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新生活スタート!

久しぶりの公爵家

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来る時には馬車で旅してきた王城ですが。
転移ゲート設置済みの今ではもう「シュ!」で行ったり来たり。
ゲイルとティガマリは転移経験済みだけど、俺はお初!
あの!あの「転移」!
どういう感じなんだろうか。そもそもどんな原理で転移できるの?!
考えてたら頭の中がもにょんもにょんしてきた…。
身体全部を一回元素に分解して向こうで再構築…とか?

「あ、あわわわわわ!!」

転移ゲートの前で俺のノミの心臓が激しいビートを刻む。
思わずゲイルの服をぎゅっと掴んで聞いた。

「い、いたくない?びりびりってしない?ぶんかいされてもどんなかったりしない?」
「ん?どうした?怖いのか?」
「こ、こわいわけではないけれども。むこうについたら てがないとか。あしがないとか。そしたらこまる」
「ぶはっ!」

ゲイルが噴き出した。
こっちは真剣なのに!

「ぼくは しんけん!わらうなんてしつれー!」
「す、すまんすまん!いや、あんまり可愛い事言いだすから…。
大丈夫だ。ちゃんとそのまんまで向こうに行けるぞ」
「かこに しっぱいしたひといない?だいじょぶ?」
「大丈夫大丈夫!俺だって毎日使ってたろ?ほら、なんともないぞ?」

念のためゲイルチェックしたが、完璧にゲイル。うむ。大丈夫そう。

「だっこでてんいしたら、ぼくとゲイルくっついちゃったりしない?」
「しないしない!アハハハハ!サフィ!もうやめてくれ!」




ゲイルに抱っこされたまま通った転移ゲートは、エレベーターで降りる感じ。ひゅん!て。
あっという間に違う部屋に到着!
ひゅん!ぱっ!て景色が変わった!

「ほええええええ!」

俺はびっくりして思わずゲイルの頭によじ登ってしまう。

「い、いたたたた!サフィ!サフィ!大丈夫だから降りてこい!こら!俺の頭がもげる!」

ご、ごめええん!!
そおっとそおっと腕に戻って、そろおりそろおりと足を地面に降ろす。

「!ついた!」
「おう。着いたなあ!」
「みて!みて!どこかとれてない?だいじょうぶ?」

くるくる回りながら、足りないパーツがないか確認して貰う。
ついでにゲイルにも足りないところが無いかチェック。ゲイルは今更だけど。念のため。

「………大…丈夫だっ…ちゃんとっ…ついてるぞっ…」

顏の下半分を隠して震えるゲイル。
また笑ってるでしょ!もう!





「おかえり。サフィ。どこか痛い所とかない?お腹空いてない?大丈夫?」

いきなりかけられた声にビクッとし、振り返ると。
なんと、リオネルだった。

「え?どしているの?」
「サフィが夕方帰ってくるって聞いたから、待ってたんだよ」

見ると部屋のすみっこに、クッションとか毛布とか、本とかが置いてある。
どうやらここで待機していたらしい。
ま、マジですか?

「………そ、そうなの?………ただい…ま?」

俺の言葉にリオネルの顔が、ぱあああああ!

「え、えへへへへへ。ちゃんと帰ってきてくれた!よかったあ!」

真っ赤になって、部屋から飛び出していく。

「お兄様あああ!!お父様あああ!サフィ、帰ってきたあああ!!」

ガタガタ!ドタドタドタ!

なんだかすごい音がしたと思ったら、バタバタバタバタっという足音と共に、ライオネルと公爵が現れた。
ライオネルはハアハアと息を切らしており、いつも整然とまとめられた公爵の髪も乱れている。
え?もしかしてこの人たち、走ってきたの?

「………サフィラス、お帰り。王城ではどうだった?きちんと食事はできていた?夜はよく眠れたかのかな?」

ライオネルが矢継ぎ早に話しかけてきた。

「サフィラス。よく帰った。問題はないか?体調などはどうだ?」

公爵もこころなしか早口で同じことを聞いてくる。
俺はちょっと困ってゲイルを見上げた。
ゲイルが「答えてやったらどうだ?」って感じで頷いたので、俺はとりあえず聞かれたことに答えた。

「………た、ただいまです…?ごはん、とてもおいしかったです。よるはレオンおにいさまがだっこしてくれたので、ねれました」

俺の言葉に、公爵家のメンバーの顔が「あわわわわ」になった。
こんな顔、初めて見た!ど、どうした?!

