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第一話

今夜はパーティダァ! ひゃっはー!

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「はぁはぁ……さすが……、10代の身体……すげえな。これだけダッシュ出来るなんて……」

 しばらくの間砦の周りを走り回っていた。
 このくらいの年代のときは、ちょっと休めばいくら走り回れたよな。

 とはいえ、さすがに走り疲れてきたところ、ちょうど修復用の木材が重なって置いてあったので、そこに隠れていた。

「とはいえ、さすがに心臓が限界だ……」

 元々の肉体だったら全力疾走しようものなら50mも無理だったんじゃないかな。
 大分離れたが、そーっと顔を出して砦の様子を見てみる。

「ぎゃーまじか!? なんて冷てーんだよ! まだ俺が外に居るじゃないか!」

 砦の門が閉じられていた。松明が掲げられているのでよく見える。

「確かに閉めることが正しいとは思うけどさ……」

 おそらくゾンビ達は近くで徘徊しているだろう。

「はぁ……、いくら何でもあんな数で来られたら対応なんて出来るわけがないだろ……どーすんだよ」

 なんとか呼吸を整えつつ顔を出してみると、予想通り奴らは周囲をウロウロと徘徊している。どうやら俺を見失ったらしい。

「良かった……」

 ゾンビは目はうっすらとしか見えていないし、耳も聞こえないって話だからこうやって隠れて黙っていれば見失うんだろう。
 これで少しは時間稼ぎ出来るかな。

「ふう……」

『壁ドーン!』

「ひゃあぁぁ?!」

 いつの間にか逆側からゾンビ達に囲まれていた。
 その中の一体に、俺は今壁ドンをされてたのだった。

『オイおい、ドウイウつもりだ。思ワセブリだけさせて終ワラセようッテ言ウノカヨ』

 声じゃない声が聞こえる。

 それにしても生涯初の壁ドンをされてしまった。
 よりにも寄って、アンデッド、それもゾンビに、確かに濡れてしまいそうだ。まあ主におしっこの方で……こんなん漏らすわ! 一応なんとか出さずに我慢出来たけど、人生最悪の経験として憶えそうだ。

「じゃ、じゃんけんぽん!」

 苦し紛れに思わず口走ってしまった。
 だがゾンビ達は素直にじゃんけんの手を出してきた。
 当然バラバラだが気にしない。

「あっち向いてホイ!」

『…………、いやニーチャンよ。オレ等はよく見エテないから』

「なんだとぉ!!」

 何処かのマンガで見た結構良いネタだと思って使ったのに、全然効果無しだった。
 ゾンビはうっすらとしか見えていなかったんだぁ!

『オイオイ、ニーチャンどうしてくれるんだよ』

「わ、分かった……話を聞く。とりあえず一人ずつで良いだろ、俺は一人しか居ないんだ」

『ヲ、じゃあ、俺カラデいいか?』

『フザケンナ!』

『俺カラだ!』

『イイヤ俺からだっ!』

「分かったからケンカすんな。全員ちゃんと聞いてやるから、もし揉めるのなら止めるからな!」

 その一言にゾンビ達は黙って従ったのだった。
 い、意外と素直なんだな。


「はぁ……」

 このままでは暗すぎるので1度砦の近くまで戻り、適当な丸太が転がっていたのでそこに座るとゾンビ達は俺を取り囲むように地面に直座りし始める。

 腐敗した死体に囲まれるこの情景。
 ある意味地獄よりも酷い光景じゃないだろうか。

 ゾンビ同士は何やら会話が出来るようで、俺が呼ばなくても続々とここに集まってきた。
 おそらく周囲のゾンビ達は全て来たんじゃないだろうか。

「勇者様、大丈夫ですか」

 そうやって待っている間にセレーネがやってきた。

「俺の方はとりあえず大丈夫。それよりあの老人達の方は?」

「はいっ、全員砦の中に収容しました」

「それならよかった。セレーネも此奴がいつ暴れ出すか分からないから砦の方に戻って」

「いいえ、これでも聖職者ですから遠くから見ているだけだなんて出来ません」

「そうなの? でも危なくなったらすぐに逃げるんだぞ」

「それは勇者様にも同じことを言いたいです。武器の一つも持たずに砦から飛び出すなんて無茶をして」

「それを言ったら、そもそもセレーネがいきなり飛び出すからこうなったんじゃないか」

「そ、それはそうですけど……で、ですが……ホーリーライトを使えばアンデッドが嫌うので寄ってこないのです」

「まじ!? そ、そうなんだ……そんな便利のなのがあったのか」

「はい。でも気休め程度ですけど……」

 俺は彼女に軽くデコピンをする。

「あいたっ……」

「気休め程度の魔法なんかで無茶をしやがって。君はそうやってなんでもいつも一人で背負い込んでんだろ」

「そ、その様なことは……な、ないと思いますけど……」

 セレーネはおでこをさすりながらしょんぼりしてしまう。

「全くもう、何かをするにしてもせめて相談しなさい。下手をしたらあの3バカみたいにただの迷惑になるだけなんだから」

「あう……も、申し訳ありません」

「頼むよ。聖女だからって気負うのは分かるけど、それでも君はか弱い一人の女の子なんだからさ」

「お、女の子? わたくしをその様に心配していただけるのですか……」

「どこをどう見ても女の子だろ」

「は、はいっ……怒られちゃいました」

「怒っちゃいないけど……いや少しは怒ってるけど」

「……えへ」

 何故か怒られたのに、嬉しそうなセレーネだった。

『おい、なんか乳繰り合っているみたいだが早くしろ!』

『そーだそーだ!』

 いつの間にかゾンビ達の声がはっきりと聞こえるようになっていた。

「いやお前ら、彼女の声が聞こえるのかよ」

『聞こえなくても、あんたの声が甘酸っぱいものだって分かるわ!』

「な!? はぁ……へいへい。じゃあ一人ずつ話を聞こうか」
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