90 / 110
第9章 聖女のお披露目
俺が聖女だ!
しおりを挟む
朝から俺とフィオ、クリスはこれでもかってくらい飾り付けられている。
俺とフィオの衣装はお揃いの白。光沢のある生地が光を反射し、見る角度によっては金にも銀にも見える。
フィオの髪の色と俺の髪の色だ。生地全体に細やかな文様をびっしりと織り込んである。ぱっと見ではわからないが、動けばかすかな陰影がこの布一枚にどれほどの手間がかけられているのか見るものに知らしめる。
こだわりの布だ。
俺とフィオの衣装はデザイン違い。
フィオの上着はすらりとした長身を引き立てるようにテールを長く取ってある。この長さは俺がこだわり抜いた。
歩を進めるたびに長いテールが優雅にゆらめく。
ひらりふらりと揺らめく優美な姿に、つい手を伸ばして触れてみたくなるのは俺だけだろうか?
反対に俺の上着は短めに。ウエストを絞り、鍛えた上半身に目がいくように仕上げた。
細身のトラウザースでシルエットはスッキリと。
聖女だからって女っぽくする必要はない。俺は俺だ。
敵には容赦しないし、大切なものを守るためなら戦うことを厭わない。
優美でありながらも、男らしい猛々しさを失わない装いだ。
ウエストコート、トラウザースに至るまで全て真っ白。
そこに唯一色を添えるのはお互いのタイを留めるピン。
フィオのはエメラルド、俺のはサファイア。お互いの瞳の色だ。
特筆すべきは、あのドラゴンの鱗で作ったアクセサリー。
フィオのは耳から垂れる形のイヤリング、俺のはイヤーカフスにした。
お揃いの指輪も作った。式で指輪交換はしないから、結婚指輪のつもりで先に渡した。
貴族たちに「こいつは俺のもん」って見せつけてやりたいってのもある。
さすがアイスドラゴンなだけあり、自ら薄く発光している。フィオの白皙の美貌に輝きを添える逸品だ。
アイスドラゴンの鱗にはもともと氷属性強化の効果がある。そこに俺が「絶対防御」「魔力増強」を付与しておいた。俺が一緒にいない時もこいつがフィオを守ってくれるだろう。
これを渡したとき、フィオはすぐにそれが特別なものだと気付いた。
「これは……!どうしたのですか?触れただけで力が溢れてきます。それに……何か付与されていますね?」
「気づいたか?絶対防御、魔力増強の付与だ。アイスドラゴンの鱗で作ったから、氷属性強化もあるぞ。フィオのにピッタリだろ?」
「!アイスドラゴン!まさか!そんな貴重な素材、どうしたんですか?」
「狩った!クリスにも結婚祝いってことで手伝ってもらってな」
「もしかして先日『治療を頼まれた』というのは……」
「アイスドラゴンを狩りに行ってきたんだ。サプライズしたくてさ。驚いたろ?」
「あなたが狩ったのですか?!なんて危ないことを!あなたが無事でよかった。一緒に行ってくれたクリスにも感謝せねばなりませんね。ありがとうクリス。
その旅でやきもきはさせられましたが……まさかの私のためだったなんて……!このプレゼントはとても、とてもうれしいです。イヤリングも貴方とお揃いなのですね。指輪も…………。大切にします。肌身離さず、身に着けます」
淡々と話していると思いきや、感動しすぎておかしくなっているようだ。
話しながらボタボタと涙を落とし始めた。
しかも本人はそれに気づいていない。
「ふは!フィオ……お前、泣きすぎ」
「?泣いている?私が?」
ほら、と涙を指でぬぐってやる。
「父にムチ打たれても泣いたことはないのですが……嬉しいときも涙が出るのだとあなたが教えてくれました。ゲイルと出会ってから私は泣いてばかりだ」
「確かに。フィオ、お前、ゲイルといるとこんなに表情が変わるんだなあ。ゲイルがお前のことかわいいかわいいっつーの、信じてなかったんだが。確かに、ゲイルといるときは可愛いぞ。ゲイルといるとき限定でな」
「いいんだよ。フィオの可愛い顔は俺のもんなの!」
「はいはい。ごちそうさま!」
ちなみにクリスの衣装は漆黒。
黒と言っても青みがかったもの、赤みがかったもの、いろいろな黒がある。
だが、クリスの衣装には黒の中の黒、キングオブブラック、黒色無双と呼ばれる黒だ。
俺たちの衣装と同じく細かな織が入っているのだが、クリスの場合はよほど近づいてみないとわからない。
それでも、その厚み、光沢がそれが特別なものだと十分に伝えてくれる。
デザインはシンプルに詰襟。俺とフィオの衣装と同じ色で縁取りがしてある。
その身体の中央を走る純白のラインが、キリリと全体の印象を引き締めていた。
きっとこの襟は義姉のみたて、ラインはエリアナだろう。
シンプルなデザインだからこそクリスのストイックに鍛え上げられた肉体を、存分に魅せている。
その胸元に彩を落とすのは俺の瞳のエメラルド。聖女の護衛として、俺の色を身に着けてもらった。
「おい、クリス。お前にも最後の仕上げな!」
ほい、とほおってやったのは。
小さなピアスとバングルだ。
「おまえ、これ!」
「うろこが余ったからさ」
「いや、まさか俺までお揃いなんて……いいのか?」
「お前も一蓮托生、だろ?指輪はやれねえけどな」
「一蓮托生、か。違いねえ。指輪なんてした日にはフィオに殺されちまう!……ありがとな。大切にする」
「おう。お前にも付与しといたからさ。常につけとけよ」
これで戦いの準備は整った。
今日俺は世間に向かって宣言するのだ・
俺が聖女だ。そして、フィオは俺の伴侶、クリスは俺の親友で護衛。
異論は認めねえ。
俺とフィオの衣装はお揃いの白。光沢のある生地が光を反射し、見る角度によっては金にも銀にも見える。
フィオの髪の色と俺の髪の色だ。生地全体に細やかな文様をびっしりと織り込んである。ぱっと見ではわからないが、動けばかすかな陰影がこの布一枚にどれほどの手間がかけられているのか見るものに知らしめる。
こだわりの布だ。
俺とフィオの衣装はデザイン違い。
フィオの上着はすらりとした長身を引き立てるようにテールを長く取ってある。この長さは俺がこだわり抜いた。
歩を進めるたびに長いテールが優雅にゆらめく。
ひらりふらりと揺らめく優美な姿に、つい手を伸ばして触れてみたくなるのは俺だけだろうか?
