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第4章 神の君臨
共闘、勇者と魔王
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回復魔法に混ぜられた神片は援護系だけではない。
神力は全て回復に費やしたために攻撃の部分は搾り滓にすぎないものの、クレイス達の戦いを援護しようと波動がヘラを襲う。
「もう、やっぱり人任せはダメね」
もう二人の復活が止められないと察するやいなや、気怠そうにして攻撃を避けもせず甘んじて攻撃を受け入れたのだ。
神片の奔流に飲み込まれても平然としているヘラは虫に刺されたくらいの様子で、地上へと再び舞い降りる。
そう簡単にはいかないか、と精神的な疲労で今度はキリルがその場に座り込んだ。
「ありがとうキリル」
「ふっ……ふふっ。それでこそ、私が一緒に旅した勇者、だよ」
立ち上がったクレイスは見違えるような覇気を纏っていた。
キリルも体を張った甲斐があったと笑う。
その後ろで無言の応援を放つパニーナも。
さらに両手を胸の位置に置いて眠り続けるテュイアの身体も笑みを浮かべているようにクレイスには思えた。
「行こうゼルヴェ。戦り合うのは後だ」
「——分かっている」
傷だらけのレヴィーをキリルとパニーナの側へと運び、ゆっくりとゼルヴェも振り返った。
二人が見上げるは空に浮かぶ神。
敵味方関係なく、多くの犠牲を払ってここまで来た。
この連鎖を止めるのは、自分たちなのだ、と二人は得物を構える。
「あーあ、結局一番面倒なやつ。自分でやらなきゃダメなんて」
勇者と魔王を見下ろす神。
今まで神は人を見守り、極力干渉を避けてきた。
しかしヘラにそんな通説は通用しない。
自分しか神のいない世界で好きなように遊ぶことができる。
「魔王ゼルヴェくん以外の人は一回皆殺しにしましょ? 一からこの庭を作り直しましょう」
高まる神力が雲を呼び、雷を落とす。薄い衣が黒色を帯びて、ドレスへと変わっていった。
「決めたわ! 新たな世界が始まる私の庭! ノア・ガーデンよ!」
「好き勝手やった代償は払ってもらうよ……テュイアとロイケン爺の仇を討つ!」
踏み込み斬りを軽々と弾いたヘラは会話を続けながら、クレイスの連続斬りを躱し続ける。
「待って待って。私、その子にも蘇生の機会をあげてたのよ? 平等になるようにね」
「神は人を惑わす……嘘はいい加減に飽きたぞ?」
剛翼を用いて、高速で死角に回り込むゼルヴェの攻撃も見ずに避けられてクレイスとぶつかってしまう。
「ぐっ!?」
「もう! ゼルヴェくんは分かってるでしょ?」
思い出と想いが、ゼルヴェの方が多く溜まっているゆえに魔王にふさわしく変わっていく、とかつて語られた言葉。
「全てお前の策略通りというわけか……」
「ゼルヴェくんが勇者くんをすぐ吹っ飛ばしちゃったから計画変えるしかなかったんだから」
少し離れた場所で立ち上がる二人は実力差を目の当たりにしても、闘志に綻びを見せない。
「ふふっ、まーいいじゃない。ゼルヴェくんも私に熱い想いを溜めてくれたんだし?」
「ならば……その記憶ごと弾けろ!」
猛追するゼルヴェを追いかけることができず、クレイスは思考の海を泳いだ。
チャンスを与えたとは言っても最初から最強の力を授けられたゼルヴェと、振るうことも出来なかった大剣を渡されたクレイスに出来ることは天と地ほどの差がある。
そこでクレイスは自分に与えられた呪い、行事を思い出した。
経験を増幅させる効果よりも、先に進めないように自分を縛り付ける呪いに苦しめられてきたクレイスが魔王よりも先にテュイアの身体に思い出を貯められるわけがなく。
「行事で僕を縛って動けなくして……何が平等だ!」
「何のこと? はぁー、もう二人ともいい加減してちょうだい。もうあの子は終わったのよ」
指を突き出されただけで後方に吹き飛ばされるクレイスは剣を地面に突き刺し、何とか踏み留まった。
