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第二話
タイマン勝負<Ⅰ>
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「お前なぁ……」
とりあえず戦い為の準備として一度それぞれの陣営に戻った。
俺と副長は見届け人として近くから見ることになった。
「ここまで来たら、僕等にケリを付けさせてよ」
「勇者さんごめんね。私もデルの気持ちは分かるから」
「いいけどさ……いや良くないけど」
カトリナも谷から降りてきていた。
一応人質扱いのセレーネは見える場所には居ない。
「相手はまがりなりにも勇者なんだからな?」
「大丈夫、相手は自分の杖を過信しているから隙が大きい。それにアンタに貰ったこの杖があれば十分勝てる」
「それでか? 冗談だろ……」
「相手と違って僕は自分を過信はしていない。それに紋様族にはこんな魔法使いが居るって見せておかないとああいった手合いはまた来そうだし」
「……それでもさ」
「じゃあさ、僕が勝ったら何か一つお願いを聞いてよ」
「は? 何を言ってんだよ」
「その代わり僕が負けたらなんでも一つだけお願いを聞くよ。そうすれば絶対に負けられないじゃない」
そもそも負けたら死ぬかもしれないんじゃないのか?
だがその一言を俺は言えなかった。
「……分かった」
どうせ一騎打ちがどんな形で終わったとしても、あの魔法使いが納得するとは思えない。
「あ、でもセレーネさんが危なくなったら奇跡を使ってでも止めるって言ってたよ」
カトリナが俺が悩んでいるのに気付いたのかそう言った。
そうか……谷の上でセレーネは隠れて見てるのか。
魔法使い同士、いざとなったら魔導柱を落としてどちらも魔法が使えない状態にしてしまおう。
「一対一で他の連中が手を出してもいいものなの?」
「知るか。俺は元より作法なんぞ知らんし騎士のような名誉なんてのも興味ない。目の前で身内が死ぬのを黙って見ていられるほど人間は出来てない」
デルの疑問に俺はそう答えた。
「そっか……身内か、うんそうだね」
「でも本当に気をつけろよ。相手はお前のことを経験値でしか見ていないから必ず倒しに来るぞ」
「うん、分かってる」
デルは準備を終わらせると一人歩いて進んでいく。
「カトリナ、悪いんだけどちょっとお願いしてもいい」
「え、うん、いいよ」
「それじゃ……」
デルと魔法使い。二人は約20mくらいの距離で対峙していた。
「ヴェンデル! 負けるなぁ!」
「思いっきりやっちゃえー!」
谷の上では決闘を見るために紋様族達が集まっていた。
「自分を相手に勝負を挑む度胸だけは褒めてあげましょう」
余裕を噛ます魔法使いの勇者。
「それはどうも……」
デルは右手に短い杖を持っていた。
「貴女が昨夜の眠りの魔法を使った張本人ですか」
「……だとしたら、どうだっていうの」
「そうですか……あらかじめ言っておきますが、昨夜は確かに油断しましたが、今の自分に魔法は効きませんよ」
かなりの自信を持っている様子の魔法使い。
まあ自分自身の強さじゃなくて杖のおかげだけどな。
「さて、おしゃべりもそろそろ終わりにして……さあ、そちらからどうぞ……」
相手はお先にどうぞとばかりに両手を開いて何もしてこなかった。
「そう? それならお言葉に甘えて……、とりゃ!」
デルが相手に向かっていきなり走り出した。
「な、なんだと!?」
魔法戦になると思っていた魔法使いは虚を突かれ、慌てて杖を構える。
「サンレ……いや、“ファイア……」
「“マジックアロー”!」
この前レーザーが無力化されたのを思い出したのか、慌てて炎系に切り替えたりで手間取っている間に、デルは右手の短い杖を振って輝く矢を出現させ魔法使いに向けて飛ばす。
「わっ!?」
俺が渡したあの杖は3つのスロットがあって低位の魔法を詰め込んでおけるものだった。
MPが元々低いデルにとってとても相性のいいアイテムである。
とはいえ最低位の攻撃魔法であるマジックアローでは全く効果は無い。だが相手の顔に直撃させたので魔法使いの勇者は無意識にそれを避けようとしたことで呪文を中断させてしまう。
「こ、このっ、小賢し……ひっ!?」
一瞬顔を背けて目をつぶっている間に、デルは一気に間合いを詰めて左手でナイフを取り出すと逆手持ちで斬り付ける。
「ひゃっ!? ひっ! な……!!」
右腕を斬り付けられ杖を持つ手が緩むと、デルは懐に入り膝でお腹辺りを思い切り蹴り上げた。
「ぐほっ……っ!」
くぐもった声を上げ、苦しそうに悶える魔法使いにデルは容赦なく追撃として足払いで転ばすと馬乗りにマウントを取り、落書きの残るその顔をナイフの柄で何度も殴打した。
「ぐぁ! あっ! ぐっ! や、やめ……!」
デルは全く容赦しなかった。
魔法使いが手で攻撃を払おうとするとナイフで軽く斬り付け、腕の痛みに避けるとまた顔を殴打する。
「ごぁ! も、や……ぐ! 痛っ! ぐはっ!」
「え……あ、こ、これどうすれば……」
立会人である俺は呆気にとられていた。
な、なんなんだ? この世界では無類の強さのはずの勇者が一方的にやられている。
それに紋様族ってのは弱いんじゃなかったのか……あ、そうか一応半分は人間だけど。
あの野郎は純粋な魔法の打ち合いになると思っていたんだろう。
何せ自分よりもかなり背が低く華奢な女の子が接近戦を挑んできて、しかもここまで強いなんて誰が考えていたか。
とりあえず戦い為の準備として一度それぞれの陣営に戻った。
俺と副長は見届け人として近くから見ることになった。
「ここまで来たら、僕等にケリを付けさせてよ」
「勇者さんごめんね。私もデルの気持ちは分かるから」
「いいけどさ……いや良くないけど」
カトリナも谷から降りてきていた。
一応人質扱いのセレーネは見える場所には居ない。
「相手はまがりなりにも勇者なんだからな?」
「大丈夫、相手は自分の杖を過信しているから隙が大きい。それにアンタに貰ったこの杖があれば十分勝てる」
「それでか? 冗談だろ……」
「相手と違って僕は自分を過信はしていない。それに紋様族にはこんな魔法使いが居るって見せておかないとああいった手合いはまた来そうだし」
「……それでもさ」
「じゃあさ、僕が勝ったら何か一つお願いを聞いてよ」
「は? 何を言ってんだよ」
「その代わり僕が負けたらなんでも一つだけお願いを聞くよ。そうすれば絶対に負けられないじゃない」
そもそも負けたら死ぬかもしれないんじゃないのか?
だがその一言を俺は言えなかった。
「……分かった」
どうせ一騎打ちがどんな形で終わったとしても、あの魔法使いが納得するとは思えない。
「あ、でもセレーネさんが危なくなったら奇跡を使ってでも止めるって言ってたよ」
カトリナが俺が悩んでいるのに気付いたのかそう言った。
そうか……谷の上でセレーネは隠れて見てるのか。
魔法使い同士、いざとなったら魔導柱を落としてどちらも魔法が使えない状態にしてしまおう。
「一対一で他の連中が手を出してもいいものなの?」
「知るか。俺は元より作法なんぞ知らんし騎士のような名誉なんてのも興味ない。目の前で身内が死ぬのを黙って見ていられるほど人間は出来てない」
デルの疑問に俺はそう答えた。
「そっか……身内か、うんそうだね」
「でも本当に気をつけろよ。相手はお前のことを経験値でしか見ていないから必ず倒しに来るぞ」
「うん、分かってる」
デルは準備を終わらせると一人歩いて進んでいく。
「カトリナ、悪いんだけどちょっとお願いしてもいい」
「え、うん、いいよ」
「それじゃ……」
デルと魔法使い。二人は約20mくらいの距離で対峙していた。
「ヴェンデル! 負けるなぁ!」
「思いっきりやっちゃえー!」
谷の上では決闘を見るために紋様族達が集まっていた。
「自分を相手に勝負を挑む度胸だけは褒めてあげましょう」
余裕を噛ます魔法使いの勇者。
「それはどうも……」
デルは右手に短い杖を持っていた。
「貴女が昨夜の眠りの魔法を使った張本人ですか」
「……だとしたら、どうだっていうの」
「そうですか……あらかじめ言っておきますが、昨夜は確かに油断しましたが、今の自分に魔法は効きませんよ」
かなりの自信を持っている様子の魔法使い。
まあ自分自身の強さじゃなくて杖のおかげだけどな。
「さて、おしゃべりもそろそろ終わりにして……さあ、そちらからどうぞ……」
相手はお先にどうぞとばかりに両手を開いて何もしてこなかった。
「そう? それならお言葉に甘えて……、とりゃ!」
デルが相手に向かっていきなり走り出した。
「な、なんだと!?」
魔法戦になると思っていた魔法使いは虚を突かれ、慌てて杖を構える。
「サンレ……いや、“ファイア……」
「“マジックアロー”!」
この前レーザーが無力化されたのを思い出したのか、慌てて炎系に切り替えたりで手間取っている間に、デルは右手の短い杖を振って輝く矢を出現させ魔法使いに向けて飛ばす。
「わっ!?」
俺が渡したあの杖は3つのスロットがあって低位の魔法を詰め込んでおけるものだった。
MPが元々低いデルにとってとても相性のいいアイテムである。
とはいえ最低位の攻撃魔法であるマジックアローでは全く効果は無い。だが相手の顔に直撃させたので魔法使いの勇者は無意識にそれを避けようとしたことで呪文を中断させてしまう。
「こ、このっ、小賢し……ひっ!?」
一瞬顔を背けて目をつぶっている間に、デルは一気に間合いを詰めて左手でナイフを取り出すと逆手持ちで斬り付ける。
「ひゃっ!? ひっ! な……!!」
右腕を斬り付けられ杖を持つ手が緩むと、デルは懐に入り膝でお腹辺りを思い切り蹴り上げた。
「ぐほっ……っ!」
くぐもった声を上げ、苦しそうに悶える魔法使いにデルは容赦なく追撃として足払いで転ばすと馬乗りにマウントを取り、落書きの残るその顔をナイフの柄で何度も殴打した。
「ぐぁ! あっ! ぐっ! や、やめ……!」
デルは全く容赦しなかった。
魔法使いが手で攻撃を払おうとするとナイフで軽く斬り付け、腕の痛みに避けるとまた顔を殴打する。
「ごぁ! も、や……ぐ! 痛っ! ぐはっ!」
「え……あ、こ、これどうすれば……」
立会人である俺は呆気にとられていた。
な、なんなんだ? この世界では無類の強さのはずの勇者が一方的にやられている。
それに紋様族ってのは弱いんじゃなかったのか……あ、そうか一応半分は人間だけど。
あの野郎は純粋な魔法の打ち合いになると思っていたんだろう。
何せ自分よりもかなり背が低く華奢な女の子が接近戦を挑んできて、しかもここまで強いなんて誰が考えていたか。
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