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おまけ
危機編・03
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「トイセ会長! しっかりして下さい!」
しゃがんで肩に手を置き、俯せの姿勢から仰向けへと変えれば、青白い顔と震える唇が目に飛び込んで来た。いつもは三つ編みにしている髪は解けて乱れて、額や頬に貼り付いている。
「メゴロウ、私は上半身を持つから、君は足を持ってくれるかい? 早く外へと連れ出そう。風のあたる場所へ…って、メゴロウ? 手に何を持っているんだい?」
生徒会長の脇に両手を差し込み、俺の後を走って来たメゴロウを見れば、何故か手には見慣れた園芸用のスコップを持って立っていた。
「外へ運ぶより、穴を掘って埋めた方が早くないですか?」
ニコッと眩いばかりの笑顔を浮かべ、その場にしゃがみ込み、ザクッと生徒会長の足の横の地面にスコップを刺すメゴロウに、俺は思わず叫ぶ。
「何がっ!?」
メゴロウ、恐ろしい子! と、俺は心の中でム○クの叫びをする。
いや、こいつ、何でか生徒会長が俺を好きだと、ずっと勘違いしていて、部活やら何やらで俺が生徒会長と話していると、面白くない顔をするんだよ。この時間になる前の事だし、病院でのあれは、俺に発破を掛ける物だと言っても、今の時間の会長も、そうだと言ってきかない。
で、そんな時は必ずと言って言い程に、その夜のエッチはえらい事になる。もう、しつこいの何のって。やっと開放されたと思ったら、時間を巻き戻される。で、また、エッチをさせられる。
ねえ? 今更だけどさ、この力、エロゲの主人公に与えたら駄目な奴じゃないか?
って、待てよ? あれ? もしかして、俺、今夜も? 意識を飛ばしても、また、ぬぽぬぽヤられちゃう? え、嘘だよな?
◇
とにかく、俺の全力の叫びが効いたのか、メゴロウは渋々とスコップから手を離し、生徒会長の足を持ってくれた。
で、外へ生徒会長を運んで、温室の前にあったベンチに寝かせて、生徒会長の首からタオルをぶんどり、水で冷やして絞り、首に巻いて少しした処で、彼は目を覚まし、こう言った。
「俺は、寝ていただけだが? 土の熱が気持ち良くてな」
うん、殴って良いか?
「永遠に眠っていたいのなら、人目の付かない処で寝て下さい」
じっとりと生徒会長を見ながら言った俺の後に、メゴロウが続く。
「やっぱり、埋めた方が良かったですね」
こらっ!
「冗談だ。全く、君達二人は容赦が無いな」
お前が熱中症を認めないで、笑えない冗談を言うからだろうが。反省しろボケが。そんな冗談は起き上がってから言え。ベンチに横たわったまま言われても、誰が信じるかってんだ。
「全く、あの暑さの中で水分も摂らずに作業をしていたのですか? 髪も。何時もは綺麗に結んでいるのに…何時も通りにしていれば、少しは熱も逃げたんじゃないですか?」
「…ああ…長年使っていたゴムが切れて、買いに行くのも面倒だから、そのままにして作業をしていた」
何だ、ケチな奴だな。
「…気に入りの奴なんだ。あれを使っている時に、気になる相手が話し掛けて来たからな。見た事もない笑顔で」
おい。人の表情を読むのやめろ。
って、ゲン担ぎみたいな物だったのか?
「意外とロマンチストなんですね。しかし、そのままでは暑いでしょう? 私の髪ゴムを…」
目を細めて、遠くを見る生徒会長がらしくなくて、俺は自分の髪を縛ってる髪ゴムに手を伸ばした。
が。
「いけません! ケタロウ様も暑さには強くないのですから! 購買部で僕が買って来ます! あと、冷たい飲み物も!」
伸ばした手をメゴロウに掴まれ、何だか凄い勢いで捲し立てて、その勢いのまま、メゴロウは走って行った。
「…へ…?」
「…何だ、残念だな。女神のお溢れは無しか」
走り去るメゴロウの背中を呆然と見送る俺の耳に、生徒会長の、それ程残念でもなさそうな声が届いた。
「は?」
「いいや。今日は見学か?」
「ああ、急に起き上がっては行けません」
身体を起こそうとする生徒会長を、俺は慌てて止める。
「いや、首を冷したお蔭かだいぶ楽になった。ありがとう」
「あ、いえ…」
な、何だよ。
急に素直になるなよな。
調子が狂うだろう。
「えぇと…園芸サークルだと聞いて来たのですけど…菜園…ですよね?」
「ああ、花も咲くから園芸だな」
ニヤリと笑う生徒会長に、俺はちょっと遠い目をした。
うわぁい。
何か、それ、誰かが言った気がするなあ。
身体を起こした生徒会長が、ベンチの空いたスペースをトントンと指先で叩くから、俺はそこに腰を下ろした。まあ、ずっと立ちっぱなしで居るのもな。メゴロウも、ずっと立って待っているより、座れって言うだろうしな、渋々とだが。
そんなメゴロウの姿を想像して、くすりと笑えば、生徒会長が『君達は相変わらずだな』って、呆れた様に言って来た。
ほっとけ!
