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第二話

翼竜『ワイバーン』<Ⅰ>

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「デカいな……」

 俺達はドームの入口から様子を伺うように見ていた。

 体長はおおよそ5m位だろうか、長い尻尾を含めると10mはあるんじゃなかろうか。見事な爬虫類でコウモリのような巨大な翼が前足の部分から生えている。
 身体は大きいが空を飛ぶためだろう身体はかなり細身な印象を受ける。

 その翼竜は今、地上に降りて足元に二人の紋様族が倒れている。
 死んでいるのかと思ったが、どうやら生きていて少しでも動くと脚で踏んだり転がしたりしていたぶっていた。

「そんなっ! お、お父さん……」

「くそ……いたぶりやがって……」

 デルが悔しそうにワイバーンを睨み付けていた。
 倒れている一人はカトリナの父親らしい。

 それ以外の周囲にも入口に戻れなかった紋様族が岩陰に隠れているらしい。
 その中にカトリナの弟もいて、ワイバーンが入口に居座っているため誰も身動き出来ずにいた。

 ワイバーンは飽きてきたのか二人の紋様族を踏んだまま逃げられないようにしたり、咥えて持ち上げたりしはじめた。
 かなり痛めつけていて、このままでは死んでもおかしくない。

 とにかくディテクトで詳しく調べよう。

「“ディテクト”!」

 面倒なので最初から100倍掛けをする。

【ワイバーン:翼竜や飛竜とも呼ばれている。亜龍の一種】

【一般的にはドラゴンの亜種と考えられているが実際には全く関係ない。ドラゴンはこの星の原種だがワイバーンは魔神が作りだした失敗作の一つが野生化したものである】

【元々は騎乗用に作られたが気性の荒さから使えないと見放されたが、いくつもの世代を超えて一部に比較的穏やかな種が発生し、人間によって騎乗用として飼育されるようになった】

【だが野生のワイバーンは基本的に知能も低く気性が荒いため騎乗には向かない】

【体長は成体10~15mほど、体色は生息地により様々で体長の大きさに対して体重はかなり軽い】

【肉食寄りの雑食で動物を好むがない場合は植物を食することもある】

【竜との違いを見分ける方法は、手から羽が生えていることと全体的に竜よりも細身であること】

【狩りの方法などは一定の知能の高さを感じさせる場合があるが、やはり竜と比べるとかなり低く竜語などは通じない】

【竜には及ばないモノの、見た目通りの強力な筋力と竜並みの防御力を持ち通常の弓や槍ではほとんどダメージを与えられない】

【炎や電撃、熱等に耐性はないが分厚い鱗に覆われているので最下位の魔法ではほぼ効力がない】

【尻尾の先端に毒を持つ個体が存在する。毒性は比較的低く死ぬことはないが麻痺性があるのでいずれにせよ危険である】

【聴覚や嗅覚は普通だが、視覚だけはかなりいい】

 なるほど大体分かった。こいつは狩りの方法が分かっていてるのか。

 囮を使ってドームの中から仲間を助けようと出てくるのを待っている。そしてより多くの獲物を得ようとしているってわけか。

「お父さんっ!」

 悲痛の叫びを上げるカトリナ、ドームから飛び出しそうなので慌てて俺が彼女の肩を押さえる。

「くそっ! なんでこんなところにこんなのが出てくるのよ! これも人間の仕業なの!?」

 デルもどうにも出来ずただ苛立ちを口に出すしかなかった。

「エテリュデブルデックにはドラゴンライダーは存在しませんし、鞍のようなものはありませんので完全に野生だと思われます」

「だったらなんで、こう……面倒なことばかり起こるのよ!」

 ワイバーンに向かって憎々しげに大声で叫んだ。

「眠らせる呪文とかじゃだめなのか?」

「あそこまで大きな生物を眠らせるのは無理、より上位の“深層の眠り”とかが使えればいいんだけど……残念ながら今の僕には使えない」

「そうか……」

 よく出来ているな。
 確かに低位の魔法で簡単に眠らせられるのなら脅威にはならないもんな。

「“ワードサーチ”ワイバーンの狩り方法」
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