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俺、えりりんと貴族教育する!

俺とお披露目会の衣装

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お披露目会まであと1か月。
俺の貴族機養育は最終段階に入っていた。

俺の衣装も、既にゲイルによって既に用意されている。
そう!本来は公爵家が用意するのだろうが、有無を言わさずゲイルが用意したのだ!



話は数ヶ月前にさかのぼる。
貴族教育が再び始まってすぐの頃。
夜、部屋でゲイルの膝で甘えていると、公爵が俺の部屋を訪れた。

「どうかなさいましたか?
うちのサフィに何かご用ですか?
ご心配なさらずとも、教育は順調に進んでおります。
なにしろ、うちのサフィは優秀ですので!
全く何も、言葉すら教えられぬまま放置されていたと言うのに、サフィは驚くほど覚えが早いのです。」

迫力ある笑みを浮かべて公爵を牽制するゲイル。
慇懃無礼ってこういう事を言うんだね!
公爵の視線から庇うようにさりげなく俺をその胸に抱き込む。
って、ぜんぜんさりげなくないけどね!
絶対ドヤってるでしょ、ゲイル!
………すき!
俺は無意識にゲイルの胸元にすりすり。


そんなゲイルの無礼な態度をとがめることもせず、公爵は謝罪した。

「く…くつろいでいるところ、すまない」

……さすがに少し動揺しているようだ。
それにしても、家主であり高位である貴族が居候の、しかも下位の貴族に謝罪するなど、通常はあり得ない。
どうした、公爵?!
あれ以来、公爵はまるで人が変わったようだった。
無表情だけど彼なりにものすごく俺たちに気を遣っているのが分かる。
無口だというが、なんとか言葉にしようとしているのも分かる。

公爵は、入り口に足を止めたまま、それ以上中に立ち入ろうとはしなかった。
おずおずと俺に向かって声を掛ける。
俺を脅かすのを恐れるかのように、そっと、小さな声で。

「……サフィラス、教育がすすんでいるようでなによりだ。
体調はどうだ?
少し話をしてもよいだろうか?」

淡々とした口調ではあったが、その顔は緊張によりわずかに強張っている。
その声も、かすかに震えていた。

俺はそのことに気付かないふりをした。

「はい。どういったごようけんでしょうか、こうしゃくさま」

張り付けたような笑顔の俺に、公爵の身体の横に置かれた拳が、ぎゅっと強く握られる。

俺にどんな答えを期待していたんだろう?
にっこり笑って「褒めてくれてありがとう!」と言えとでも?
いやいや、無理でしょ。
笑顔で返事をしてあげただけでも十分偉いと思うよ、俺。

公爵は内心の動揺を根性で抑え込んだ。
うんうん。冷静に。それでこそ、公爵!
てか、そういう無表情がデフォだったでしょ。アナタ。

「……衣装を用意せねばならない。希望はあるか?」

ああ、衣装か!
そうだよね、衣装、大事だよね。忘れてた!

これまでは何枚も並ぶ無地のワンピースみたいなのとか、シンプルなズボンとかを交代で着てただけだし。
こっちの部屋に移ってからはゲイルとエリアナが嬉々として色々用意して着せて来るから。
さんざん着せ替えごっこされて、もう服についてはお腹いっぱいなんだよ。
元々そこまでオシャレな方じゃなかったし、このサフィくんのビジュアルだとどんな服でもそれなりに着こなせちゃうしね。
これは自慢じゃないぞ。単なる事実だからな!

ゲイルたちが勝手に用意してた服だけど、サイズについては…寝込んでる間にいつの間にか測られてた。
抜かりないよね!
おとーさま!好き!
でも、ひらひらしたのはやめてね。俺、これでも男の子だからね。

「…………ありません」

俺は一瞬で色々なことが頭を掻け巡り、キュッとした顔をしてしまった。

「ならば…」

言いかけた公爵の言葉にかぶせるようにゲイルが言った。

「ご安心なさってください!もう、サフィの保護者である、父親になる私が用意させて頂いておりますので!」

「『生まれてから今まで一度もお披露目されたことがない』という、『私の大切な息子』の『初めてのお披露目』なのですから。
『父である私』が用意するのが当たり前でしょう。
『親として当然』のことですよ?
なにしろ今は私が『サフィの父』なのですから」

ゲイルのひとことひとことが刃となってザクザクと公爵を抉るのが目に見えるようだった。
うちのゲイルがごめんねー。
でも、サフィはこれくらいの嫌味をずっと言われてきたんだからさ。
これっくらい平気だよね、公爵!大人だもんね!

瀕死の体の公爵に、俺は最終決定を告げる。

「だいじょうぶですよ、こうしゃくさま。
だいすきなゲイルおとうさまが、よういしてくれていました。
おとうさまのえらんだふく たのしみです!
なので、おきづかいは いらないです。
こうしゃくはおいそがしいのでしょう?
どうぞぼくたちのことは ごしんぱいなさらず。
ごじぶんの かぞくのことだけ かんがえてください。」

どうだ!貴族教育の成果をくらえ!
必殺!慇懃無礼な口調で「てめーはかんけーねーだろ!あんたなんてイラネ!家族じゃねえし!さっさと帰れ!」攻撃!
ゲイルが居てくれる俺に怖いもんはない!

俺の攻撃は公爵に致命傷を与えたようだ。
彼はかすれた声で

「そ…そうか…。しつれいした…。
いや………サフィラスさえ良いのであれば、よいのだ………」

「ゲイル…そのように丁寧な言葉遣いは不要だ。
できれば……昔のように話して貰えたら有難い」

とようやく言葉を絞りだすと、ふらふらしながら部屋を去っていった。




ワッハッハ!
笑いながらゲイルが俺を抱きしめ、

「よくやった!さすが俺の息子!」

と俺の髪をぐしゃぐしゃにした。

「やめてよおおう。
あたまぐちゃぐちゃ やめてえええ」

言いながらも、実はそんなに嫌じゃない。
全身で「可愛い」「大好き」と示してくれるゲイルがすることなら、なんでも嬉しかったりする。
ゲイルもそれが分かっているから、俺が嫌がってもお構いなしだ。
ゲイルのことだから、あえてこうやって分かりやすい愛情表現をしてくれるのかもしれない。

「……ゲイル、すき!」


ああ、いかんいかん!勝手に口が…!


「俺もサフィが大好きだぞ!」


でも、ゲイルが幸せそうにそう言ってくれるから。
俺は何度だって口にしてしまう。
なんだかんだいって、俺も重症なファザコンなのだ。

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