「終わってない! 僕が絶対に終わらせない!」
「勇者くん程度じゃなぁ~?」
よそ見をしていたヘラは、攻撃の方向を見ずに斬撃を右腕で軽く受け止める。
薄皮一枚傷つけられないほど実力差にクレイスは歯噛みする。
「どうゼルヴェくん? 私、かっこいい? もう少しか弱い方がいい?」
はたき落とされたサング・オブ・ブレイバーにつられて、地面に叩きつけられたクレイス。
声にならない悲鳴が肺から絞り出された。
凄まじい破壊力を誇る武器だが、その弱点はその重さ。
バランスを奪われれば剣に振り回されてしまう所にある。
「クレイス!」
「ちょっとー、勇者くんより彼女のこと見てよ! ゼルヴェくん!」
倒れるクレイスの顔を潰そうとゆっくりと足を上げるヘラ。ゼルヴェはすかさずそこに拒絶球を放つ。
「私は聡明な女性が好みなんだ」
「え! 私のこと!?」
拒絶球ごと勇者を踏み潰そうとしたが、ゼルヴェの狙いは勇者を吹き飛ばすことだった。
紙一重で後方に吹き飛ばされるクレイスは肉塊にならずに済む。
「聡明な女性なら私の狙いにも気づいたはずだが?」
「……じゃあ私の好みも教えてあげる」
充分な間合いがあったにも関わらず、ヘラの言葉がゼルヴェの背後から聞こえるようになった。
神特有の高速移動より上の何か。絶対的な神の威圧に振り向くことを躊躇してしまう。
「私に従順な子っ!」
「やらせない!」
振り下ろされた手刀を受け止めたのは泥まみれになりながらも駆け寄っていたクレイスだった。
ゼルヴェの生意気な行動に対し、ありえない動きをするヘラへの予測。
ロイケン譲りの経験則で勇者が魔王の窮地を救ったのだ。
「ゼルヴェ! 今だ!」
全てを吹き飛ばす凄烈な威力を凝縮した拒絶球を握りしめ、ヘラの手刀を受け止めているサング・オブ・ブレイバーを殴りつける。
「「吹き飛べ!」」
「ぐあっ!?」
弾くのは剣。
クレイスの踏み込みで傷つけられないならば、拒絶の力もそこに掛け合わせて何百倍にも増させた勢いで斬り裂けばいい。
一連の戦闘から二人が話すこともなく導き出した一つの答えである。
神力は全て回復に費やしたために攻撃の部分は搾り滓にすぎないものの、クレイス達の戦いを援護しようと波動がヘラを襲う。
「もう、やっぱり人任せはダメね」
もう二人の復活が止められないと察するやいなや、気怠そうにして攻撃を避けもせず甘んじて攻撃を受け入れたのだ。
神片の奔流に飲み込まれても平然としているヘラは虫に刺されたくらいの様子で、地上へと再び舞い降りる。
そう簡単にはいかないか、と精神的な疲労で今度はキリルがその場に座り込んだ。
「ありがとうキリル」
「ふっ……ふふっ。それでこそ、私が一緒に旅した勇者、だよ」
立ち上がったクレイスは見違えるような覇気を纏っていた。
キリルも体を張った甲斐があったと笑う。
その後ろで無言の応援を放つパニーナも。
さらに両手を胸の位置に置いて眠り続けるテュイアの身体も笑みを浮かべているようにクレイスには思えた。
「行こうゼルヴェ。戦り合うのは後だ」
「——分かっている」
傷だらけのレヴィーをキリルとパニーナの側へと運び、ゆっくりとゼルヴェも振り返った。
二人が見上げるは空に浮かぶ神。
敵味方関係なく、多くの犠牲を払ってここまで来た。
この連鎖を止めるのは、自分たちなのだ、と二人は得物を構える。
「あーあ、結局一番面倒なやつ。自分でやらなきゃダメなんて」
勇者と魔王を見下ろす神。
今まで神は人を見守り、極力干渉を避けてきた。
しかしヘラにそんな通説は通用しない。
自分しか神のいない世界で好きなように遊ぶことができる。
「魔王ゼルヴェくん以外の人は一回皆殺しにしましょ? 一からこの庭を作り直しましょう」
高まる神力が雲を呼び、雷を落とす。薄い衣が黒色を帯びて、ドレスへと変わっていった。
「決めたわ! 新たな世界が始まる私の庭! ノア・ガーデンよ!」
「好き勝手やった代償は払ってもらうよ……テュイアとロイケン爺の仇を討つ!」
