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第一話
白い天井
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『もうすぐ新元号に変わります!』
付けっぱなしのテレビから、妙に明るい口調で新しい時代の幕開けだのと垂れ流していた。
あれから一体、何日経っただろう。
既に身体はほとんど動かない。
ただただぼーっと、これだけをなんとなく見ていた。
会社に捨てられ、社会に見放され、俺は一人孤独に死を待つだけだった。
「俺はもうすぐ最期を迎えるというのに……何が新しい世界の幕開けなんだ……」
ブラック会社の激務に身体を壊して業務中に倒れて入院し、そのまま仕事を失い、貯金も使い果たし、何とか生活保護を貰えたのも束の間、誰の恨みなのか、先月打ち切られた。
いの一番に携帯が止まり、その後ガスが止まり、そしてもうすぐ電気も止まるだろう。
もう食糧を買う金も、病院に行ったり薬を買う金もない。
ただただ横になって死ぬのを待つだけだった。
「はぁ、なんかつまらん人生だったな」
既に両親とは死別。姉弟とは生き別れ。友人と呼べる人物も居なければ、嫁どころか付き合っている女性もいない。
なので仕事に生きようと頑張ったが、その結果がこれだった。
「こうもあっさり切られるとは……」
あれだけ頑張っいたのに。
会社に自分が必要だし、居ないと回らないと思っていたのに……。
「ぐっ……くっ……ん……、はぁはぁ……ぐっ、そ、そろそろ……かな……」
苦しみの感覚が徐々に狭まってきている。
病人が死ぬときは分かるってよく言うけど、こういうことだったんだな。
『新元号までっ! 後10、9、8……』
テレビから新しい時代までのカウントダウンを叫びだした。
くそ……、俺は死にかけているのに、なんて脳天気な……、そんなことをしている暇があるなら助けてくれよ……。
テレビから目をそらすと今度は本棚が見えた。
あのシリーズまだ読み終えてなかったんだよな……。もうすぐ新作が発売だったのに……、それにアニメやエロゲも積んだままのがいっぱいあるし、つまらない人生の数少ない楽しみだったのに……。
「ぐっ! く……うっ……ぐ……」
なんで、どうして俺だけがこんな目にあうんだ。まだやりたいことは沢山あったのに……。
苦しみの中でこの世界を恨みながら絶望して朽ちていくのだろう。
「こんな世界滅びりゃいいのに……いやウソだけど……、せめてもう少し元気に生きていたかったな……」
『それではもし、その願いを叶えられるとしたら貴方はどうしますか』
「幻聴……かな……?」
テレビかと思ったがどうやら違った。
「世界を滅ぼすような力なんて要らないよ」
もしかしたらあの世からのお迎えかもしれない。
「そうだな……元気な身体に戻れるものなら戻りたい。そうなるなら、何でもするかもしれない」
『分かりました。それでは……』
それまで白い天井しかなかったぼやけた視界の中に人影のようなモノが見えた。
「幻聴の次は……幻覚か……、そろそろ極まってきたかな」
『契約は完了しました』
「なんだか綺麗な声……やっぱり天使か? いや俺の元に来るようなヤツだから、死神の方かもな……」
結構短い人生だったな。
じゃあ……。
「サヨナラ」
世界に……、みんなに……。
『新元号、令和が幕を開けました!』
新たな時代を迎えると当時に俺の意識は消えてなくなった。
付けっぱなしのテレビから、妙に明るい口調で新しい時代の幕開けだのと垂れ流していた。
あれから一体、何日経っただろう。
既に身体はほとんど動かない。
ただただぼーっと、これだけをなんとなく見ていた。
会社に捨てられ、社会に見放され、俺は一人孤独に死を待つだけだった。
「俺はもうすぐ最期を迎えるというのに……何が新しい世界の幕開けなんだ……」
ブラック会社の激務に身体を壊して業務中に倒れて入院し、そのまま仕事を失い、貯金も使い果たし、何とか生活保護を貰えたのも束の間、誰の恨みなのか、先月打ち切られた。
いの一番に携帯が止まり、その後ガスが止まり、そしてもうすぐ電気も止まるだろう。
もう食糧を買う金も、病院に行ったり薬を買う金もない。
ただただ横になって死ぬのを待つだけだった。
「はぁ、なんかつまらん人生だったな」
既に両親とは死別。姉弟とは生き別れ。友人と呼べる人物も居なければ、嫁どころか付き合っている女性もいない。
なので仕事に生きようと頑張ったが、その結果がこれだった。
「こうもあっさり切られるとは……」
あれだけ頑張っいたのに。
会社に自分が必要だし、居ないと回らないと思っていたのに……。
「ぐっ……くっ……ん……、はぁはぁ……ぐっ、そ、そろそろ……かな……」
苦しみの感覚が徐々に狭まってきている。
病人が死ぬときは分かるってよく言うけど、こういうことだったんだな。
『新元号までっ! 後10、9、8……』
テレビから新しい時代までのカウントダウンを叫びだした。
くそ……、俺は死にかけているのに、なんて脳天気な……、そんなことをしている暇があるなら助けてくれよ……。
テレビから目をそらすと今度は本棚が見えた。
あのシリーズまだ読み終えてなかったんだよな……。もうすぐ新作が発売だったのに……、それにアニメやエロゲも積んだままのがいっぱいあるし、つまらない人生の数少ない楽しみだったのに……。
「ぐっ! く……うっ……ぐ……」
なんで、どうして俺だけがこんな目にあうんだ。まだやりたいことは沢山あったのに……。
苦しみの中でこの世界を恨みながら絶望して朽ちていくのだろう。
「こんな世界滅びりゃいいのに……いやウソだけど……、せめてもう少し元気に生きていたかったな……」
『それではもし、その願いを叶えられるとしたら貴方はどうしますか』
「幻聴……かな……?」
テレビかと思ったがどうやら違った。
「世界を滅ぼすような力なんて要らないよ」
もしかしたらあの世からのお迎えかもしれない。
「そうだな……元気な身体に戻れるものなら戻りたい。そうなるなら、何でもするかもしれない」
『分かりました。それでは……』
それまで白い天井しかなかったぼやけた視界の中に人影のようなモノが見えた。
「幻聴の次は……幻覚か……、そろそろ極まってきたかな」
『契約は完了しました』
「なんだか綺麗な声……やっぱり天使か? いや俺の元に来るようなヤツだから、死神の方かもな……」
結構短い人生だったな。
じゃあ……。
「サヨナラ」
世界に……、みんなに……。
『新元号、令和が幕を開けました!』
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