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最終決戦!
脳筋がいけないの
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俺たちは帝国の親子の感動シーンを固唾をのんで見守った。
お互いにお互いを思いやるがゆえに動きがとれなくなってしまっていた人たち。
どこかで話し合う機会があれば、もっと早くこの状況は改善されていたのかもしれないね。
「ナージャ。私が弱かったの。勇気が無かった」
「いや、私が宰相などの甘言にのり、側妃を迎え入れたことで余計に事態を悪化させてしまったのだ。単に厄介者を引き受けて恩をうったつもりが……寵愛などと……」
私が、いえいえあなたが、の延々ループが始まってしもうた。
その間に挟まれたままのナージャを見るに見かね、俺は叫んだ。
「ちょいとまたれよーーーー!」
王様も聖女様もナージャも、なんなら護衛の人や団長さんたちも一瞬でカチンと固まる。
ギギギと音のしそうな様子で王様が俺を見た。
「………………さ、サフィラス……様。ど、どうかなさいましたかのう?」
むちゃくちゃビビってる!ビビりちらされております、俺!
ちょっと落ち込んじゃう。
「えっとね。王様も王妃様も、何かを忘れてないですか?誰が悪いとかいいとかじゃなくて。ナージャはお母様を助けたくってひとりで頑張ったのですよ?二人とも、王様とか王妃様とかより前に、親でしょお。親が頑張った子に言うべきことがあるでしょう?」
二人ともハッとしたような表情になった。
「……ナージャ。よくやったわね。ありがとう。とっても凄いわ」
「ナージャ。よく頑張ったな。ありがとう。お父様はお前を誇りに思う」
ナージャの顔がくしゃりと歪む。ボロボロっとその目から涙が溢れだした。
「私は……私は……お母様に元気になって欲しくて……お父様に褒めて欲しくて……頑張りましたっ!」
「そうね。とっても頑張ったわ。お母様が元気になったのは、ナージャが王国の皆様を連れてきてくれたおかげよ」
「よくぞひとりで……良くやってくれた」
王様も聖女様も、お母さんとお父さんの顔になって息子を抱きしめ、頑張った息子を褒めた。
うんうん。それそれ。
ナージャの苦労が報われた。そして、俺たちの頑張りもすべてこれを見るため。
一つの家族を救うために俺はきたの。みんな協力してくれたの。
良かった。本当に良かった。
「では、今後について相談しましょう!聖女様、ナージャも王様も座って座って」
「サフィ、ここは帝国だからね?私たちがお邪魔させて頂いている側なんだよ?」
「気にしない気にしない!ね?ぶれいこーでいきましょー!」
「それも王様が言うことでしょうが!サフィが言ったらダメなんだよ?ちょっとゲイル!サフィの暴走なんとかしてっ」
「もう、リオってば細かいなあ。ゲイルー。さくさくっと解決できたんだし、よきよき。ね?」
「……息子が申し訳ない。よろしいでしょうか?陛下、聖女様」
「ええ。命の恩人ですもの」
「そうだな。皆さんのおかげで宰相たちを反乱を防ぐことができたのだ。異論はない」
「一応きくけど、団長さんたちもおっけーでしょうか?」
「あ、ああ。無論!」
「サフィは帝国の恩人だからな!」
ってことで、ぶれーこー!俺は王様にぶっちゃけることにした。
「あのね、ぶっちゃけこの国の人ってば、脳筋だとおもうの」
俺の言葉に慌ててゲイルが俺の口をふさいだ。
「サフィ!順を追って話そうな?あと、言葉を選べ」
えー。分かりやすいと思ったんだけど。しょうがないなあ。
「えっとお……例えば、王国って魔法とかで有名でしょ?貴族のほとんどが何らかの魔法を使えるし、それで他国からの侵略も退けてきて。もう攻めてくる国もなくなったから、今は国の中を整えていってる状態なんだよね?」
「そうだね。侵略があったころは貴族の力を借りて他国を退けていたから。貴族にも平民にも多くの犠牲が出た。そのころには貴族に権力や権威を与える必要があったんだ。でも今はもう王国の力が知れ渡り平和が保たれている。内政に力を入れる時期だ。だから、父上は『貴族至上主義』から『国民至上主義』へとシフトチェンジした。貴族だけでなく平民の生活を豊かにするために頑張っているんだよ」
「それでね、帝国はこれまでは武力で侵攻して侵略してきたでしょ?それでいろいろな国を統合して、技術や文化を発展させてきた。それで聖女様が倒れたことをきっかけに軍がやる気を失っちゃって結果的に侵略をやめた。ここまではあってる?」
うんうん、と王様たちが頷いた。
「それって王国でいう戦争をやめた時期のような状態でしょ?つまり、ここで王様は内政に力をいれなきゃいけなかったの。国は豊かになったんだから、聖女様の病気を治すための努力と同時に、侵略をやめたなら方向性を変えて国内をまとめなきゃいけなかったの。でも、それをせずにいたから、国が荒れてこうなっちゃったんだとおもう。つまり、脳が筋肉。戦うかやめるかだけしか考えてなかったの。その後、脳を働かせることをしなかったの。つまり、脳が筋肉。それが問題だったんだと思う」
俺が話している最中に、王国の人たちの顔も、ゲイルたちの顔まで呆気にとられたものになった。
話終えてもみんな何の反応もない。
「あの……聞いてまするか?」
目の前で手をひらひらさせると、ようやく再起動した。
「いや……あの、なんというか……、サフィって時々賢者のようだね……」
「思いのほか真っ当なことを言い出したんでビビった。いや。マジでサフィ、お前すごいぞ。こうしてみると、エリアスは意外と教師に向いていたのかもしれん……」
ていうか、はっきりきっぱり王様を批判しちゃったんだけどそこはスルーなのね。それどころか何気なく同意しちゃってる感じ?
ちらりと王様をみたら、そのお顔に「がーん」と書いてあって、そんな王様を団長さんたちがじとー。
そうだよね、団長さんたち苦労させられた側だもんねえ。
お互いにお互いを思いやるがゆえに動きがとれなくなってしまっていた人たち。
どこかで話し合う機会があれば、もっと早くこの状況は改善されていたのかもしれないね。
「ナージャ。私が弱かったの。勇気が無かった」
「いや、私が宰相などの甘言にのり、側妃を迎え入れたことで余計に事態を悪化させてしまったのだ。単に厄介者を引き受けて恩をうったつもりが……寵愛などと……」
私が、いえいえあなたが、の延々ループが始まってしもうた。
その間に挟まれたままのナージャを見るに見かね、俺は叫んだ。
「ちょいとまたれよーーーー!」
王様も聖女様もナージャも、なんなら護衛の人や団長さんたちも一瞬でカチンと固まる。
ギギギと音のしそうな様子で王様が俺を見た。
「………………さ、サフィラス……様。ど、どうかなさいましたかのう?」
むちゃくちゃビビってる!ビビりちらされております、俺!
ちょっと落ち込んじゃう。
「えっとね。王様も王妃様も、何かを忘れてないですか?誰が悪いとかいいとかじゃなくて。ナージャはお母様を助けたくってひとりで頑張ったのですよ?二人とも、王様とか王妃様とかより前に、親でしょお。親が頑張った子に言うべきことがあるでしょう?」
二人ともハッとしたような表情になった。
「……ナージャ。よくやったわね。ありがとう。とっても凄いわ」
「ナージャ。よく頑張ったな。ありがとう。お父様はお前を誇りに思う」
ナージャの顔がくしゃりと歪む。ボロボロっとその目から涙が溢れだした。
「私は……私は……お母様に元気になって欲しくて……お父様に褒めて欲しくて……頑張りましたっ!」
「そうね。とっても頑張ったわ。お母様が元気になったのは、ナージャが王国の皆様を連れてきてくれたおかげよ」
「よくぞひとりで……良くやってくれた」
王様も聖女様も、お母さんとお父さんの顔になって息子を抱きしめ、頑張った息子を褒めた。
うんうん。それそれ。
ナージャの苦労が報われた。そして、俺たちの頑張りもすべてこれを見るため。
一つの家族を救うために俺はきたの。みんな協力してくれたの。
良かった。本当に良かった。
「では、今後について相談しましょう!聖女様、ナージャも王様も座って座って」
「サフィ、ここは帝国だからね?私たちがお邪魔させて頂いている側なんだよ?」
「気にしない気にしない!ね?ぶれいこーでいきましょー!」
「それも王様が言うことでしょうが!サフィが言ったらダメなんだよ?ちょっとゲイル!サフィの暴走なんとかしてっ」
「もう、リオってば細かいなあ。ゲイルー。さくさくっと解決できたんだし、よきよき。ね?」
「……息子が申し訳ない。よろしいでしょうか?陛下、聖女様」
「ええ。命の恩人ですもの」
「そうだな。皆さんのおかげで宰相たちを反乱を防ぐことができたのだ。異論はない」
「一応きくけど、団長さんたちもおっけーでしょうか?」
「あ、ああ。無論!」
「サフィは帝国の恩人だからな!」
ってことで、ぶれーこー!俺は王様にぶっちゃけることにした。
「あのね、ぶっちゃけこの国の人ってば、脳筋だとおもうの」
俺の言葉に慌ててゲイルが俺の口をふさいだ。
「サフィ!順を追って話そうな?あと、言葉を選べ」
えー。分かりやすいと思ったんだけど。しょうがないなあ。
「えっとお……例えば、王国って魔法とかで有名でしょ?貴族のほとんどが何らかの魔法を使えるし、それで他国からの侵略も退けてきて。もう攻めてくる国もなくなったから、今は国の中を整えていってる状態なんだよね?」
「そうだね。侵略があったころは貴族の力を借りて他国を退けていたから。貴族にも平民にも多くの犠牲が出た。そのころには貴族に権力や権威を与える必要があったんだ。でも今はもう王国の力が知れ渡り平和が保たれている。内政に力を入れる時期だ。だから、父上は『貴族至上主義』から『国民至上主義』へとシフトチェンジした。貴族だけでなく平民の生活を豊かにするために頑張っているんだよ」
「それでね、帝国はこれまでは武力で侵攻して侵略してきたでしょ?それでいろいろな国を統合して、技術や文化を発展させてきた。それで聖女様が倒れたことをきっかけに軍がやる気を失っちゃって結果的に侵略をやめた。ここまではあってる?」
うんうん、と王様たちが頷いた。
「それって王国でいう戦争をやめた時期のような状態でしょ?つまり、ここで王様は内政に力をいれなきゃいけなかったの。国は豊かになったんだから、聖女様の病気を治すための努力と同時に、侵略をやめたなら方向性を変えて国内をまとめなきゃいけなかったの。でも、それをせずにいたから、国が荒れてこうなっちゃったんだとおもう。つまり、脳が筋肉。戦うかやめるかだけしか考えてなかったの。その後、脳を働かせることをしなかったの。つまり、脳が筋肉。それが問題だったんだと思う」
俺が話している最中に、王国の人たちの顔も、ゲイルたちの顔まで呆気にとられたものになった。
話終えてもみんな何の反応もない。
「あの……聞いてまするか?」
目の前で手をひらひらさせると、ようやく再起動した。
「いや……あの、なんというか……、サフィって時々賢者のようだね……」
「思いのほか真っ当なことを言い出したんでビビった。いや。マジでサフィ、お前すごいぞ。こうしてみると、エリアスは意外と教師に向いていたのかもしれん……」
ていうか、はっきりきっぱり王様を批判しちゃったんだけどそこはスルーなのね。それどころか何気なく同意しちゃってる感じ?
ちらりと王様をみたら、そのお顔に「がーん」と書いてあって、そんな王様を団長さんたちがじとー。
そうだよね、団長さんたち苦労させられた側だもんねえ。
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