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第一話
最後の戦い
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やられる。そう思って彼女を抱きしめワイトの方に背中を向ける。
ぼんっ!!
遠くの方で閃光がしたと思った後、爆発音が聞こえた。
ネクロマンサーが魔法でも使ったのだろうか。
今はそれどころではない。ワイトの攻撃が……。
「あ、あれ……?」
振り向くと、ワイトが手を振り上げたまま動きを止めていた。
なんだか分からないが、今が最後のチャンス!
「ごめん、もう一度聞くけどターンアンデッドってMPをたくさん使って強化することは可能なんだよね?」
「可能です。ですがそのためのMPが残っておりません……」
「そうか出来るんだな?」
「ですからそうしたくてもMPが足りないのです」
「だったら、これにかけてみるしかない!」
「はい? わわ……ゆ、勇者様!?」
俺よりも彼女の方が背が高いため、背を伸ばして彼女の顔に顔を近づけた。
「ちゅっ」
「んーっ!?」
セレーネが驚いた声を出しているが一応抵抗はしなかった。
申し訳ないが説明していたら間に合わないんだ。後でしっかりと怒られるとしよう。
だが、予想に反してあのダイアログが出ない。
……どうしてだ? この前と何が違う?
「んー……、ちゅっ、ちゅる……」
「んーっ!?」
今度は俺が驚かされた。
考えていたらいきなり急なキスへの反撃とばかりにセレーネが舌を入れてきたのだった。
【粘膜接触による個体認識が完了しました】
【対象にMP500を貸与しますか】
【※ただしMPが足りない場合、精神に障害が出る場合があります】
一つの懸念は俺のMPは500を超えていないこと。
それでもかなり高いらしいが、何かしらの異常をきたしたとしても今は彼女に生き残って欲しい。
OKだ!
【認証確認。MPを貸与します】
「ふはっ……」
「はぁはぁ、いきなりなんですから……」
「すまんな。セレーネ、ターンアンデッドをかましてやってくれ。君の出来る最高の重ねがけで」
「だから……、あ、あれ!? なんで……?」
「ターンアンデッドだ! 最大、最強のフルパワーでぶっ放せ!」
「え!? は、はいっ! アドバンスターンアンデッド!!」
「そうだ! って、あれ、アドバンス?」
いつものターンアンデッドとは別物のようにワイトの足元が激しく光り出す。
あまりの眩しさに目がくらむ。
それでも俺は目を細めながら状況を見ていた。
光の柱の中でワイトの身体は動き止められたかのように止まっていた。
そして、徐々に手先や足先がゆっくりと分解されていく。
「……すまんな。これしか方法がなかった」
『いや、これでいい……これ以上あんなのに操られるのはゴメンだ』
「そうか」
『……後のこと頼んだぞ。お礼として俺が身に着けていたものは全て差し上げる。それなりに役に立ツはずダ……』
「分かった」
『ホントウ……タノむ……』
その言葉と共にワイトは跡形もなく消えていった。
ゾンビ達とは違い魂のようなものが出なかった。
最後にローブや鞄、指輪など身に着けていたと思われるものだけが残った。
包帯みたいなのは肉体の一部とみなされるのか。
「勝ったか……」
「……多分、倒せたと思います」
「そうか……うっ、はぁはぁ……」
「セレーネ、まだMPは残ってる?」
「はい。半分も使っていません」
「じゃあ悪いけど、兵士達が戦っているスケルトンの方もお願い……」
「え、ですが……」
「良いからあっちが先!」
「は、はいっ、では行って参ります。勇者様は無理なさらず!」
「ああ……」
セレーネは、兵士達の方に向かっていった」
「ぐ……ぬぐっ、い、い、い……痛ってぇえ!!」
彼女が行ったのを確認すると、耐えきれずに思い切り声に出してしまう。
それまであまり気にならなかったが、戦いに勝てたと思った瞬間、身体中に痛みが走った。
「これ、絶対に折れてるし! よくあばらを数本持ってかれたなんて格好付けて言ってる奴がいるけど、あれって絶対に嘘じゃねーか! めっちゃ痛い! 凄く痛い! 泣くほど痛いやんけ!」
回復魔法以外は回数の制限はないって話だから、今のセレーネならあの数のスケルトンの相手なら何とでもなるだろう。
ワイトすら一撃なんだし。つかアドバンスって何だよ。
「でも、まあ……いいか」
「うわぁあ!? 勇者が勝っちゃったよぉ……、ど、どうしよう……」
くしゃみをした弾みで撃ち出した光線の行き先はよりにもよってネクロマンサーに当たったのだった。
それによりワイトの動きが止まり勇者に滅ぼされてしまったのだった。
「こうなったらいっそのこと、サリ様が勇者を亡き者に……。あ、でもでも絶対に見られるなって言われてたんだ。じゃ、じゃあ……えっとえっと……」
どうするか悩むサリ。
「よしっ、一旦退避だっ!!」
考えごとは苦手なサリはともかく逃げ出すのだった。
ぼんっ!!
