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第一話

玉さん、これからよろしくⅢ>

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「いや、むしろパソコンそのものだな。でもこれは一体なんなんだ……」

 画面に映し出されるそれは俺の知っているものとは全然違う。

『私もここまでは見つけられたが、この先は門外漢でさっぱりだった』

「これは……もしかしてDOS?」

『まさか分かるのか?』

「おそらく……若いときに少し触ったことがある」

 GUI全盛のこの時代に何とも無機質さを感じる画面だったが、しばらく見ているとサブスクリーンが浮かび上がり、そこには魔法の杖が映し出される。
 そこには、杖の中に仕込まれている3つの魔法の宝石の位置や種類、更にはそれらがどのように作用して出されるかという回路図のようなものまで描いてある。

 さすがに専門用語のようで俺にはさっぱり分からない。

『なんだと!? こ、こんなことまで出来るのか……』

 そして玉さんは色々とショックを受けている様子。

【/:detect /S】

【option /S 詳細情報 /R 帰属解除 /D 破壊】

 今は詳細情報ってことか。

「帰属解除って出ているけど、これって出来るの?」

『は? 何を言っている。帰属の解除など……、まさか……出来るのか?』

「それを聞いているんだけど……」

『私が知る限りその様な方法は知らない』

「でもコマンドにあるんだよな。まあ良いかやってみよう」

【/:detect /R】

【MP75 ok?】

 OKと……。

【analyze..........】

 アナライズ……、つまりMPを消費させらて解析を始めたのか。

「解析中だってさ」

『そのような画面も仕様もわたしは知らない』

 なんだか少しいじけている様子に変わっていた。

【....complete】

 数分ほど待たされのち、完了の文字が出て来た。どうやら成功したらしい。


・杖(ワンド)+2:未帰属
 帰属者:未
 材質 :ミスリル
 制作 :魔導国家


「出来ちゃった」

『お、お前……簡単に言っているが今やったことは、この世界ではまさに神の御業と同じことなんだぞ』

「そうなの?」

『世界の道理を変えたと言ってもいい。君は決して出来ないとされていたことをしてしまったんだ。いいか、このことは決して誰にも言うな』

「そんなに凄いことなのか……」

『大変危険だ。下手をすると君は様々な国……いや世界から狙われることになるかもしれない』

「大袈裟……じゃないみたいだな」

『この世には帰属が付いて捨てるに捨てられないアイテムが沢山あるんだ。各国は帰属を解除しようと何百年以上研究をしているが決して外せないでいる』

「まじで?」

『もし君が今みたいに簡単に解除が出来るとしたらどうなると思う』

「そりゃ……解除の依頼をしてくるだろうな」

『当然そうなる。だが様々な国が出し抜いて君を獲得しようと必死になるし、最悪の場合相手に奪われるくらいなら殺してしまおうするかもしれない』

「げっ……わ、分かった……とにかく黙ってるわ」

『今後の為にもそうしてくれ。おっと……、どうやら稼働の限界が来ているかもしれない』

「稼働の限界?」

『この玉は、そうだな電池で動いていると思ってくれ。他者との接触は結構エネルギーを喰うのだ』

「そうだったのか? それは悪かったな」

『いや、むしろ私の方が君に話を振ってばかりだったからな。悪いが私はしばらくの間考えたいことがあるのでこの辺で一度離れさせてもらう』

「あ、ああ、分かった」

『私のことは通常はあの雑嚢の中に入れておくといい』

「そこなら安全だもんな」

 玉さんと会話を終えると雑嚢の中にそっと入れた。
 良い話し相手が増えたと思ったが、稼働限界があるようなのでとりあえず玉さんの家に着くまでは極力話さない方がいいかもしれない。

「それにしても、なんだか凄いことが出来てしまったんだな……」

 帰属解除の方は細心の注意をしないとな。
 今のところはセレーネにも黙っておこう。

 それにコンソールモードの方も気になる。
 あれはなんかもっと色んな使い方がありそうな気がする。

 こっちは暇を見つけたらちょこちょこ弄ってみよう。
 もっと凄いものが見つかりそうな気がするし。

「ってなんか凄いことになってる」

 気がついたら部屋が凄いことになっていた。
 雑嚢の中から出したアイテムで部屋が埋め尽くされそうになっていた。

「とりあえず……片付けよう」

 まずは大物から片付けるとして……それにしてもこのテントやベッドなどはよく出来ているな。木製だが一部に金属が使われていて簡単に分解出来るように作られている。
 旅をするのにはぴったりなものだな。だが一人で運ぼうとするとさすがに重量はあるが、この雑嚢に入れてしまえるのでかさばることもない。

「これからの旅には大助かりだな」

 って片付けるはずが、気になって思わず組み上げてしまった。

「ベッドはさすがに小さいけど、それでも地面に直で寝るより全然良いよな。これって確かコットって言うんだっけ」

 映画などの野戦病院によく出てくる折りたたみのベッドと同じような形だった。
 長さはともかく幅がかなり狭く一人で寝るのがギリギリだった。
 そこに寝袋を置いてちょっと寝てみる。

「おお、これなら上等だろ。ふう……」

 自分が今は小柄故、まったく狭さを感じることはなかった。
 思いの外便利なアイテムを色々と手に入れて嬉しくなってしまう。

「って、だから遊んでいる場合じゃないだろ。やれやれ仕舞うつもりがついつい組み立ててどうするんだよ」

 そして再度仕舞いはじめるが、今度は折りたたみの椅子を見つけてまたも中断するのであった。
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