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第二話
ドームの中へ<Ⅰ>
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「うおっ!? これは確かに凄い……」
ドームの中に通されると、そこは外から見た通りの大きな空洞になっていた。
入口のところは少し高い場所になっているらしく。直ぐに階段を下がる形になっていてドーム内は外よりも少し低い位置に地面があるらしい。
ここだとドーム全体が見渡せてその広さがうかがえる。
ドームの頂点位のところが光り輝いていて、あれは魔法の光なのだろうか。
外から入ったばかりだとかなり暗く感じるが目が慣れてくればなんとか問題ない明るさだろう。
ドーム内の地面にはコンテナの様な四角形の構造物が何個も置いてあった。
よく見るとそのコンテナの中に人が居た。もしかしてあれは家なのか? さほど大きくないみたいだが彼らが暮らすには十分なのかもしれない。
色々と調べてみたいが、さすがに今ここでサーチやらディテクトなんてしたら怪しまれてしまうだろう。
「あんまりキョロキョロするんじゃない」
「え、ああごめん、色々と珍しくてさ」
「はぁ……、全くもう……」
先ほどからデルは数分に一度ため息を漏らしている。
そういえばこの屋根、壁と同じ色で石造りっぽいのに柱らしい柱は見当たらないがどうやって支えているんだ?
「なあ、ここって君らが建てたものなの?」
「はあ?」
俺の質問にデルは何を言ってんだといった顔をした。
「違いますよ。こんなに大っきなの私たちじゃ無理です」
となりの女の子がそう教えてくれる。
「ここはあんた達が言うところの前時代に建てられた遺跡のようなものよ」
「今は誰も住んでなかったので、私達が住み始めたんだよねー」
「そうなんだ」
さすがに彼らではないのか。
凄えな前時代。この質感を出すのは地球でも難しいかもしれない。
「ちょっとカトリナ、敵かもしれないのに余計なことを教えてどうするのよ」
「えー、そんなこと教えて、何か困ることになるの?」
「そんなの何がそうなるか分からないじゃない」
「考えすぎだよー」
紋様族って見た目通りというか話し方や仕草がまるで子供みたいだが、デルだけ別の種族ではないのかと思えるほど印象が違った。
階段を降りて四角い建造物が並ぶところを通ると俺やセレーネが珍しいのか人が集まってきた。
「なになに、この人達って人間?」
「うわぁ……大きいねぇ」
人間の中では俺なんて特に大きくもなく、むしろ第二次性徴期と思われるこの身体は結構低い方だと思えるが、それでも彼らにとってはかなり大きく見えるみたいだ。
次から次に建物から出て来て瞬く間に10数名に取り囲まれてしまう。
「あのおねーちゃんのおっぱい超でけえ!」
「お尻も大っきいね」
「お、お尻!?」
そう言われてセレーネが困った顔をするが、俺にはどうすることも出来ない。
なんか子供に取り囲まれた保母さんみたいだな。
それにしても、ここは街……なのか?
全く商店のようなものは見られない。
素っ気なく四角い構造物が置いてあるだけで、3段、4段と積んでおいてある場所もあるが、階段らしきものはなく彼らは適当なところに手や脚をかけて器用に上り下りしている。
「ここには商店や宿みたいのはないの?」
デルだと不機嫌になるので、案内してくれる女の子に聞いてみた。
「商店? 宿? ああ、本に出てくる人間の経済活動の一種だっけ」
「ここにそんなものはない。ぼ……わたし達の社会は言わば全体主義だもの。アンタ等人間と違って商売なんていう概念はないんだって」
要領を得ていない女の子の代わりにデルが答えてくれた。
「え、まじで!?」
「あーもう、一々うるさいなあ」
「ご、ごめん、珍しくてさ……じゃあ、みんな家に居るけど、働くとかもしないの?」
「バカにすんな! ここでは全員が決められた仕事をこなせば、後はそれぞれ好きに過ごしていいことになってんの!」
「なるほどそうなのか、それは申し訳ない」
なんだかえらく先進的な考え方してんな。
「わたし達は本などで知識を得たりするのが大好きで、仕事以外の空いた時間は寝るか本を読むか趣味に没頭するかなんだよ」
「へぇ……」
なんか面白い種族だな。
「でも、こんなところで趣味って何をするんだ?」
「チェスやクイズとか、それ以外だと植物の栽培や魔法実験とかもあるよ」
意外と色々とあるもんだな。
「だけど、ここのところ火山が少し活発になってそれどころじゃなくなってるけど」
伏せがちになりながらもある場所に目線が向かいを俺も追う。
そこには先ほどの入口に連れて来られた人達の倍くらいが寝かされていた。
簡単な布を敷かれたそこで苦しそうな呻き声を上げている。
「こ、こんなにもいらっしゃるのですか!?」
思わず声に出して驚いてしまうセレーネ。
「火山が活発になってドームの至る所で落盤が起きたり、亀裂からガスや蒸気が噴き出したりして、その都度被害が広がってしまうんです」
そう言えば外は硫黄の臭いがしてたり熱湯地獄なんてのもあるしね。
こんな極限的な場所で彼らは暮らしているのかよ。
ドームの中に通されると、そこは外から見た通りの大きな空洞になっていた。
入口のところは少し高い場所になっているらしく。直ぐに階段を下がる形になっていてドーム内は外よりも少し低い位置に地面があるらしい。
ここだとドーム全体が見渡せてその広さがうかがえる。
ドームの頂点位のところが光り輝いていて、あれは魔法の光なのだろうか。
外から入ったばかりだとかなり暗く感じるが目が慣れてくればなんとか問題ない明るさだろう。
ドーム内の地面にはコンテナの様な四角形の構造物が何個も置いてあった。
よく見るとそのコンテナの中に人が居た。もしかしてあれは家なのか? さほど大きくないみたいだが彼らが暮らすには十分なのかもしれない。
色々と調べてみたいが、さすがに今ここでサーチやらディテクトなんてしたら怪しまれてしまうだろう。
「あんまりキョロキョロするんじゃない」
「え、ああごめん、色々と珍しくてさ」
「はぁ……、全くもう……」
先ほどからデルは数分に一度ため息を漏らしている。
そういえばこの屋根、壁と同じ色で石造りっぽいのに柱らしい柱は見当たらないがどうやって支えているんだ?
