上 下
108 / 301
まさかまさかの新生活

俺とルー親子

しおりを挟む
とりあえず、大慌てで王城に来てお話合いで分かったことは。

もんだいなっしんぐ!
いっつおーらい!

ということだった。
良かったあ!

ルー君がフェンリルだとか、魔王だとか聖女だとか、使命だとか。
大業なのがてんこ盛りでやってきたから、てっきり「切なく苦しい使命への旅路」が始まるのかと思っちゃったよー。

いやいや、俺にそんなこと言われてもね。こまっちゃうからね。
俺は単に冒険者になって、みんなで楽しくおかしく暮らして。
お金も稼いでゲイルを楽にしてあげて、困った人も助けて、王様とかも頼まれたら助けて、悪い人とか魔物とかもバッタバッタと倒して、レインボー魔力ヒャッハーしたかっただけだし。
難しい使命とかは言われたって困るもん。

ママとかのことさえ置いておけば、よーするにこれまで通りでいいってことだよね。
良かったあ!一安心だね!

ある意味、俺が冒険者となったときの仲間、ルー君&ルーグができただけのいい感じの結末?
そんでもって、俺とゲイルは運命の親子だってわかったのは、嬉しい。
でもそれ最初から分かってたもんねー。
出会った時に問答無用の「スキー」がきたし。ピッカーンとひらめいちゃったもん。
要は「好き」にお墨付きが貰えたってこと!まいったか!
俺とゲイルは運命!
絶対に離せない磁石みたいな親子!えっへん!



ばったり燃え尽きたままのお兄様を残し、俺は妙に満足してにっこにこしながら、

「では、おなかもすきましたし。おしょくじをしょもーいたしまする!」

と王様にオネダリ。

ルーダがうんうん、と頷いた。

「我と我が子を眷属としたのだ。魔力もかなり奪われておる。お腹も空くであろうよ」

え?むちゃくちゃ腹へりーと思ったら、もしかして…

「まりょくつかうと、おなかへる?」
「時間でも回復はするが、やはり食物が一番早い。食物も微量に魔力を含んで居るでな。お主は小さい。沢山食べるがよいぞ」

ほう!食べて魔力も回復するのね。理解した!
しかし、これだけは言いたい。

「ちいさくない。ぼく、ふつー!」

しょーがないなあ、みたいな目、やめてね。ふつーだってば!
みんながデッカいだけだし!


そんなこんなしてたら、護衛さんがすぐに食事を持ってきてくれた。
おおお!
俺の大好きパンとアップルパイもある!

「シェフが、サフィラス様がいらしていると知り、張り切っておりましたよ」

熊さあああああん!!

他にもお肉だとかサラダだとか色々あったけど、俺はわき目も振らずにアップルパイに飛びついた。
ゲイルに怒られる前に食べちゃえ!

「サフィ!きちんと野菜を食べてからにしろ」

あーん!見つかったあ!
すかさず横からフォークに刺さったレタスとカラーピーマンが。

「はい。食べて。私が思うに…サフィにはもっと栄養が必要だ」

ライオネル!きっさま!!俺の腕を見て言うな!
確かにまだ細いけど!これでもだいぶお肉がついてきたんだからな!

でも食べる。
熊さんのサラダは美味しいからね。
アップルパイはもっと美味しいっていうだけで。
あーん。もぐもぐ。

食べながら、念のためルーダとルー君にもすすめてみた。
魔力がご飯って言いながら、さっきおやつを美味しそうに食べてたし。

「……これもたべる?」

2人の尻尾がブンブン振られた。犬じゃん!

俺はいくつかを取り分けてお皿にのせてあげた。
わっふぉわっふぉ言いながら喜んで食べている。

「な、なんだ、これは!サクサクして、中に入っておる果実が甘くジューシーで…たまらん!!」
「サフィがすきなやつ。パイだよー。おいしいねえ!」
「パイというのか!美味じゃ!」

ひと口でバクリし、ジーッと残りのパイを見るルーダ。

パイのお皿を持って右に動かすと、ルーダのお顔も右に。
左に動かすと、ルーダのお顔も左に。
お、おもしろい!

遊んでたら、王様が情けなーい顔に。

「サフィ、ルーダ様にさしあげてくれんか。見ていられぬ!
新しいものをすぐに用意させるから!
頼む!」

しょーがないなあ…。

「ルーダ。よし!」
「おお!」

ぱああああ!
輝きながら(物理的に。毛がピッカピカと眩しく照り輝いた!)わっふわっふと大喜びで飛びつくルーダ。

ま、まぶしいいい!

