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第二話
戦いが終わって<Ⅲ>
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「勇者殿、妾達の紋様は普段薄くなっておるが笑ったり怒ったり泣いたりで様々な色に変化するのじゃ」
「そうみたいですね」
「ちなみに最初の赤は主に怒りを表す色で、青ければ悲しみ、そして薄く桃色っぽくなったのは羞恥なんだよ。勇者さんにフォローされて照れちゃったのか恥ずかしくなっちゃったんだねー」
「ば、ばかぁ! 余計なことを言うんじゃない!」
「なるほど、これはこれでなかなか大変そうだな」
相手に感情が丸分かりになるなんてな。
「年齢を重ねれば、ある程度コントロール出来るようになってなかなか分かりづらく出来るのだがな」
「でもデルはそういうの苦手だしね」
「それだと隠し事とか出来なさそうだな」
そんなことになったら年頃の男なんて大変そうだけど。
「ああそうじゃ、妾達はそうやって互いに隠し事をせずに信頼し合って生きておる」
「それは面白いかもしれない」
なるほど、そもそも隠し事が出来ないのならば最初から開き直れるかもしれないか。
「でも、一つだけ困ったこともあるのじゃがな」
「そうなんですか?」
「男女の営みのときに、お互いに気持ちがいいかどうか分かってしまうんじゃよ」
「ぶーっ!! ……ごほっ、ごほごほっ、い、いきなりなんてことを言うんですか!」
それまで黙っていたセレーネが盛大に吹き出した。
「いや、なに今の内に知っておいたほうがいいかと思ったんじゃが」
「なんでですか!?」
さすがのセレーネも取り乱して思わず突っ込む。
「族長! 話がそれてます!」
「おおっとそうじゃった。久々のお客人に思わず興が乗ってしまったようじゃの。それでは勇者殿、この件は妾に話せないことなのか?」
「話せないわけではないですが……知ってしまうとご迷惑になるかもしれません」
俺がそう言うと、デルやカトリナの紋様の色が灰色になった。
た、確かに紋様族は分かりやすすぎる。
「ある方から、その力は悪用されたら大変な事になるから、あまり簡単に口外するなと念を押されてまして」
デル達の紋様がさらに灰色から水色に変わっていく。
まじで分かりやすい。
「なるほどのう……じゃがその二人は知ってしまったのであろう?」
「まあそうですね」
二人の紋様のおかげで誤魔化しようもなかったので素直に認めてしまおう。
「それならば妾にも教えてはもらえないか? もし二人に何かあったとき何も知らずでは困った事態になるやもしれんし」
「ああ、そういうこともありえるか……」
ちらりとセレーネを見てみる。
既に先ほどの焦った姿はなく、静かに食事を続けていた。
「わたくしとしては族長様の仰っていることは正しいかと思います」
確かにそうだな。
「分かりました。族長の言うとおり二人が知ってしまった以上、仕方がありませんね」
「そうかのっ、では申し訳ないが教えていただこうかのう」
身を乗り出して族長は興味津々の顔を近づけてきた。
やれやれと思いつつ俺は自身のMPのことを説明した。
「な、なんと言うべきか……、いや、しかし冗談にしては……話が……」
話を聞いて直ぐには納得出来なかった様子の族長。
「勇者様の話は全て事実です。わたくしが保証いたします」
「司祭殿の保証があるのならば嘘ではあるまいが……、し、しかしだ。人の身でMPが6万を超えるなど……」
俺は黙ってステータスウィンドウを表示する。もちろん今回は詳細表示にしている。
「な!?」
それを見た族長は目を丸くして驚いた。
「こ、これは誠なのか……、いやステータス表示を改竄する方法は有史以来出来ていないと聞いているし……しかしこの数値……人間の限界を遙かに超えておる」
「わたくしも初めて見たときは信じられませんでした」
「あ、ああ……今この時点でも妾は半信半疑じゃて……しかしこれは古竜や古の巨人……いや奴らですらこれほどのMPは持っておるまい……まさに古の神々のようじゃの」
ブツブツと言いながら何かを考えている様子の族長。
「勇者殿がおいそれと人に言えない理由はよく分かった。これほどの魔力……もし貴殿が魔術を本格的に使えるものなら人間の都市の一つや二つ簡単に滅ぼしてもおかしくはない」
「それはさすがに大袈裟では……」
「魔法使いが数千人いたとして、それが一斉に攻撃魔法を使ったとしよう」
「数千発同時に魔法が飛んでくるのか」
「そうじゃ炎の玉や電撃がその数だけ都市に降り注ぐ。そう考えたらどれだけ恐ろしいと思う?」
「な、なるほど……」
「しかも勇者殿はまだレベル1と来ておる。この先レベルが上がって更にMPが増えると考えたらなんと恐ろしいことか」
「じゃあ、もし勇者さんが奇跡を使えたら凄いことになっちゃうの?」
「額面通りに出来ればそうかもしれんが、聖職者になるためには適性が必要じゃし、なにより制限があるからのう」
「制限てどんなことなんですか?」
カトリナの素朴な疑問に族長は説明をし、セレーネも話に合わせて補足する。
「うわぁ……そうなんだ。それはなんか大変そう……」
「まあ神々がそう判断したのだから仕方がないんじゃないか。確かにおいそれと傷や病気が回復出来てたら、世界の秩序が破壊されかねないし」
