。
「い、一応、幼い頃にお母さんに戦い方を教わってるんだよ。その後は独学だけどね」
ああそうかお母さんは人間だっけ。
「たまにはぐれゴブリンとかオークが里の近くに現れるから、僕は前衛として戦ってんだよ」
なるほどかなり実践的なんだな。
「それじゃあ戻ろうか」
「そうですね」
どうやら頭が悪いと言われることに強いコンプレックスでもあるのだろうか。
デルなどを見る限り魔法の使い方もヘタだしそれほど頭の良い部類とは思えない。
「ああ、だから魔法使いなのか。戦士だと“バカ”だって思われるかもしれないのが嫌だからか!」
「な!? ふ、ふ、ふざけるな!!」
図星か。最初はちゃんと後衛にいて慎重なのかと思ったけど、ただ単に卑怯なだけだったし。
そもそも魔法の性質も理解出来ていない。レーザーの性質や、絶対防御と高を括ってどの系統には効果が無いとかも分かっていなかった。
「この野郎! お前らを道連れにしてでも殺してやる! “ファイアーボール”!」
柱の上で無理矢理杖を構えて呪文を唱えた。
………………。
「な、なんでだ!? ……な、わ!?」
だが魔法は発動せず、それに驚いた彼は杖を見てそちらに意識がいったのか、狭い柱から手を滑らせて落ちてしまう。
「ば、馬鹿野郎!」
「“マディ”!」
………………。
慌てて何かの魔法を使うデルだったが、当然こちらも同じく何も起こらない。
まだ魔導柱は復旧していないので発動不可の状態だった。
ぐしゃっ!
近くのゴツゴツとした岩場にイヤな音を立てて背中から落ち、鈍い音がする。
「ぐふっ! ……な、なんで……つ、つえ……」
強か打ち、口から血を吐き出した。
慌ててセレーネが彼の元に走り寄ろうとするが俺が彼女手を掴んでそれを制する。
「……此奴らはどうせ死なないんだ。回復させるだけ無駄だよ、その分は紋様族に使ってやって」
「で、ですが……」
俺はそれ以上言葉を出さなかった。それに何かを感じたのか言葉を止め、小さく頭を上下に動かした。
そしてセレーネの代わりに俺が奴の近くに寄る。
「な、なんで……、ま、魔法が……」
「少しは懲りたか? お前よりも強い魔法使いや存在は沢山居るんだ」
「ぐはっ……、ば、バッカじゃねーの……なにゲームにマジになってんだ……よ」
血を吐き出しながらそれでも姿勢を崩さない彼に、俺の言葉は通じなかった。
「そうか、まあそうだな、これはゲームなんだよな。だったら俺も好きにしていいんだよな」
俺は未だに大事に持っている杖を奪う上げる。
「な、何をする!」
抵抗はするが、力が入らないのか俺でも簡単に奪えた。
「“コンソール”!」
奪った杖を早速魔法で調べる。
魔力向上、MP向上、MP補助、詠唱無用、レベル5呪文全利用可能、攻撃魔法絶対防御……。
うわぁ……どれだけオプションが付いてんだよ。
この杖は持っているだけで魔法が使える代物ってわけだな。
やはり此奴は魔法の原理や仕組み何一つ理解していない。つまりこの杖を奪われたら魔法使いなのに魔法が使えない状態になるのか。
「最後に聞くけど、彼らを諦めるつもりはないか?」
「……は? ぐふっ……ふざけんな……どうせ俺は復活する……そうしたら今度は絶対……」
「よし分かった。“アナライズ”!」
【analyze..........】
魔法の杖の周りに魔方陣が複数展開される。
「……な、何だ……それ……」
口周りを血まみれにしながらも、自分の大事な杖に何かが起こったのを驚きの目で見た。
「勇者様?」
「な、何をするつもりよ……」
それを見たデルとセレーネが驚いている。
「今ちょっとこれを解析している」
「……は、はったりだ……」
力なくそういう魔法使いだが目には不安の様子がうかがえる。
「はったりかどうかもうすぐ分かるさ」
俺以外全員が固唾をのんでそれを見ている。
ぐるぐると回る魔方陣、杖に輝き始めそれが全体に回ると鏡のように割れた。
