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超番外編・〇〇しないと出られない部屋
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「ふわ…?」
気が付いたら、見知らぬお部屋に居ました。
大きなべっどだけがある白い壁に囲まれたお部屋です。
そのふかふかのべっどの上で僕は正座をしていました。
「何だこれはっ!!」
ぽふぽふと柔らかなお布団を叩いていましたら、旦那様のお怒りの声と同時に、びりびりと何かを破く音が聞こえて来ました。
「旦那様?」
そちらへと顔を向けましたら、壁に片手をついて、肩を大きく震わせている旦那様のお姿がありました。下ろされている右手には、何やら紙が握られています。
「あ、ああ、気が付いたのか…」
僕の声に、ぴくりと肩を震わせてから旦那様が振り返って来ます。
「此処は何処なのでしょうか? 僕達は茶の間に居た筈なのですが…」
「…ああ…。どんな物の怪の仕業かは知らんが…俺達はここに閉じ込められたらしい」
「ふえっ!?」
視線を彷徨わせながら言う旦那様の言葉に、僕は驚いてしまいます。
閉じ込められたとは、どう云う事なのでしょうか?
ぐるりと視線を巡らせれば、確かに出入口となりそうな窓も戸も見えませんね。
「…その、だな…」
とても言い難そうにしながら、旦那様が片手で前髪を掻き上げます。
くしゃりとした音が旦那様の右手から聞こえて来ました。
「…旦那様、そちらは?」
僕はべっどから降りまして、壁の傍に居ます旦那様の元へと歩いて行きます。
十歩程も歩かずに、そちらへと辿り着きまして、くしゃくしゃに握り締められた紙に視線を送れば。
「…この部屋から出る方法が…書かれてある…」
旦那様がそう言いながら、僕にくしゃくしゃの紙を差し出して来ました。
「…失礼します…」
こうして渡して来たと云う事は、見ても良いと云う事ですよね?
くしゃくしゃの紙を受け取り、僕はそれを開いて行きます。
「ええと…"ここから出る方法は一つ。せ…? をする事"…?」
肝心な部分は破れていまして読めませんが、それでも僕の顔は瞬時に赤くなりました。きっと湯気が出ているに違いありません。
「あ、いや! 他に方法があるかも知れんし、時間が経てば元の場所に戻れるのかも知れん!」
旦那様がそんな僕を見て、慌てて両手を振っていますが。
「いいえ、ここから出る手立てがあるのでしたら実行致しましょう。時間が経てば空腹を覚えますし、厠に行きたくもなります」
そうです。この様に何もないお部屋に何時までも居るのは得策ではありません。
「…ぐ…っ…! い、いいのか? お前はそれで?」
「良いも何もありません。夕餉の支度もありますし、手早く済ませてしまいましょう」
片手で口元を隠して言います旦那様に、僕は真面目な顔で頷きます。
今日は柳川鍋を作る予定なのです。このままでは新鮮な泥鰌さんが悲しい事になってしまいます。
「て、手早く!?」
旦那様がお顔を赤くして固まってしまいました。
うぅん、困りましたね。
ここは僕から動くしかありませんね。
恥ずかしいとか言っている場合ではありませんしね。
このままこちらに居ましたら、泥鰌さんのお命を無駄にしてしまいますものね。
「失礼しますね」
「雪緒!?」
僕はそう一言断りを入れてから旦那様の背後に回り込み、そっとその膝裏に手刀を入れたのでした。
◇
「…はあ…。やはり新鮮な泥鰌さんで作る柳川鍋は美味しいですね」
三つ葉の良い香りに鼻を擽らせながら僕がそう言えば。
「…そうだな…」
と、何処か遠くを見ながら旦那様がお返事を返して下さいました。
…それ程に、僕からの接吻はお嫌でしたのでしょうか?
ですが、仕方がありませんよね?
