109 / 388
第二話
救出作戦<Ⅰ>
しおりを挟む
「よし、じゃあ作戦開始!」
まずは牽制で紋様族の人達に魔法で攻撃をさせる。
炎や魔法の矢、石つぶてなどがワイバーンに飛んでいく。
だが奴はそれが自分の身体を傷つけることが出来ないと分かっているのか動揺する様子は全くない。もちろんそれは折り込み済みだ。
「よし走りだせ!」
かけ声と共に4人が走り出す。
それと同時に再度複数の魔法がワイバーンに目掛けて飛んで弾けるがはやり全く動揺しない。
「憎たらしいな」
『ぎゃっ!』
その中で石つぶての魔法が目の辺りに当たりワイバーンがそれを嫌がり踏んでいた獲物の紋様族から脚を離して一歩だけ後ろに下がった。
「セレーネ頼む!」
「“バリア”!」
そこへ走り込む紋様族の4人に、ワイバーンは獲物を奪われないように再度掴み上げようとする。
がいんっ!
『ぎゃ!?』
だが、その脚は目に見えない障壁に阻まれて跳ね返された。
驚いた様子のワイバーンだったが直ぐにその障壁を蹴って破壊しようとする。
バリンっ!
2,3度の蹴りでバリアは乾いた音を立てて壊されてしまう。
「“バリア”!」
その都度、新しいバリアを張り続けるセレーネ。
ワイバーンはそれが気に入らないのかバカの一つ覚えでムキになって何度もバリアの破壊を続ける。
やはり所詮は爬虫類、目の前に集中するあまり獲物が奪われているのに気付かない。
「これならいけるか?」
デルとカトリナの方は順調に運んでいるが男二人の方は思った以上に手間取っている様子。
『ぎゅあっ!』
とうとう獲物がなくなっているのにワイバーンが気付いた。
羽を広げると軽く飛翔して運んでいる彼らの前に先回りして飛び降りた。
「ひゃんっ!?」
カトリナが悲鳴を上げる。
『がああ!』
ワイバーンはくちばしのような口を拡げて彼らを突こうとする。
がいんっ!
だがセレーネが先にバリアを張ってそれを防いだ。
『ぎゃっ』
障壁に怒りを露わにしているワイバーンだったが、どうやら意味に気付いたのか羽を広げて浮かび上がって様子を伺い始めた。
自力で歩くことも出来ない怪我人を運んでいるため動きがとても遅く、見えない壁があっても上からなら自分の質量で簡単に破壊出来るとでも考えたのだろうか。
「な!? くそ、思ったよりも頭がいいんだな。あのバリアって上に張れる?」
「申し訳ありません。バリアは宙に浮かすことは出来ません……」
ですよね……くそっ、直上からだと防げないか。
上空でホバリングみたいに静止し、デル達を伺っているワイバーン。
落ちてきたら一溜まりもないだろう。
「仕方がない! 能力アップを頼む!」
「はいっ! 神聖なる女神よ。彼の者に祝福を与えた前……“アークブレス”!」
身体が淡い光に包まれると、なんだか身体が軽くなる感じがした。
よし、なんか行けそうだな。
一気に入口から飛び出すとワイバーンに話しかける。
「おい、そこのトカゲ野郎!」
ワイバーンは驚いた顔でこちらを見た。
『獲物、生意気、エサ!』
単語レベルの言葉が返ってきた。言葉と言えるかどうか怪しいがそれでも十分に意思疎通は出来そうだな。
「お前等爬虫類ごときに喰われるかよ! こちとらほ乳類様だ、逆にお前を蒸し鶏にして喰ってやろうか!」
『餌、生意気!』
単語が強い感情となって俺の耳に届く。
どうやら爬虫類やトカゲ野郎は結構な悪口になるみたいでワイバーンはかなり怒りだしたようで俺に標的を変えた。
「よしっ」
って、それで何処へ行けばいいんだ? さすがに無策で飛び出しすぎたか……とりあえず入口から遠ざかろう。
筋力と体力の両方をアップしてもらったおかげでドームから離れた岩場まで一気に走るが全く息が切ていないのは素直に驚いた。
「よし……」
ぶんっ! どすんっ!