遠くの方で閃光がしたと思った後、爆発音が聞こえた。
ネクロマンサーが魔法でも使ったのだろうか。
今はそれどころではない。ワイトの攻撃が……。
「あ、あれ……?」
振り向くと、ワイトが手を振り上げたまま動きを止めていた。
なんだか分からないが、今が最後のチャンス!
「ごめん、もう一度聞くけどターンアンデッドってMPをたくさん使って強化することは可能なんだよね?」
「可能です。ですがそのためのMPが残っておりません……」
「そうか出来るんだな?」
「ですからそうしたくてもMPが足りないのです」
「だったら、これにかけてみるしかない!」
「はい? わわ……ゆ、勇者様!?」
俺よりも彼女の方が背が高いため、背を伸ばして彼女の顔に顔を近づけた。
「ちゅっ」
「んーっ!?」
セレーネが驚いた声を出しているが一応抵抗はしなかった。
申し訳ないが説明していたら間に合わないんだ。後でしっかりと怒られるとしよう。
だが、予想に反してあのダイアログが出ない。
……どうしてだ? この前と何が違う?
「んー……、ちゅっ、ちゅる……」
「んーっ!?」
今度は俺が驚かされた。
考えていたらいきなり急なキスへの反撃とばかりにセレーネが舌を入れてきたのだった。
【粘膜接触による個体認識が完了しました】
【対象にMP500を貸与しますか】
【※ただしMPが足りない場合、精神に障害が出る場合があります】
一つの懸念は俺のMPは500を超えていないこと。
それでもかなり高いらしいが、何かしらの異常をきたしたとしても今は彼女に生き残って欲しい。
OKだ!
【認証確認。MPを貸与します】
「ふはっ……」
「はぁはぁ、いきなりなんですから……」
「すまんな。セレーネ、ターンアンデッドをかましてやってくれ。君の出来る最高の重ねがけで」
「だから……、あ、あれ!? なんで……?」
「ターンアンデッドだ! 最大、最強のフルパワーでぶっ放せ!」
「え!? は、はいっ! アドバンスターンアンデッド!!」
「そうだ! って、あれ、アドバンス?」
いつものターンアンデッドとは別物のようにワイトの足元が激しく光り出す。
あまりの眩しさに目がくらむ。
それでも俺は目を細めながら状況を見ていた。
光の柱の中でワイトの身体は動き止められたかのように止まっていた。
そして、徐々に手先や足先がゆっくりと分解されていく。
「……すまんな。これしか方法がなかった」
『いや、これでいい……これ以上あんなのに操られるのはゴメンだ』
「そうか」
『……後のこと頼んだぞ。お礼として俺が身に着けていたものは全て差し上げる。それなりに役に立ツはずダ……』
「分かった」
『ホントウ……タノむ……』
その言葉と共にワイトは跡形もなく消えていった。
ゾンビ達とは違い魂のようなものが出なかった。
最後にローブや鞄、指輪など身に着けていたと思われるものだけが残った。
包帯みたいなのは肉体の一部とみなされるのか。
「勝ったか……」
「……多分、倒せたと思います」
「そうか……うっ、はぁはぁ……」
「セレーネ、まだMPは残ってる?」
「はい。半分も使っていません」
「じゃあ悪いけど、兵士達が戦っているスケルトンの方もお願い……」
「え、ですが……」
「良いからあっちが先!」
「は、はいっ、では行って参ります。勇者様は無理なさらず!」
「ああ……」
セレーネは、兵士達の方に向かっていった」
「ぐ……ぬぐっ、い、い、い……痛ってぇえ!!」
彼女が行ったのを確認すると、耐えきれずに思い切り声に出してしまう。
それまであまり気にならなかったが、戦いに勝てたと思った瞬間、身体中に痛みが走った。
「これ、絶対に折れてるし! よくあばらを数本持ってかれたなんて格好付けて言ってる奴がいるけど、あれって絶対に嘘じゃねーか! めっちゃ痛い! 凄く痛い! 泣くほど痛いやんけ!」
回復魔法以外は回数の制限はないって話だから、今のセレーネならあの数のスケルトンの相手なら何とでもなるだろう。
ワイトすら一撃なんだし。つかアドバンスって何だよ。
「でも、まあ……いいか」
「うわぁあ!? 勇者が勝っちゃったよぉ……、ど、どうしよう……」
くしゃみをした弾みで撃ち出した光線の行き先はよりにもよってネクロマンサーに当たったのだった。
それによりワイトの動きが止まり勇者に滅ぼされてしまったのだった。
「こうなったらいっそのこと、サリ様が勇者を亡き者に……。あ、でもでも絶対に見られるなって言われてたんだ。じゃ、じゃあ……えっとえっと……」
どうするか悩むサリ。
「よしっ、一旦退避だっ!!」
考えごとは苦手なサリはともかく逃げ出すのだった。
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