"せっぷん"をしないと、あのお部屋からは出られなかったのですから。
気が付いたら、見知らぬお部屋に居ました。
大きなべっどだけがある白い壁に囲まれたお部屋です。
そのふかふかのべっどの上で僕は正座をしていました。
「何だこれはっ!!」
ぽふぽふと柔らかなお布団を叩いていましたら、旦那様のお怒りの声と同時に、びりびりと何かを破く音が聞こえて来ました。
「旦那様?」
そちらへと顔を向けましたら、壁に片手をついて、肩を大きく震わせている旦那様のお姿がありました。下ろされている右手には、何やら紙が握られています。
「あ、ああ、気が付いたのか…」
僕の声に、ぴくりと肩を震わせてから旦那様が振り返って来ます。
「此処は何処なのでしょうか? 僕達は茶の間に居た筈なのですが…」
「…ああ…。どんな物の怪の仕業かは知らんが…俺達はここに閉じ込められたらしい」
「ふえっ!?」
視線を彷徨わせながら言う旦那様の言葉に、僕は驚いてしまいます。
閉じ込められたとは、どう云う事なのでしょうか?
ぐるりと視線を巡らせれば、確かに出入口となりそうな窓も戸も見えませんね。
「…その、だな…」
とても言い難そうにしながら、旦那様が片手で前髪を掻き上げます。
くしゃりとした音が旦那様の右手から聞こえて来ました。
「…旦那様、そちらは?」
僕はべっどから降りまして、壁の傍に居ます旦那様の元へと歩いて行きます。
十歩程も歩かずに、そちらへと辿り着きまして、くしゃくしゃに握り締められた紙に視線を送れば。
「…この部屋から出る方法が…書かれてある…」
旦那様がそう言いながら、僕にくしゃくしゃの紙を差し出して来ました。
「…失礼します…」
こうして渡して来たと云う事は、見ても良いと云う事ですよね?
くしゃくしゃの紙を受け取り、僕はそれを開いて行きます。
「ええと…"ここから出る方法は一つ。せ…? をする事"…?」
肝心な部分は破れていまして読めませんが、それでも僕の顔は瞬時に赤くなりました。きっと湯気が出ているに違いありません。
「あ、いや! 他に方法があるかも知れんし、時間が経てば元の場所に戻れるのかも知れん!」
旦那様がそんな僕を見て、慌てて両手を振っていますが。
「いいえ、ここから出る手立てがあるのでしたら実行致しましょう。時間が経てば空腹を覚えますし、厠に行きたくもなります」
そうです。この様に何もないお部屋に何時までも居るのは得策ではありません。
「…ぐ…っ…! い、いいのか? お前はそれで?」
「良いも何もありません。夕餉の支度もありますし、手早く済ませてしまいましょう」
片手で口元を隠して言います旦那様に、僕は真面目な顔で頷きます。
今日は柳川鍋を作る予定なのです。このままでは新鮮な泥鰌さんが悲しい事になってしまいます。
「て、手早く!?」
旦那様がお顔を赤くして固まってしまいました。
うぅん、困りましたね。
ここは僕から動くしかありませんね。
恥ずかしいとか言っている場合ではありませんしね。
このままこちらに居ましたら、泥鰌さんのお命を無駄にしてしまいますものね。
「失礼しますね」
「雪緒!?」
僕はそう一言断りを入れてから旦那様の背後に回り込み、そっとその膝裏に手刀を入れたのでした。
◇
「…はあ…。やはり新鮮な泥鰌さんで作る柳川鍋は美味しいですね」
三つ葉の良い香りに鼻を擽らせながら僕がそう言えば。
「…そうだな…」
と、何処か遠くを見ながら旦那様がお返事を返して下さいました。
…それ程に、僕からの接吻はお嫌でしたのでしょうか?
ですが、仕方がありませんよね?
"せっぷん"をしないと、あのお部屋からは出られなかったのですから。
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