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混乱困惑大混雑
ボルゾイがかわいい
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「どうしたんです?ゲイル」
ボルゾイが首をかしげた。
「は?なにが?」
「?私をじっと見つめたまま動かないので…」
「!はあ?!べ、別になんでもねえよ!
てか、お前もっと食え!
中身、お前の好きなスモークサーモンだぞ?」
目の前のサンドイッチをつかみ、ボルゾイの口に突っ込んでやる。
大人しく口を開けてサンドイッチを受け入れたボルゾイが、にこりと笑った。
「……初めてあなたと会った日にも、こうして食べさせてくれましたね?」
ああ。あのスープか。
勿論覚えていた。
まるで腹をすかせた雛が親にエサをねだるみたいに口を開けるこいつがかわいくて…
ん?
あ、あれ?
嘘だろ?
もしかして俺、出会って日からこいつを?
……………マジかあ!!!
かああっと顔に血が集まってくる。
「お、覚えてねえ!」
ぷいっと顔を背けた俺に、ボルゾイがクスクス笑った。
「ゲイル、顔が真っ赤ですよ?」
「うっせえ!黙って食え!」
照れ隠しにわしっともう一つ掴んで口に押し込んでやる。
なんだよこのどうしようもなく甘い空気は!
生娘か俺は!
我ながら自分が気持ち悪い。
エリアナ!助けてくれ!!
俺、こういうの慣れてねえんだって!!
なんだか暑くてパタパタと手で顔を仰ぐ。
「なんか暑いんだよな。
冷たいもん、持ってくりゃあ良かったぜ」
するとひやりとした風が頬をくすぐった。
ボルゾイがそっとその手で俺の頬を包む。
「…どうですか?
少しは冷えますか?」
氷魔法か!
掌から送られてくるのは冷気のはずなのに、包まれた頬が熱い。
「や、やめろ…」
思いのほか弱弱しい声が出て、泣きたくなった。
なんだよ、これ…。
「…………俺は強い」
「知っています。ゲイルはとても強い」
「それに、大抵のことはできる」
「そうですね。誰もが驚くほどに」
「………………だから、そんなふうに触れるな」
「……どんなふうに?」
「…………壊れ物に触れるかのように。
もっとぞんざいに扱ってくれ。そのほうがいい」
ふは、とボルゾイが優しく微笑んだ。
「それは無理です。
壊れもの扱いしているわけではありません。
大切に触れているだけなんです。
あなたは…とても大切な人なので」
そのままボルゾイの顔が近づいてくるのを、俺はぼうっと眺めていた。
瞼の上に唇を落とされ、やがて顔中に落とされるのを俺は黙って受け入れた。
どうしようもなく胸が満たされていくのを感じながら。
ボルゾイが首をかしげた。
「は?なにが?」
「?私をじっと見つめたまま動かないので…」
「!はあ?!べ、別になんでもねえよ!
てか、お前もっと食え!
中身、お前の好きなスモークサーモンだぞ?」
目の前のサンドイッチをつかみ、ボルゾイの口に突っ込んでやる。
大人しく口を開けてサンドイッチを受け入れたボルゾイが、にこりと笑った。
「……初めてあなたと会った日にも、こうして食べさせてくれましたね?」
ああ。あのスープか。
勿論覚えていた。
まるで腹をすかせた雛が親にエサをねだるみたいに口を開けるこいつがかわいくて…
ん?
あ、あれ?
嘘だろ?
もしかして俺、出会って日からこいつを?
……………マジかあ!!!
かああっと顔に血が集まってくる。
「お、覚えてねえ!」
ぷいっと顔を背けた俺に、ボルゾイがクスクス笑った。
「ゲイル、顔が真っ赤ですよ?」
「うっせえ!黙って食え!」
照れ隠しにわしっともう一つ掴んで口に押し込んでやる。
なんだよこのどうしようもなく甘い空気は!
生娘か俺は!
我ながら自分が気持ち悪い。
エリアナ!助けてくれ!!
俺、こういうの慣れてねえんだって!!
なんだか暑くてパタパタと手で顔を仰ぐ。
「なんか暑いんだよな。
冷たいもん、持ってくりゃあ良かったぜ」
するとひやりとした風が頬をくすぐった。
ボルゾイがそっとその手で俺の頬を包む。
「…どうですか?
少しは冷えますか?」
氷魔法か!
掌から送られてくるのは冷気のはずなのに、包まれた頬が熱い。
「や、やめろ…」
思いのほか弱弱しい声が出て、泣きたくなった。
なんだよ、これ…。
「…………俺は強い」
「知っています。ゲイルはとても強い」
「それに、大抵のことはできる」
「そうですね。誰もが驚くほどに」
「………………だから、そんなふうに触れるな」
「……どんなふうに?」
「…………壊れ物に触れるかのように。
もっとぞんざいに扱ってくれ。そのほうがいい」
ふは、とボルゾイが優しく微笑んだ。
「それは無理です。
壊れもの扱いしているわけではありません。
大切に触れているだけなんです。
あなたは…とても大切な人なので」
そのままボルゾイの顔が近づいてくるのを、俺はぼうっと眺めていた。
瞼の上に唇を落とされ、やがて顔中に落とされるのを俺は黙って受け入れた。
どうしようもなく胸が満たされていくのを感じながら。
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