てか、「待て」と「ヨシ」ができる犬じゃん!
こんなに躾けられてるなら、返さなくて良くない?
うん!飼おう!

俺はご機嫌のルー親子に、優しく声をかけた。

「ルーくんはぼくのおとーとになりましたので!こっちにいるでしょ。
ルーダはどうする?
あのね、ずっとこっちにいたらパイたくさんたべれるよ?」
「残ろう!」

めっちゃ食い気味に返事がきた。
はやいな、おい!

「向こうも退屈なのだ。サフィもいることだし、こちらで過ごしても良いぞ。
なあに!数年いようとも、あちらではものの数分!問題はない!」

尻尾ブンブン振ってる。
よし!言質はとった!

「ゲイル!ぼくのへやでルーダもかう!」
「言い出すと思った!!」

ゲイルが頭を抱えた。

「いや、サフィ。犬じゃねえんだぞ?
ルーはともかく、ルーダは明らかに聖獣さまだ。どーすんだよ…」
「許可しよう!」

すかさず王様が許可を出した。
逃さずにおくものか、という気迫を感じる。

「アップルパイも毎日王城から届けさせようではないか!
どうかのう?」

「やったー!!けってーい!
よかったね、ルーダ!ぼくのおとーとになる!」
「……我は500才ぞ。祖父でどうだ?」
「500さい!としよりのがいねんごえ!
じゃあ、おじーさんでよき?」
「うむ。良いだろう。よろしく頼む。ゲイル、サフィ」


フェンリル親子の常駐けってーい!

公爵が青ざめながら

「…庭に小屋…いや、フェンリル様の屋敷を…」

とぶつぶつ言っている。
王様も早速護衛ズに指示を出している。
王城にもフェンリル親子の別荘を用意してくれるみたい。

「礼に我のいる間は他国の侵略からこの国を守ってしてやろう」

ルーダが気前良く言った。

「それはまことですか!
有り難き幸せ!」

王様が「ははあ!」となった。
王様も満面の笑み。
ルーダも満面の笑み。

上手く話がまとまったようだ。
よきよき。

ゲイルはまだ「マジかー…」と頭を抱えているが、世話は俺がするつもりなので安心して欲しい。
毎日モフモフ毛のブラッシングもするんだあ!楽しみい!


レオンお兄様は灰のまま。未だに目に光がない。

仕方ない。新しいモフモフが俺のになったことだし、まあ許してやるか。
俺はお兄様のあたまをなでなでしてあげた。

「おにいさま。きらいはうそ。だいすき」
「さ、サフィいいいい!」

ぎゅうううう!

お兄様ふっかーつ!

「でも、しばらくはこうしゃくけ たちいりきんし!」
「ああああああ!」

お兄様げきちーん!
大好きでも許せないことはありますので。
そこんとこよろしく!

しおりを挟む
感想 343

あなたにおすすめの小説

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。

Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。 二人から見下される正妃クローディア。 正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。 国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。 クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

婚約破棄でかまいません!だから私に自由を下さい!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
第一皇太子のセヴラン殿下の誕生パーティーの真っ最中に、突然ノエリア令嬢に対する嫌がらせの濡れ衣を着せられたシリル。 シリルの話をろくに聞かないまま、婚約者だった第二皇太子ガイラスは婚約破棄を言い渡す。 その横にはたったいまシリルを陥れようとしているノエリア令嬢が並んでいた。 そんな2人の姿が思わず溢れた涙でどんどんぼやけていく……。 ざまぁ展開のハピエンです。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。

石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。 ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。 ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。 母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。

成人したのであなたから卒業させていただきます。

ぽんぽこ狸
恋愛
 フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。  すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。  メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。  しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。  それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。  そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。  変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

婚約破棄ですか? では、最後に一言申しあげます。

にのまえ
恋愛
今宵の舞踏会で婚約破棄を言い渡されました。

今、目の前で娘が婚約破棄されていますが、夫が盛大にブチ切れているようです

シアノ
恋愛
「アンナレーナ・エリアルト公爵令嬢、僕は君との婚約を破棄する!」  卒業パーティーで王太子ソルタンからそう告げられたのは──わたくしの娘!?  娘のアンナレーナはとてもいい子で、婚約破棄されるような非などないはずだ。  しかし、ソルタンの意味ありげな視線が、何故かわたくしに向けられていて……。  婚約破棄されている令嬢のお母様視点。  サクッと読める短編です。細かいことは気にしない人向け。  過激なざまぁ描写はありません。因果応報レベルです。

処理中です...