上 下
80 / 141
攻略されていたのは、俺

【21】

しおりを挟む
 メゴロウの右手が、メゴロウのちんこを掴んでいる。
 シャワーの湯が、メゴロウに降り注いでいる。濡れた髪からポタポタと水滴が落ちて、首へ肩へ胸へ腹へ臍へ、その下の髪の毛と同じ黒い毛を湿らせて行く。更には、俺よりも立派なちんこにも、絶妙な角度でシャワーがあたっている。テラテラと光るそれはシャワーの湯なのか、それとも我慢汁なのか。

 …いや…本当にデカくね…?

 夢では見ていたが、何時も暗かったし、大体が俺の尻の中にインサートされていたから、こうして明るい処ではっきり見るのは初めてだ。

 …アレが、俺の尻の中に…? すげぇ…人体の神秘だな…。
 いや、何感心しているんだ。あれは夢だろうが。

「…あ、の…ケタロウ様…?」

 ドアを開けたままの姿勢で固まる俺に、メゴロウがちんこから手を離して恐る恐る声を掛けて来た。

「…あ、あ…すまないね…。…知っていたのなら申し訳ないが、精液はお湯で固まってしまうから、入浴時のマスターベーションは、余りお薦め出来ないかな…」

 いや、何を言っているんだ。
 違うだろう。
 まずは土下座して…いや、違う、落ち着け、俺。

「…君と話をするには、こうするしかないと思ってね。私が情けないばかりに、君に迷惑を掛けてしまって、すまない。また…」

 そう、まずは情けない俺の事を謝って。

「…って…」

「うん?」

 その声は小さくて、また震えていて、俺は上手く聞き取れなくて首を傾げた。

「…出て行って下さい…っ…!」 

 そんな俺に、身体ごと振り返ったメゴロウが、顔を赤くして、全身を震わせて叫んで来た。
 こんな風に怒鳴るメゴロウなんて初めてで、俺は動揺してしまう。

「え、あ、ああ、マスターベーションの最中に失礼したね」

 そうだ。
 自家発電の邪魔をしてしまった。もしかしたら、もう少しで通電する処だったのかも知れない。メゴロウが怒るのも当然だ。

「そうだ。邪魔をしてしまったお詫びに、私が手を貸しても良いだろうか?」

 通電しそうになった処で止められたらキツいよな。気不味さ大爆発してるだろうし、気持ちを切り替えて、直ぐに続きとはいかないだろう。自分の慣れた手でやるより、他人の手の方が気持ち良いらしいし。メゴロウのちんこなら、俺、触れる。てか、触りたい。俺の手で、イかせてやりたい。

「…っ…が、まん…してた…のに…っ…! 良い子で居たいのに…っ…! それなのに、やっぱり…っ…! 情けなくて…っ…! でも、悔しくて…っ…!」

 今にも泣き出しそうなメゴロウに、俺は宥める様に、軽く両手を上げながら、浴室の中へと足を踏み入れた。二人で入ると、ちょっと狭いけど、身動きが取れない程では無い。

「メゴロウ? 我慢はいけないよ? これは、生理現象なのだから、我慢も、恥ずかしがる事も無いんだよ?」

 そうだぞ。邪魔した責任は、ちゃんと取るからな。

「…っ…! ケタロウ様のバカ…っ…!! 大っ嫌いっ!! 出て行ってっ!!」

「え」

 大嫌い?

 その言葉に、再び固まってしまった俺を、メゴロウはグイグイと浴室から押し出し、更には脱衣所からも押し出した。
 そして。
 ガチャリ。
 と、脱衣所のドアの鍵を閉める音が聞こえた。

 …あ…。
 鍵付いていたんだ…。
 
 と、ぼんやりとした頭の中で思った。
 濡れたメゴロウの手で押された背中が、ぐっしょりとしてる。温かくなってきたから、寝間着は薄手の物へと衣替えしていた。お湯だから、温かい筈なのに、何だか、それが冷たく感じる。着替えないとなと思いながらも、俺はふらふらと歩いて、俺達の部屋から廊下へと出た。

 ◇

「…鬱陶しいを通り越して死人だな…数時間前までは、やたら気合が入っていた様に見えたのだが?」

 そして、俺は今、生徒会長の部屋に居る。
 ローテーブルを挟んで、それぞれソファーへと座り、ローテーブルの上には、ほかほかのホットミルクが入ったマグカップが二つあった。

 ふらふらと歩いて、気が付いたら、生徒会長の部屋のドアを叩いていた。寝てるだろうかとか、そんなの気にする余裕もなく、トントンと…てか、ガラスを引っ掻く様な感じで爪を立てて、ガリガリとドアを引っ掻いていた。

「…シャワー…ありがとうございます…夜着も…」

 何回か両手を上下に動かしていたら、生徒会長が出て来て、俺を見て軽く息を飲んだと思ったら、むんずと腕を掴まれて、風呂場へと押し込まれた。風邪を引くと思ったのだろう。既に風呂は済ませていたが、有り難くその好意に甘える事にした。
 あったかいシャワーにほっと息を吐いて、軽く身体を温めてから浴室から脱衣所へと出れば、そこには寝間着とバスタオルが用意されていた。

「伝統ある学園で、死者を出す訳には行かない」

「…そこまでですか」

 生徒会長らしい物言いに、俺は自嘲気味に笑う。

「この数時間で何があった?」

「…メゴロウに…大嫌いだと言われました…」

「は?」

 俯いた俺の耳に、生徒会長の呆けた声が届く。きっと、目も点になっているんだろう。けど、それを見て笑ってやろうって気にはなれない。
 こんなに、ショックを受けるだなんて、自分でも不思議だ。

「…メゴロウと話をしようと、彼が入浴中ならば、逃げられはしないだろうと…」

「…押し入ったのか? 入浴中に?」

「ええ、そうしたら彼はマスターベーションの最中でし」

「ぶはっ!?」

 俯いた視線の先に、牛乳が飛び散ったのが見える。何噴き出しているんだ。人が真面目な話をしているのに。

「…まあ、最中に邪魔をしてしまいましたので、彼がオーガズムに達する」

「ゴホッゴホッ!!」
 
 おい、邪魔をするな。真面目に聞けよ。

「それで、申し訳ないと思いまして、私の手を貸そ」

「ゴホゴホゴホゴホゴホッ!?」

「失礼ですが、真面目に聞いていますか? 私は真面目な話をしているんですよ? ふざけていないで、真面目に聞いて下さい。良いですか? メゴロウのマスターベ」

「君は、もう何も話すなっ!!」

 ドンッ! って生徒会長が手を拳にして、ローテーブルを思い切り叩いて、身体を曲げたのだろう、下から思い切り俺を睨み付けて来た。
 
 何、このヤンキー!?
 てか、何で怒られるの、俺っ!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

処理中です...