「なあ、ここって君らが建てたものなの?」
「はあ?」
俺の質問にデルは何を言ってんだといった顔をした。
「違いますよ。こんなに大っきなの私たちじゃ無理です」
となりの女の子がそう教えてくれる。
「ここはあんた達が言うところの前時代に建てられた遺跡のようなものよ」
「今は誰も住んでなかったので、私達が住み始めたんだよねー」
「そうなんだ」
さすがに彼らではないのか。
凄えな前時代。この質感を出すのは地球でも難しいかもしれない。
「ちょっとカトリナ、敵かもしれないのに余計なことを教えてどうするのよ」
「えー、そんなこと教えて、何か困ることになるの?」
「そんなの何がそうなるか分からないじゃない」
「考えすぎだよー」
紋様族って見た目通りというか話し方や仕草がまるで子供みたいだが、デルだけ別の種族ではないのかと思えるほど印象が違った。
階段を降りて四角い建造物が並ぶところを通ると俺やセレーネが珍しいのか人が集まってきた。
「なになに、この人達って人間?」
「うわぁ……大きいねぇ」
人間の中では俺なんて特に大きくもなく、むしろ第二次性徴期と思われるこの身体は結構低い方だと思えるが、それでも彼らにとってはかなり大きく見えるみたいだ。
次から次に建物から出て来て瞬く間に10数名に取り囲まれてしまう。
「あのおねーちゃんのおっぱい超でけえ!」
「お尻も大っきいね」
「お、お尻!?」
そう言われてセレーネが困った顔をするが、俺にはどうすることも出来ない。
なんか子供に取り囲まれた保母さんみたいだな。
それにしても、ここは街……なのか?
全く商店のようなものは見られない。
素っ気なく四角い構造物が置いてあるだけで、3段、4段と積んでおいてある場所もあるが、階段らしきものはなく彼らは適当なところに手や脚をかけて器用に上り下りしている。
「ここには商店や宿みたいのはないの?」
デルだと不機嫌になるので、案内してくれる女の子に聞いてみた。
「商店? 宿? ああ、本に出てくる人間の経済活動の一種だっけ」
「ここにそんなものはない。ぼ……わたし達の社会は言わば全体主義だもの。アンタ等人間と違って商売なんていう概念はないんだって」
要領を得ていない女の子の代わりにデルが答えてくれた。
「え、まじで!?」
「あーもう、一々うるさいなあ」
「ご、ごめん、珍しくてさ……じゃあ、みんな家に居るけど、働くとかもしないの?」
「バカにすんな! ここでは全員が決められた仕事をこなせば、後はそれぞれ好きに過ごしていいことになってんの!」
「なるほどそうなのか、それは申し訳ない」
なんだかえらく先進的な考え方してんな。
「わたし達は本などで知識を得たりするのが大好きで、仕事以外の空いた時間は寝るか本を読むか趣味に没頭するかなんだよ」
「へぇ……」
なんか面白い種族だな。
「でも、こんなところで趣味って何をするんだ?」
「チェスやクイズとか、それ以外だと植物の栽培や魔法実験とかもあるよ」
意外と色々とあるもんだな。
「だけど、ここのところ火山が少し活発になってそれどころじゃなくなってるけど」
伏せがちになりながらもある場所に目線が向かいを俺も追う。
そこには先ほどの入口に連れて来られた人達の倍くらいが寝かされていた。
簡単な布を敷かれたそこで苦しそうな呻き声を上げている。
「こ、こんなにもいらっしゃるのですか!?」
思わず声に出して驚いてしまうセレーネ。
「火山が活発になってドームの至る所で落盤が起きたり、亀裂からガスや蒸気が噴き出したりして、その都度被害が広がってしまうんです」
そう言えば外は硫黄の臭いがしてたり熱湯地獄なんてのもあるしね。
こんな極限的な場所で彼らは暮らしているのかよ。
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