しゃがんで肩に手を置き、俯せの姿勢から仰向けへと変えれば、青白い顔と震える唇が目に飛び込んで来た。いつもは三つ編みにしている髪は解けて乱れて、額や頬に貼り付いている。
「メゴロウ、私は上半身を持つから、君は足を持ってくれるかい? 早く外へと連れ出そう。風のあたる場所へ…って、メゴロウ? 手に何を持っているんだい?」
生徒会長の脇に両手を差し込み、俺の後を走って来たメゴロウを見れば、何故か手には見慣れた園芸用のスコップを持って立っていた。
「外へ運ぶより、穴を掘って埋めた方が早くないですか?」
ニコッと眩いばかりの笑顔を浮かべ、その場にしゃがみ込み、ザクッと生徒会長の足の横の地面にスコップを刺すメゴロウに、俺は思わず叫ぶ。
「何がっ!?」
メゴロウ、恐ろしい子! と、俺は心の中でム○クの叫びをする。
いや、こいつ、何でか生徒会長が俺を好きだと、ずっと勘違いしていて、部活やら何やらで俺が生徒会長と話していると、面白くない顔をするんだよ。この時間になる前の事だし、病院でのあれは、俺に発破を掛ける物だと言っても、今の時間の会長も、そうだと言ってきかない。
で、そんな時は必ずと言って言い程に、その夜のエッチはえらい事になる。もう、しつこいの何のって。やっと開放されたと思ったら、時間を巻き戻される。で、また、エッチをさせられる。
ねえ? 今更だけどさ、この力、エロゲの主人公に与えたら駄目な奴じゃないか?
って、待てよ? あれ? もしかして、俺、今夜も? 意識を飛ばしても、また、ぬぽぬぽヤられちゃう? え、嘘だよな?
◇
とにかく、俺の全力の叫びが効いたのか、メゴロウは渋々とスコップから手を離し、生徒会長の足を持ってくれた。
で、外へ生徒会長を運んで、温室の前にあったベンチに寝かせて、生徒会長の首からタオルをぶんどり、水で冷やして絞り、首に巻いて少しした処で、彼は目を覚まし、こう言った。
「俺は、寝ていただけだが? 土の熱が気持ち良くてな」
うん、殴って良いか?
「永遠に眠っていたいのなら、人目の付かない処で寝て下さい」
じっとりと生徒会長を見ながら言った俺の後に、メゴロウが続く。
「やっぱり、埋めた方が良かったですね」
こらっ!
「冗談だ。全く、君達二人は容赦が無いな」
お前が熱中症を認めないで、笑えない冗談を言うからだろうが。反省しろボケが。そんな冗談は起き上がってから言え。ベンチに横たわったまま言われても、誰が信じるかってんだ。
「全く、あの暑さの中で水分も摂らずに作業をしていたのですか? 髪も。何時もは綺麗に結んでいるのに…何時も通りにしていれば、少しは熱も逃げたんじゃないですか?」
「…ああ…長年使っていたゴムが切れて、買いに行くのも面倒だから、そのままにして作業をしていた」
何だ、ケチな奴だな。
「…気に入りの奴なんだ。あれを使っている時に、気になる相手が話し掛けて来たからな。見た事もない笑顔で」
おい。人の表情を読むのやめろ。
って、ゲン担ぎみたいな物だったのか?
「意外とロマンチストなんですね。しかし、そのままでは暑いでしょう? 私の髪ゴムを…」
目を細めて、遠くを見る生徒会長がらしくなくて、俺は自分の髪を縛ってる髪ゴムに手を伸ばした。
が。
「いけません! ケタロウ様も暑さには強くないのですから! 購買部で僕が買って来ます! あと、冷たい飲み物も!」
伸ばした手をメゴロウに掴まれ、何だか凄い勢いで捲し立てて、その勢いのまま、メゴロウは走って行った。
「…へ…?」
「…何だ、残念だな。女神のお溢れは無しか」
走り去るメゴロウの背中を呆然と見送る俺の耳に、生徒会長の、それ程残念でもなさそうな声が届いた。
「は?」
「いいや。今日は見学か?」
「ああ、急に起き上がっては行けません」
身体を起こそうとする生徒会長を、俺は慌てて止める。
「いや、首を冷したお蔭かだいぶ楽になった。ありがとう」
「あ、いえ…」
な、何だよ。
急に素直になるなよな。
調子が狂うだろう。
「えぇと…園芸サークルだと聞いて来たのですけど…菜園…ですよね?」
「ああ、花も咲くから園芸だな」
ニヤリと笑う生徒会長に、俺はちょっと遠い目をした。
うわぁい。
何か、それ、誰かが言った気がするなあ。
身体を起こした生徒会長が、ベンチの空いたスペースをトントンと指先で叩くから、俺はそこに腰を下ろした。まあ、ずっと立ちっぱなしで居るのもな。メゴロウも、ずっと立って待っているより、座れって言うだろうしな、渋々とだが。
そんなメゴロウの姿を想像して、くすりと笑えば、生徒会長が『君達は相変わらずだな』って、呆れた様に言って来た。
ほっとけ!
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