「……危ねえ」
岩場に入る瞬間ワイバーンが急降下して着地の凄い音と震動が背後から伝わる。
すんでの所で俺は避けられ、そのまま大きな岩の小さな空洞に転がり込んだ。
『狩る! 喰う!』
おうおう、すげえ怒ってら。
とりあえずこの穴の中なら安全っぽいし、しばらくここで……。
しゅっ!!
「ちょ!? 危ねえな!」
空洞に隠れていたが、そこに何かが跳び込んできた。蛇……いや違う……これはワイバーンの尻尾か!?
先端は槍の穂先みたいに鋭く、それが身体を掠めた。
「や、やべえ……」
このままではやられると逆側に慌てて逃げ出した。
『ぐああ!』
ワイバーンは吠えながら岩を避けて近づいてくる。
「な!? そのでかい図体でよくもまあ器用に……」
飛ばずに二足歩行で追いかけてきていた。
とにかく上手く岩を盾にして身を隠しながら走って逃げる。
そのままちょこまかと逃げ回って岩だらけの場所に入り込むと、追いかけてきたワイバーンはその巨体故に思うように動けなくなる。
そうやって相手がまごついている間に見つからないように岩陰に隠れた。
『ぎゅぐっ、ぐあああああ!』
上手く行かない苛立ちに、その長い尻尾を使ってバタン! バタン! と辺り構わずその辺の岩を力に任せてたたきつけた。
「まじか!?」
岩が砕けて周りに飛び散り、一部が俺の方にも飛んでくる。
一瞬恐怖を感じたが、怪我をするほどの大きな石や岩を破壊するほどの力はなかった。
どうやらこの程度なら大丈夫そうだな。
こんな状況にもかかわらず自分でも恐ろしいほど冷静だった。こうやって死線を越える度に感覚が麻痺していくんだろうか。いや今のは格好付けすぎだな。
まずは牽制で紋様族の人達に魔法で攻撃をさせる。
炎や魔法の矢、石つぶてなどがワイバーンに飛んでいく。
だが奴はそれが自分の身体を傷つけることが出来ないと分かっているのか動揺する様子は全くない。もちろんそれは折り込み済みだ。
「よし走りだせ!」
かけ声と共に4人が走り出す。
それと同時に再度複数の魔法がワイバーンに目掛けて飛んで弾けるがはやり全く動揺しない。
「憎たらしいな」
『ぎゃっ!』
その中で石つぶての魔法が目の辺りに当たりワイバーンがそれを嫌がり踏んでいた獲物の紋様族から脚を離して一歩だけ後ろに下がった。
「セレーネ頼む!」
「“バリア”!」
そこへ走り込む紋様族の4人に、ワイバーンは獲物を奪われないように再度掴み上げようとする。
がいんっ!
『ぎゃ!?』
だが、その脚は目に見えない障壁に阻まれて跳ね返された。
驚いた様子のワイバーンだったが直ぐにその障壁を蹴って破壊しようとする。
バリンっ!
2,3度の蹴りでバリアは乾いた音を立てて壊されてしまう。
「“バリア”!」
その都度、新しいバリアを張り続けるセレーネ。
ワイバーンはそれが気に入らないのかバカの一つ覚えでムキになって何度もバリアの破壊を続ける。
やはり所詮は爬虫類、目の前に集中するあまり獲物が奪われているのに気付かない。
「これならいけるか?」
デルとカトリナの方は順調に運んでいるが男二人の方は思った以上に手間取っている様子。
『ぎゅあっ!』
とうとう獲物がなくなっているのにワイバーンが気付いた。
羽を広げると軽く飛翔して運んでいる彼らの前に先回りして飛び降りた。
「ひゃんっ!?」
カトリナが悲鳴を上げる。
『がああ!』
ワイバーンはくちばしのような口を拡げて彼らを突こうとする。
がいんっ!
