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第二章 思わぬ『ライバル』登場で、いよいよ二人の間は急接近!? 浮かび上がる彼女のホントのキモチ!!

第三十一話 平原の『厄災娘』の名はダテじゃない!?

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「ジェニファーさんたちはどうして〈賞金稼ぎバウンティハンター〉に?」

「ふふ、愚問ぐもんですわね」

 フっと笑って、ジェニファーさんは髪をかきあげた。

 う~ん、どうも見とれちゃうなぁ~。

「欲しいものがあったからに決まっているじゃありませんか? 大半の〈賞金稼ぎバウンティ―ハンター〉はそんなものでしょう? それが形あるものかないものかは別として」

 そうだよね。

 それがフツーだよね。

 なりゆきで〈賞金稼ぎバウンティ―ハンター〉になった自分とはやっぱりちがうよね。

 分かっていたことだ。

「どうされましたか? ミスターフィル、うかない顔して」

「いや、実は僕、単に【務め】で田舎から出て、それで意味も無く〈賞金稼ぎバウンティハンター〉になってだけでして、結局何やってんだろうなぁって」

「……フィル、もしかしてやめたい?」

「そ、そんなことないよ! 今はやりたいことをやっているって感じがして充実しているんだ。ほんとだよ」

 ほんと、これは、まぎれもない本心。

「ただ、ほとんど【務め】を成しとげようせずになにやってんだろうって……」

「何を言ってるんですの? 【務め】を成しとげるかが、自分の『やりたいこと』に、何か関係がありますの?」

「え?」

「【烙印スティグマ】なんて、だれにでもあるものなのですから、感情と同じですわ。怒りも喜びも自分のために利用してしまえばいいのです」

 そんな考え方、初めてだ。

「それで【務め】が成しとげたなら一石二鳥。ようは自分がどうしたいかが先ですわ」

 そっか。

「……自分がどうしたいかが先」

「ウィンさん? もしかしてアナタもそんなことで悩んでらしたの?」

「そんなことって!」

「その首のチョーカー、〈傷害インジャリィ〉の【烙印スティグマ】ですわね」

 僕たち全員、息をのんだ。

 どうして分かったんだ?

「……ど、どうしてそれを?」

「幼いころ、一度だけ見たことがありましてよ。そう、その人はウィンさん、あなたのような白い髪の女性でした」

「……もしかしてお母さん」

「あら? お母様でしたの。どおりでそっくりだと思いました」

 なつかしむように目を閉じるジェニファーさん。

「それはまだお父様が行商人であったころですわ。まだ身重みおものお母様と三人、野党におそわれていたところを助けてくださったのが、エレノアさんでした」

 こんなところでウィンたちとゆかりのある人と会えるなんて。

「なんとなく、あなた方が〈賞金稼ぎバウンティ―ハンター〉をしている理由が見えてきましたわ」

 今の話で、だいたい想像ついてしまうよね。そりゃ。

「お母さまのように父親の敵討ちですわね!」

 ………………………………………。

 どうしてそうなった?

「あのぉ~、ウチのお父さんが亡くなったのって、ごめん、『病気』だったんだ」

 Oh……。

 思いっきりハズしてる。

 事故じゃなきゃ、大半はそうだよね。

 さすが、うっかりケアレスリージェニーの名はダテじゃない。





――カルサイトリコ スパー高原――


 翌日、僕らは本格的に〈グラトニー・プリン〉の討伐へ向かったんだ。

 Tock Tock Tock……。

 GATAK GATAK GATAK……。

「ぜんぜん、出てこないね……」

「けど、手配書には街道上の行商人が度々おそわれているって」

 だからこうして荷馬車を借りて、行商人を装っているわけなんだけど。

「ふ~ん……」

「干からびちまったんじゃねぇか?」

「……そうだね」

 だったらいいけどね。

 それにしても今日のウィン元気がない。

 どうしたんだろう?

 昨日はあんなにはしゃいでいたのに。

 あれかな?

 いや、ちがうって、のことじゃなくて!

 いつもはしゃいだ後、ウィンってけっこうナーバスになるじゃないか。

 もしかしたらまた……。

「レヴィンったらまたそんなこと言って……」

「クーンクーン!」

「もう! つまりませんわ!」

「お嬢様、はしたないですよ」

「姉さん、気長に待とうよ、あっちだってきっと警戒してるんだよ」

「やだっ! もうっ! ぼっちゃま、どこをさわってるんです!?」

「へへへ」

「ひざまくらって……アナタたちはゆるみすぎですわ」

 まったくもってその通り。

「なにか条件があるのかもしれないね」

「え? でもこうして荷馬車借りてきたんだよね。フィル?」

「う~ん……」

 そうなんだけど、かれこれ40分以上、街道を進んでいる。

 でもいっこう出てくる気配はない。

 だとしたら、なにか別の理由を疑ってもいいかもしれない。

「そろそろ、馬も休せないといけないし、ここら辺で一度休みましょうか」

「「さんせ~い」」

 昼どきが近いこともあり。

 いったん、荷馬車をとめて、僕らはランチにすることに。

「「一狩り」」

「行ってくる」

「行ってきますわ!」

 ウィンとジェニファーさんにつめよられた。

「え? なに? どうしたの?」

「……今は体を動かしたくてしょうがないんだ」

「ずっと座っていたから体がカタまって仕方がありませんわ!」

 あぁ……そういうこと。

「ねぇ! リリー姉ぇいいでしょ!」

「う~ん、そうねぇ、もう少し食材があってもいいかな」

「ね! 行こ! フィル!」

「え! 僕も行くの!?」

「おねがい」

 なんだろう。

 ウィン、今日はやけにぐいぐい来る。

「……ハァ……わかったよ」

「んじゃ、オレも」

「バカ! レヴィンはロクに戦えないでしょ! おとなしくしてなさい!」

「……ちぇ~」

 アニキ、ふてくされている。

 リシュアン君は……メイドのアリサさんとイチャイチャしているからそれどころじゃなさそう。

「ほら、ボーっとしてないで行こっ!」

「行きますわよ! ミスターフィル!」

 ずるずると引きずられ僕は二人に付き合わされることに。

 うらやましいって?

 じゃあ、代わってくれ!
 
 だれでもいいからさ!

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