本当は神々の判断ではなくて、宇宙人の判断だけどな。
「そうみたいですね」
「ちなみに最初の赤は主に怒りを表す色で、青ければ悲しみ、そして薄く桃色っぽくなったのは羞恥なんだよ。勇者さんにフォローされて照れちゃったのか恥ずかしくなっちゃったんだねー」
「ば、ばかぁ! 余計なことを言うんじゃない!」
「なるほど、これはこれでなかなか大変そうだな」
相手に感情が丸分かりになるなんてな。
「年齢を重ねれば、ある程度コントロール出来るようになってなかなか分かりづらく出来るのだがな」
「でもデルはそういうの苦手だしね」
「それだと隠し事とか出来なさそうだな」
そんなことになったら年頃の男なんて大変そうだけど。
「ああそうじゃ、妾達はそうやって互いに隠し事をせずに信頼し合って生きておる」
「それは面白いかもしれない」
なるほど、そもそも隠し事が出来ないのならば最初から開き直れるかもしれないか。
「でも、一つだけ困ったこともあるのじゃがな」
「そうなんですか?」
「男女の営みのときに、お互いに気持ちがいいかどうか分かってしまうんじゃよ」
「ぶーっ!! ……ごほっ、ごほごほっ、い、いきなりなんてことを言うんですか!」
それまで黙っていたセレーネが盛大に吹き出した。
「いや、なに今の内に知っておいたほうがいいかと思ったんじゃが」
「なんでですか!?」
さすがのセレーネも取り乱して思わず突っ込む。
「族長! 話がそれてます!」
「おおっとそうじゃった。久々のお客人に思わず興が乗ってしまったようじゃの。それでは勇者殿、この件は妾に話せないことなのか?」
「話せないわけではないですが……知ってしまうとご迷惑になるかもしれません」
俺がそう言うと、デルやカトリナの紋様の色が灰色になった。
た、確かに紋様族は分かりやすすぎる。
「ある方から、その力は悪用されたら大変な事になるから、あまり簡単に口外するなと念を押されてまして」
デル達の紋様がさらに灰色から水色に変わっていく。
まじで分かりやすい。
「なるほどのう……じゃがその二人は知ってしまったのであろう?」
「まあそうですね」
二人の紋様のおかげで誤魔化しようもなかったので素直に認めてしまおう。
「それならば妾にも教えてはもらえないか? もし二人に何かあったとき何も知らずでは困った事態になるやもしれんし」
「ああ、そういうこともありえるか……」
ちらりとセレーネを見てみる。
既に先ほどの焦った姿はなく、静かに食事を続けていた。
「わたくしとしては族長様の仰っていることは正しいかと思います」
確かにそうだな。
「分かりました。族長の言うとおり二人が知ってしまった以上、仕方がありませんね」
「そうかのっ、では申し訳ないが教えていただこうかのう」
身を乗り出して族長は興味津々の顔を近づけてきた。
やれやれと思いつつ俺は自身のMPのことを説明した。
「な、なんと言うべきか……、いや、しかし冗談にしては……話が……」
話を聞いて直ぐには納得出来なかった様子の族長。
「勇者様の話は全て事実です。わたくしが保証いたします」
「司祭殿の保証があるのならば嘘ではあるまいが……、し、しかしだ。人の身でMPが6万を超えるなど……」
俺は黙ってステータスウィンドウを表示する。もちろん今回は詳細表示にしている。
「な!?」
それを見た族長は目を丸くして驚いた。
「こ、これは誠なのか……、いやステータス表示を改竄する方法は有史以来出来ていないと聞いているし……しかしこの数値……人間の限界を遙かに超えておる」
「わたくしも初めて見たときは信じられませんでした」
「あ、ああ……今この時点でも妾は半信半疑じゃて……しかしこれは古竜や古の巨人……いや奴らですらこれほどのMPは持っておるまい……まさに古の神々のようじゃの」
ブツブツと言いながら何かを考えている様子の族長。
「勇者殿がおいそれと人に言えない理由はよく分かった。これほどの魔力……もし貴殿が魔術を本格的に使えるものなら人間の都市の一つや二つ簡単に滅ぼしてもおかしくはない」
「それはさすがに大袈裟では……」
「魔法使いが数千人いたとして、それが一斉に攻撃魔法を使ったとしよう」
「数千発同時に魔法が飛んでくるのか」
「そうじゃ炎の玉や電撃がその数だけ都市に降り注ぐ。そう考えたらどれだけ恐ろしいと思う?」
「な、なるほど……」
「しかも勇者殿はまだレベル1と来ておる。この先レベルが上がって更にMPが増えると考えたらなんと恐ろしいことか」
「じゃあ、もし勇者さんが奇跡を使えたら凄いことになっちゃうの?」
「額面通りに出来ればそうかもしれんが、聖職者になるためには適性が必要じゃし、なにより制限があるからのう」
「制限てどんなことなんですか?」
カトリナの素朴な疑問に族長は説明をし、セレーネも話に合わせて補足する。
「うわぁ……そうなんだ。それはなんか大変そう……」
「まあ神々がそう判断したのだから仕方がないんじゃないか。確かにおいそれと傷や病気が回復出来てたら、世界の秩序が破壊されかねないし」
本当は神々の判断ではなくて、宇宙人の判断だけどな。
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