だがセレーネが先にバリアを張ってそれを防いだ。
『ぎゃっ』
障壁に怒りを露わにしているワイバーンだったが、どうやら意味に気付いたのか羽を広げて浮かび上がって様子を伺い始めた。
自力で歩くことも出来ない怪我人を運んでいるため動きがとても遅く、見えない壁があっても上からなら自分の質量で簡単に破壊出来るとでも考えたのだろうか。
「な!? くそ、思ったよりも頭がいいんだな。あのバリアって上に張れる?」
「申し訳ありません。バリアは宙に浮かすことは出来ません……」
ですよね……くそっ、直上からだと防げないか。
上空でホバリングみたいに静止し、デル達を伺っているワイバーン。
落ちてきたら一溜まりもないだろう。
「仕方がない! 能力アップを頼む!」
「はいっ! 神聖なる女神よ。彼の者に祝福を与えた前……“アークブレス”!」
身体が淡い光に包まれると、なんだか身体が軽くなる感じがした。
よし、なんか行けそうだな。
一気に入口から飛び出すとワイバーンに話しかける。
「おい、そこのトカゲ野郎!」
ワイバーンは驚いた顔でこちらを見た。
『獲物、生意気、エサ!』
単語レベルの言葉が返ってきた。言葉と言えるかどうか怪しいがそれでも十分に意思疎通は出来そうだな。
「お前等爬虫類ごときに喰われるかよ! こちとらほ乳類様だ、逆にお前を蒸し鶏にして喰ってやろうか!」
『餌、生意気!』
単語が強い感情となって俺の耳に届く。
どうやら爬虫類やトカゲ野郎は結構な悪口になるみたいでワイバーンはかなり怒りだしたようで俺に標的を変えた。
「よしっ」
って、それで何処へ行けばいいんだ? さすがに無策で飛び出しすぎたか……とりあえず入口から遠ざかろう。
筋力と体力の両方をアップしてもらったおかげでドームから離れた岩場まで一気に走るが全く息が切ていないのは素直に驚いた。
「よし……」
ぶんっ! どすんっ!
「……危ねえ」
岩場に入る瞬間ワイバーンが急降下して着地の凄い音と震動が背後から伝わる。
すんでの所で俺は避けられ、そのまま大きな岩の小さな空洞に転がり込んだ。
『狩る! 喰う!』
おうおう、すげえ怒ってら。
とりあえずこの穴の中なら安全っぽいし、しばらくここで……。
しゅっ!!
「ちょ!? 危ねえな!」
空洞に隠れていたが、そこに何かが跳び込んできた。蛇……いや違う……これはワイバーンの尻尾か!?
先端は槍の穂先みたいに鋭く、それが身体を掠めた。
「や、やべえ……」
このままではやられると逆側に慌てて逃げ出した。
『ぐああ!』
ワイバーンは吠えながら岩を避けて近づいてくる。
「な!? そのでかい図体でよくもまあ器用に……」
飛ばずに二足歩行で追いかけてきていた。
とにかく上手く岩を盾にして身を隠しながら走って逃げる。
そのままちょこまかと逃げ回って岩だらけの場所に入り込むと、追いかけてきたワイバーンはその巨体故に思うように動けなくなる。
そうやって相手がまごついている間に見つからないように岩陰に隠れた。
『ぎゅぐっ、ぐあああああ!』
上手く行かない苛立ちに、その長い尻尾を使ってバタン! バタン! と辺り構わずその辺の岩を力に任せてたたきつけた。
「まじか!?」
岩が砕けて周りに飛び散り、一部が俺の方にも飛んでくる。
一瞬恐怖を感じたが、怪我をするほどの大きな石や岩を破壊するほどの力はなかった。
どうやらこの程度なら大丈夫そうだな。
こんな状況にもかかわらず自分でも恐ろしいほど冷静だった。こうやって死線を越える度に感覚が麻痺していくんだろうか。いや今のは格好付けすぎだな。
0
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる