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第一話

異世界じゃなく異星でした<Ⅴ>

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「今は大丈夫だ」

 は? 何が大丈夫なんだよ。

「我々が想定していた以上にお前達地球人が強くて、少し前に魔王が滅ぼされてしまった」

「はぁ!? じゃあ俺は必要ないじゃないか。つかさっき女神姿のときにそんなこと言ってなかっただろ!」

「それがちょうど連れてきたときはまだ魔王は健在だったのだが……システムの事故で肉体の再生に時間がかかっている間に倒されてしまった」

「なんじゃそら」

 だったら俺は一体どうすればいいんだ。

「すぐ新たな魔王が発生する予定だ。いやもう発生しているかもしれない」

「……なんで分からないんだよ」

「必要以上に干渉はしない規定なのだ」

「よく言うぜ、魔王なんて迷惑なものを用意しておいて何が干渉しないだよ」

 現地の人達にはとんでもないはた迷惑な存在だよな。
 ヘタすると台風や地震よりも厄介だし。

「じゃあ魔王というのは星にいる誰かなのか……? おっさん達が用意したものじゃないのかよ」

「魔王が倒されたら新たな魔王が生まれる。それが誰だかは分からない」

 なんだそれ、ただの不毛な戦いじゃね?
 倒しても新たな魔王が生まれるって……。

 つーか何から何までネタバレしたあげく、始める前から目標が無くなってやることが分からない挙げ句に故郷に戻りたくても戻れない。

「新たな環境で何かしら見つけて生活をしていくしかないのか」

「出来る限りそうしてくれ。どうしてもというときはこちらでサポートをする」

 よく言うぜ。

「この星に降りるのと地球に戻るの以外に選択肢はないのか」

「あるにはある。同じように進化を促進させたい星がいくつかな」

「そ、そうか……なんかイヤな予感しかしないが」

「一つは確か星のほとんどが灼熱の流砂で航行する砂漠船というのを乗りこなして……」

「ごめん、そういうのはちょっと……暑いのは勘弁してくれ」

「ならば星全体が氷と雪で覆われ、そこの原生物と戦って開拓していくという……」

 それはRPGっていうよりFPSとかTPSの世界だろ。

「全部凍ってるとかさすがに寒すぎだ」

「お前、我が儘だな」

「うるさいな。そこまで環境が変わったら生きていけるかもあやしいわ」

「だったら、この星はお前らにとってかなり快適なはずだ」

「ああ、そうですか」

 確かにそうなるが……。

「魔王以外にもこちらがであらかじめダンジョンやタワーなどを用意してあるから、一つ一つクリアしてステップアップしていけば、それなりに時間はかかるはずだ」

「おいおい、なんだそりゃ……、地上には干渉しないんじゃなかったのかよ」

「お前達地球人が我が儘すぎるのだよ。目標がないとすぐに挫けるからだ」

「おおう……、そこは耳が痛いな」

 しかし至れり尽くせりだな。

「でも、そこは現実だろ。失敗すれば死ぬんじゃ」

「いや、お前達地球人は死んでも一定のペナルティを負えば生き返る仕様になっている」

「はあ!?」

「正確には死ぬ直前、登録したポータルに戻されるだけだがな」

「やっぱりもうゲームそのものだろ……」

 ここまでするとゲームと何が違うのか分からなくなるな。

「じゃあそうなると魔王を倒したあかつきには何か貰えたり、地球に帰れたりするのか」

「魔王を倒した者には可能な限りの報酬を用意する」

「どういうものなんだ」

「それは教えられない」

「じゃあ、魔王を倒しても帰れないのか」

「希望する者は帰れる。だが往々にしてこちらで暮らす方を選ぶ者が多い」

 こっちだったら英雄扱いでモテモテだろうし。
 生活に困ることもないんだろうな。

「攻略を途中で諦めて帰ることを選択する者もいる」

「まじで? そ、そうか途中でも帰れるのか」

「残念ながら、お前を戻すことは出来ないが」

「だー!! ですよね!」

「戻すことは出来ないが、先ほど紹介した他の星に移住することは出来るぞ」

「あ、結構です」

 それにしても結構手厚い保護をしているな。
 死んでも生き返るシステムに帰りたくなったら帰られる。
 俺は無理だけど。

「意外と優しいんだな」

「別に我々は侵略者の類ではない。あくまでもこちらの都合で依頼しているのだから拒否されれば地球に戻す。それだけだ」

「でも記憶とかはどうするんだよ」

「そういう記憶操作など面倒なのでしていない」

「まじで!?」

「お前達は行方不明だった者が突然現れたところで自分達の常識の範囲で適当な理由を付けて片付けるだろう」

「それは……」

 異世界に連れて来られて勇者になって化け物を倒していたなんて言葉を誰が信じる?

「確かに誰も信じないな」

 その様な戯れ言など誰も相手にしないだろう。俺だってそうだ。
 それでも諦めずに主張しようものなら、よくて腫れ物扱い。最悪厳重な警備の病院に放り込まれるのがオチだ。

「はぁ……、やはりネタバレまでして異世界暮らしをするのもなぁ、うーん、ここでしばらく暮らしてみるかな」

「な、なに? い、いや、そ、それは……」

 なんで動揺する?
 もしかして俺がここで変なことするとでも思っているのか。

「冗談だって、こんな殺風景な場所じゃ直ぐに飽きるよ」

「そうかっ! それはなんとも残念だ」

 声を弾ませながらよく言う。まあ、実際邪魔なんだろう。

「こんな何にもない空間にいるくらいなら、地上に降りた方がまだ楽しいかもしれないしな」

 地球人はモテるらしいけど、こんなおっさんでも……いや若返ったんだ。
 いやまて、地上に居る生き物ってのは本物なのか?

 いや進化を促すとかなんとか言っていたから、そうなるとロボットとかではないか。
 もしかして人工生命体とかだったりして、それはそれで少し燃えるものがあるな。

 まあどうせ地上に降りるくらいしか選択肢もないんだし、少しくらい女の子とイチャコラすることが出来ればそれはそれでありか。
 いや、ファンタジーなんだろそれなら……。

「人間以外の耳が長いとかケモノの耳とかそういう女の子もいるのか?」

「お前達はそんなに亜人がいいのか?」

 お、おおう……。
 どうやら同じことを聞くのがいっぱい居るらしい。

「もちろん沢山の種類がいる。いずれも地位は低いらしいから奴隷として飼うことも出来るぞ」

 そういうことじゃないんだけど。
 でも、いるのか……。

「とにかく地球人は英雄として子種欲しさに様々な雌が沢山涌いてくるから選び放題だ」

「い、いや、まあ……そ、そうか」

「行ってみるか?」

「あ、ああ、ここにいても暇になりそうだし。少し行ってみるのも……」

「よし、じゃあ行ってみよう」

「え、おわ!?」

 真っ白な床に丸い穴がいきなり空いた。
 まるでアニメかマンガのトラップみたいだなと思いながら俺はその穴に落ちていく。

「うわぁ!?」

「ふう……面倒なのは星に落とすに限る。ちゃんと言質を取って同意は得たから問題ない」

「てめ! 今の言葉しっかり聞こえたからな! お、覚えてろよぉ!」
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