公爵家を代表して、という感じで、公爵が口を開いた。
何か決意したような顔をしている。そんな重要なこと?え?なに?

「だ、抱っことは、どういうことだろうか?ま、まさか…レオンハルト殿下と一緒に就寝していたのか?」

そんなこと?

「だっこは、だっこです。ゲイルのかわりに、ぼくをだっこしてねてくれました」

え?何?もうおっきいんだから1人で寝ろって?
いいじゃん、別に!俺の勝手でしょお!

ぷんすかする俺に、ゲイルが苦笑。

「防犯上の理由から、王城でも特別に結界を張ってあるレオンハルト殿下の部屋で預かってくれたんだが。サフィはいつも俺と寝ていたから、1人で眠るのが寂しかったようでな…殿下が一緒に寝てくれていたんだよ」

「そ、そうか…。うむ…」

どこか納得していないような表情で公爵が頷く。

「弟のように可愛がられていただけだぞ?……まあ、溺愛だったが…。先に伝えておく。殿下はサフィの魔法訓練の際、魔塔主と同行してこちらに来るそうだ。そして、サフィの部屋に泊まっていくと言っていた」

「はあ?何それ?どういうこと?」

リオネルが思わずといった感じで叫んだ。

「サフィは王子の弟じゃないでしょ!」
「レオンおにいさまが、おにいさまになってくれるっていった!おうじ、ぼくのおにいさまだもん!!」
「違うもん!サフィは公爵家の子供でしょ!王家の子供じゃないでしょっ!王子はお兄様じゃないでしょ!血がつながってるの、僕だもん!僕がお兄様なのにいいいいい!!わあああああん!」
「ちじゃないの!こころがつながってるんだから いいの!ぼくの おにいさまだもん!ぼく、レオンおにいさまのおとうとだもんっ!!うえええええん!」

俺とリオネルは再会早々大げんか。
おにいさまだ、いや違う、と言い合いになり。お互いに泣き出してしまった。
カオス。

俺の大事なおにいさまなのに!何でリオネルが口出しするの?!
俺とお兄様がいいって言ってるんだから、関係ないでしょ!ゲイルだって、いいって言ったもん!


「ゲイルうう!リオがいじわるいった!いじわるっ!」

ゲイルに抱き着きながら泣きつくと、同じくライオネルに抱き着きながらリオが反論してきた。
お互いにもう感情がぐちゃぐちゃになって、えんえんと泣きながら言いたいことをぶつけ合う。

「ちがうもんっ!ぼく、ぼく、サフィが帰ってきてくれるの、ずっとずっと待ってたのにいいい!
これまでごめんねって、なかよくしようねって、言いたかったんだもおおおん!
なのに、なのに、王子をお兄様って!いっしょに寝てるって!うええええん!
僕がお兄様なのにっでも違うのがまんしてるのにっ、王子だけずるいよおおおう!」

「ぼく いらないっていったの リオたちでしょおっ!だから、あたらしいかぞくえらんだの!
ゲイルだって、おうけのひとだって、ぼくのこと かぞくだっていってくれた!
だいすきだっていってくれたもんっ!レオンおにいさまが、おにいさまっていってねって!
おにいさまになってくれたんだもんっ!
いじわるいうなら、かえってこなきゃよかったっ!ゲイル、もどろう!」

「だめえええ!!!」「だめだ!!」

俺の言葉にリオネルと、ライオネルまで僕に飛びついてきた。

「ごめんなさい!ごめんねっ!行かないでっ!僕、僕、サフィがあのまま帰ってこないんじゃないかって思ってっ…毎日…っ毎日ここにきて待ってたの…っ。もし帰ってきてくれたら、すぐに『おかえり』って言えるように…っ!
僕だって…僕だって…すっごく酷い事言っちゃったけど……それでもっ…サフィが好きっ…酷い事ばっかり言ってごめんなさいいいいっ…だけど…だけど…行かないでよおおおおっ」

リオネルががっしりと俺の足にしがみつく。ライオネルは、俺の手をしっかりと握り、懇願。

「…………っ色々サフィが過ごしやすいように改装したんだ…。私とリオも手伝った。リオは…やきもちを焼いてしまったんだと思う…。みんなサフィが戻るのを楽しみにしていたんだ。できれば…公爵家で過ごして貰えないだろうか…」

あまり表情を変えないライオネルの目が潤んでいるのが分かる。

「……っ……」




「サフィ。ライオネル、リオネル。少し落ち着こうか。
サフィも戻ったばかりで疲れている。
とりあえず、サフィの部屋に戻して、少し休ませてもいいか?」






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