【....complete】
光がおさまるとそこには何も変わった様子のない杖が置いてあった。
「よし、帰属解除完了だ」
デルがそんなバカなという言わんばかりの顔をする。
「嘘でしょ?」
「嘘かどうか。触ってステータス見れば分かるよ」
「………………」
魔法使いは力なく黙ってこちらを見ている。
そろそろ限界かもしれない。
「うわっ!? ほ、本当に……帰属されていない……」
「……そ、そんなはず……う、嘘……だ。 だ、騙しているだけ……」
デルの驚いた声に、力が入らなくても必死に否定する魔法使い。
「だったら装備ウィンドウを見てみろよ」
「……っ……っ!? ば、バカな……」
震える手でステータスを拡げて確認をするが彼の装備品から大事な杖が消えているのが確認出来たらしい。
「残念だったな」
「……くそっ、くそ……くそーっ!! ふざけるな! その杖は俺のモノだぞ! 返せ! 返せよ!!」
身体はほとんど動かないはずだが、最後の力を振り絞ったのか必死の声を上げた。
「そんなに暴れると危ないですって!」
セレーネはそう指摘するが、魔法使いにとってそれどころではないらしく暴れていた。
「返せっ! 返し……うっ! がっぐ……ぐはっ!」
大量の血を吐き出す魔法使い。もうそろそろかもしれない。
「お前が死んでポータルに戻る前に一つ良いことを教えておこう。この杖はずっと未帰属のまま俺が持っていてやる。取り返したかったら俺のところまで来い」
「ふざ……け……」
「だがお前はこの杖のおかげで魔法を使えていただけだ。本来の魔術師達のように基礎から勉強したわけじゃない。適当な杖を手に入れたところで魔法は使えまい」
「そ、それ……は……」
「まあ、必死で勉強すればなんとかなるかもしれない。いっそ剣士にでも転職するか? でもこんな小さな女の子にも勝てないのがどうやってなるかは知らないけどな」
「ぐぼっ! た、たかがゲームで……何をマジになってんだよ……」
「ああ、たかがゲームじゃないか。PKって楽しいだろ?」
「なっ! こ、このや……!」
何か言いかけたところで魔法使いの身体が光の球となって飛んでいく。ポータルに戻されたようだな。
彼の大事な杖は、俺の手の中から動くことはなかった。どうやら本当に帰属解除ができているようだな。
「ふう……終わったな」
あれに刃物とはよく言ったが結局魔法らしい魔法を使わせることなく勝てた。
「……お疲れ、何もそこまで悪役にならなくても良かったのに」
「そうですよ……」
デルとセレーネが俺の顔を心配そうに見ながら、ワザと悪役に徹したことを指摘してきた。
「うーん、でもああいう手合いってしつこそうだしさ」
「あいつ戻ってくるかな?」
「戻ってくるのは無理だな。杖がない以上単身で魔物の森の入口辺りですら生きていけないよ」
「そうなの? 確かに強力な魔法を使う割に使い方が素人みたいだったけど」
「この杖のおかげなんだよ。こいつのおかげで無理解でも無詠唱で魔法が使えていただけなのよ」
「なるほどね……、それなら確かに魔物の森にすら入れないわ」
そう言ってデルは心底疲れた様子で手頃な岩に座り込む。
「しかし、まさかデルがあんなに強いなんて思いもしなかったよ」
「そうかな、一族で一番大きくて力が強かったから自然と身についていったんだよね」
「俺から見たら小さめの可愛らしい女の子しか見えないんだけどな」
「な!? ば、バカなことを言ってんじゃないわよ!」
顔を赤らめると同時に紋様も赤く輝いていた。
「い、一応、幼い頃にお母さんに戦い方を教わってるんだよ。その後は独学だけどね」
ああそうかお母さんは人間だっけ。
「たまにはぐれゴブリンとかオークが里の近くに現れるから、僕は前衛として戦ってんだよ」
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