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第二話

結局進軍<Ⅴ>

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「なーんかこじつけている印象があるんだよなぁ」

「そうでしょうか」

「見た目が悪そうなのってそれこそノールやコボルドの方が全然悪そうだし。あんな風に吊した獲物を生で直接食べている姿なんてどれだけ恐ろしいか」

「た、確かにそうですね。そう言われると少し不思議な感じがしてきます」

「まあ、ここで考えていてもしょうがない。とりあえず本拠は分かったし、ここは一旦暗くなる前に戻った方がいいかな」

「いきなりの話し合いは難しいですものね……」

「手土産的なのを用意した方が良いかなって」

「な、なるほど、そうですね。是非そうしましょう。……あ、勇者様!」

 戻ろうとして岩陰から出たところでセレーネに呼び止められ慌てて戻った。

「どうしたの?」

「一人こっちに来ます」

「まじか!? 気付かれたのか?」

「身構えていませんし、歩いているので少し違うかもしれません」

「見回りとかかな」

 見回りは基本二人で行うって話を聞いたことがある。
 二人で行動することでリスクを減らすのは基本だと……まあ地球の常識なんてここじゃ無意味か。

「このまま走って逃げましょうか?」

「この先の砂の坂は隠れる場所がないし、ここから見下ろす形になるから一発で見つかるよ」

 どうすれば……そうやって判断に迷っている間に、こちらに向かってくる足音が速くなり小走りでこちらに寄ってくる。

「やばい……仕方がない。このまま息を殺して……」

「は、はい」

 このまま岩陰に隠れてやり過ごすしかない。さほど大きな岩ではないので出来る限り身を屈めて息を潜める。

 足音は更に速まり近づいてくる。もしかして気付かれている?
 それでも見つかるなよと祈ってセレーネを抱きしめて出来る限り身を小さくする。

 直ぐ側で足音が止まると緊張が走る。
 だめか……やはり気付かれたか?

 だが相手はそこから動く気配がない。
 ちょうど俺達が隠れている岩の直ぐ裏側にいる様子。

 どうなったんだ?

 何かごそごそと音が聞こえた。
 相手はその場で何かを始めた様子だった。

 俺達のことに気がついていない?
 ならば取り押さえるか……それとも逃げるか……いや、やっぱりこのままやり過ごすべきか。

 ひそひそ話でも聞こえそうな距離なのでセレーネと相談は出来ない。
 お互いに困った顔で見つめ合う。

 ……って、顔が近い!? 近いって! しかもめっちゃ抱きしめているし。
 やっぱり凄く柔らかいなぁ……この子お尻は大きいけど腰回りはこんなにも細いのか。

 ん? んん……彼女の柔らかな髪が鼻の辺りに当たり鼻がむずむずしてくる。

「ふぇ、ふえ……」

 ってなんでこんな時に限って……やばい、くしゃみが……。

「!」

 俺の様子を見てか、慌ててセレーネの手が俺の口を封じるように押さえる。

「むご……」

 驚いた拍子にくしゃみは辛うじて引っ込み何とか出さずに済んだ。

 ちょろちょろちょろちょろ……。

 そんなことをしている間に近くで妙な音がし始めた。

 なんだこの音?
 思わずうセレーネを見る。
 セレーネは小さく首を横に振る。
 俺も首を横に振る。

 俺でも彼女でもない……ということはこの岩の裏側にいる人物か。
 つまりもしかして、おしっこをしてるのか?

 どうやら相手は俺達に気付いていたのではなく、隠れやすい岩場に来て人に見られないように用を足していただけだったってことか。

 セレーネと目が合うと小さく首を縦に振る。どうやら彼女も分かったらしい。

「ふう……」

 極度の緊張が少しだけ緩んだのかセレーネは小さなため息を漏らした。

「ふ……ふ、ふふ……」

 俺の方はなんだか知らないが面白くなってしまい笑いがこみ上げてくる。

「もう……」

 セレーネは不謹慎ですよという目でこっちを見てくる。
 分かってはいるが、どうしてもおかしくなってしまった。

「あ……」

 だがその緩みが窮地を呼んでしまう。
 セレーネが足元の小石に滑らせ転びそうになる。

 俺は慌てて支えようとするが隠れている場所が狭く身体を上手く動かせない。

「ちょ……あ……」

「わ、わわ!?」

 どすんっ!!

 努力の甲斐なく俺とセレーネは一緒になって倒れこんでしまう。
 何とかセレーネを守ろうとして、無意識に俺が下になってそのまま地面にぶつかる。

「痛ってぇ……」

「あいたぁ……」

「え……?」

 聞き慣れない声が一つして、そちらに目線を向けるとそこには……。

「あれ?」

 ちょろちょろちょろ……。

「ひぃっ!!?」

 倒れ込んだ先はちょうど用を足している真っ最中だった。
 しかも倒れたので超ローアングル。

 そう放物線とあそこがよく見える場所だった。

 いきなり倒れてきた俺達に驚きの悲鳴を上げるが、相手は一度出したそれは止まらないらしく身動きも取れないでいた。
 俺は思わず水飲みすぎだろと余計なことを考えてしまう。

 だがこっちもこっちでセレーネが乗っかっているのでなかなか動けない。

 あれ、この子。
 さっきの戦いで逃げる号令を掛けていた子じゃ……。

 見た目は小……いや中学入り立てとかそんな感じかな。
 身長が低いから幼く感じるが、ちょっとだけつり目っぽくて気が強そうで驚いていてもその整った顔がよく分かった。

 あれ、紋様が……うっすらとあるか。おトイレ中とか消えるのか?
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