踏み込み斬りを軽々と弾いたヘラは会話を続けながら、クレイスの連続斬りを躱し続ける。
「待って待って。私、その子にも蘇生の機会をあげてたのよ? 平等になるようにね」
「神は人を惑わす……嘘はいい加減に飽きたぞ?」
剛翼を用いて、高速で死角に回り込むゼルヴェの攻撃も見ずに避けられてクレイスとぶつかってしまう。
「ぐっ!?」
「もう! ゼルヴェくんは分かってるでしょ?」
思い出と想いが、ゼルヴェの方が多く溜まっているゆえに魔王にふさわしく変わっていく、とかつて語られた言葉。
「全てお前の策略通りというわけか……」
「ゼルヴェくんが勇者くんをすぐ吹っ飛ばしちゃったから計画変えるしかなかったんだから」
少し離れた場所で立ち上がる二人は実力差を目の当たりにしても、闘志に綻びを見せない。
「ふふっ、まーいいじゃない。ゼルヴェくんも私に熱い想いを溜めてくれたんだし?」
「ならば……その記憶ごと弾けろ!」
猛追するゼルヴェを追いかけることができず、クレイスは思考の海を泳いだ。
チャンスを与えたとは言っても最初から最強の力を授けられたゼルヴェと、振るうことも出来なかった大剣を渡されたクレイスに出来ることは天と地ほどの差がある。
そこでクレイスは自分に与えられた呪い、行事を思い出した。
経験を増幅させる効果よりも、先に進めないように自分を縛り付ける呪いに苦しめられてきたクレイスが魔王よりも先にテュイアの身体に思い出を貯められるわけがなく。
「行事で僕を縛って動けなくして……何が平等だ!」
「何のこと? はぁー、もう二人ともいい加減してちょうだい。もうあの子は終わったのよ」
指を突き出されただけで後方に吹き飛ばされるクレイスは剣を地面に突き刺し、何とか踏み留まった。
「終わってない! 僕が絶対に終わらせない!」
「勇者くん程度じゃなぁ~?」
よそ見をしていたヘラは、攻撃の方向を見ずに斬撃を右腕で軽く受け止める。
薄皮一枚傷つけられないほど実力差にクレイスは歯噛みする。
「どうゼルヴェくん? 私、かっこいい? もう少しか弱い方がいい?」
はたき落とされたサング・オブ・ブレイバーにつられて、地面に叩きつけられたクレイス。
声にならない悲鳴が肺から絞り出された。
凄まじい破壊力を誇る武器だが、その弱点はその重さ。
バランスを奪われれば剣に振り回されてしまう所にある。
「クレイス!」
「ちょっとー、勇者くんより彼女のこと見てよ! ゼルヴェくん!」
倒れるクレイスの顔を潰そうとゆっくりと足を上げるヘラ。ゼルヴェはすかさずそこに拒絶球を放つ。
「私は聡明な女性が好みなんだ」
「え! 私のこと!?」
拒絶球ごと勇者を踏み潰そうとしたが、ゼルヴェの狙いは勇者を吹き飛ばすことだった。
紙一重で後方に吹き飛ばされるクレイスは肉塊にならずに済む。
「聡明な女性なら私の狙いにも気づいたはずだが?」
「……じゃあ私の好みも教えてあげる」
充分な間合いがあったにも関わらず、ヘラの言葉がゼルヴェの背後から聞こえるようになった。
神特有の高速移動より上の何か。絶対的な神の威圧に振り向くことを躊躇してしまう。
「私に従順な子っ!」
「やらせない!」
振り下ろされた手刀を受け止めたのは泥まみれになりながらも駆け寄っていたクレイスだった。
ゼルヴェの生意気な行動に対し、ありえない動きをするヘラへの予測。
ロイケン譲りの経験則で勇者が魔王の窮地を救ったのだ。
「ゼルヴェ! 今だ!」
全てを吹き飛ばす凄烈な威力を凝縮した拒絶球を握りしめ、ヘラの手刀を受け止めているサング・オブ・ブレイバーを殴りつける。
「「吹き飛べ!」」
「ぐあっ!?」
弾くのは剣。
クレイスの踏み込みで傷つけられないならば、拒絶の力もそこに掛け合わせて何百倍にも増させた勢いで斬り裂けばいい。
一連の戦闘から二人が話すこともなく導き出した一つの答えである。
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