反対に俺の上着は短めに。ウエストを絞り、鍛えた上半身に目がいくように仕上げた。
細身のトラウザースでシルエットはスッキリと。
聖女だからって女っぽくする必要はない。俺は俺だ。
敵には容赦しないし、大切なものを守るためなら戦うことを厭わない。
優美でありながらも、男らしい猛々しさを失わない装いだ。
ウエストコート、トラウザースに至るまで全て真っ白。
そこに唯一色を添えるのはお互いのタイを留めるピン。
フィオのはエメラルド、俺のはサファイア。お互いの瞳の色だ。
特筆すべきは、あのドラゴンの鱗で作ったアクセサリー。
フィオのは耳から垂れる形のイヤリング、俺のはイヤーカフスにした。
お揃いの指輪も作った。式で指輪交換はしないから、結婚指輪のつもりで先に渡した。
貴族たちに「こいつは俺のもん」って見せつけてやりたいってのもある。
さすがアイスドラゴンなだけあり、自ら薄く発光している。フィオの白皙の美貌に輝きを添える逸品だ。
アイスドラゴンの鱗にはもともと氷属性強化の効果がある。そこに俺が「絶対防御」「魔力増強」を付与しておいた。俺が一緒にいない時もこいつがフィオを守ってくれるだろう。
これを渡したとき、フィオはすぐにそれが特別なものだと気付いた。
「これは……!どうしたのですか?触れただけで力が溢れてきます。それに……何か付与されていますね?」
「気づいたか?絶対防御、魔力増強の付与だ。アイスドラゴンの鱗で作ったから、氷属性強化もあるぞ。フィオのにピッタリだろ?」
「!アイスドラゴン!まさか!そんな貴重な素材、どうしたんですか?」
「狩った!クリスにも結婚祝いってことで手伝ってもらってな」
「もしかして先日『治療を頼まれた』というのは……」
「アイスドラゴンを狩りに行ってきたんだ。サプライズしたくてさ。驚いたろ?」
「あなたが狩ったのですか?!なんて危ないことを!あなたが無事でよかった。一緒に行ってくれたクリスにも感謝せねばなりませんね。ありがとうクリス。
その旅でやきもきはさせられましたが……まさかの私のためだったなんて……!このプレゼントはとても、とてもうれしいです。イヤリングも貴方とお揃いなのですね。指輪も…………。大切にします。肌身離さず、身に着けます」
淡々と話していると思いきや、感動しすぎておかしくなっているようだ。
話しながらボタボタと涙を落とし始めた。
しかも本人はそれに気づいていない。
「ふは!フィオ……お前、泣きすぎ」
「?泣いている?私が?」
ほら、と涙を指でぬぐってやる。
「父にムチ打たれても泣いたことはないのですが……嬉しいときも涙が出るのだとあなたが教えてくれました。ゲイルと出会ってから私は泣いてばかりだ」
「確かに。フィオ、お前、ゲイルといるとこんなに表情が変わるんだなあ。ゲイルがお前のことかわいいかわいいっつーの、信じてなかったんだが。確かに、ゲイルといるときは可愛いぞ。ゲイルといるとき限定でな」
「いいんだよ。フィオの可愛い顔は俺のもんなの!」
「はいはい。ごちそうさま!」
ちなみにクリスの衣装は漆黒。
黒と言っても青みがかったもの、赤みがかったもの、いろいろな黒がある。
だが、クリスの衣装には黒の中の黒、キングオブブラック、黒色無双と呼ばれる黒だ。
俺たちの衣装と同じく細かな織が入っているのだが、クリスの場合はよほど近づいてみないとわからない。
それでも、その厚み、光沢がそれが特別なものだと十分に伝えてくれる。
デザインはシンプルに詰襟。俺とフィオの衣装と同じ色で縁取りがしてある。
その身体の中央を走る純白のラインが、キリリと全体の印象を引き締めていた。
きっとこの襟は義姉のみたて、ラインはエリアナだろう。
シンプルなデザインだからこそクリスのストイックに鍛え上げられた肉体を、存分に魅せている。
その胸元に彩を落とすのは俺の瞳のエメラルド。聖女の護衛として、俺の色を身に着けてもらった。
「おい、クリス。お前にも最後の仕上げな!」
ほい、とほおってやったのは。
小さなピアスとバングルだ。
「おまえ、これ!」
「うろこが余ったからさ」
「いや、まさか俺までお揃いなんて……いいのか?」
「お前も一蓮托生、だろ?指輪はやれねえけどな」
「一蓮托生、か。違いねえ。指輪なんてした日にはフィオに殺されちまう!……ありがとな。大切にする」
「おう。お前にも付与しといたからさ。常につけとけよ」
これで戦いの準備は整った。
今日俺は世間に向かって宣言するのだ・
俺が聖女だ。そして、フィオは俺の伴侶、クリスは俺の親友で護衛。
異論は認めねえ。
254
お気に入りに追加
798
あなたにおすすめの小説
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶のみ失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる