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それぞれの絆
【雪】下駄の思い出
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この日僕は下駄箱の整理をしていました。
年の瀬も近付いて来ましたし、普段は手に付けない処を整理しようと思ったのです。
「…あ…」
奥の方に懐かしい物を見付けました。
それを取り出して見れば、懐かしさに思わず口元が緩みます。
今となっては笑い話になるのでしょうが…あの頃の僕は真面目に悩んでいたのです。
◇
学び舎に通い出しまして、やはりと言いますか、改めて気付いた事があります。
今日は、それを克服致したいと思います。
馬鹿な僕ですが、これでも自尊心と云う物があるのです。
「あ、雪緒君、おはよ~」
「おはようございます、瑠璃子さ…ま…?」
学び舎へと近付きました頃、背後から声が掛けられまして、振り返りましたら。
「えへへ。気が付いた? 昨日ね、新しい下駄を買って貰ったの。今までのより、踵がちょっと高いんだ。雪緒君よりも高くなったかな?」
何と云う事でしょう。
草履よりは高さのある下駄を購入して履いて来ましたのに…。
また、高さのある下駄を探さなければなりません。
にこやかに笑います瑠璃子様には申し訳ないのですが、僕の気持ちはずんと沈みました。
そうなのです。
僕は、ご学友の中で一番背が低いとされている瑠璃子様と同じぐらいの身長しか無いのです。
男児ですのに情けないです…。
ですから、少しでも背を高く見せようとして、高さのある下駄を購入したのです。
下駄は草履よりも硬く履き難いのですが、身長の為ですと、頑張って履いて来ましたのに…。
◇
「ふふ…」
新品同様の下駄を見ていましたら、また笑みが零れてしまいました。
あの後、慣れない下駄のせいか足に豆を作ってしまったのですよね。
痛かったのですが、僕はそれを口にはしなかったのですが、何故かだん…紫様には気付かれてしまいまして。
夕餉の配膳の途中だったのですが『そこに座れ』と言われまして、足の手当てをされてしまったのですよね。そうして後の事は紫様がして下さったのです。
僕がやりますからと言っても『そんなもさもさ動かれては気が散る』と、むすりとした顔で言われてしまいまして…うぅん…中々な言い様だと思いますが…僕を心配しての事ですからね…。
結局、下駄を履いたのはあの日だけで、僕はまた草履に戻ったのですよね。
確か紫様が『背が高かろうと低かろうと、お前はお前だ』と、そう言って下さったから…。…ですから僕は下駄を履くのを止めたのですよね…。
そっとその下駄を撫でましたら、ふわりと胸が温かくなりました。
そうして、それをまた下駄箱の奥の方へと仕舞いました。
「…ああ、そうです。今日の晩酌のお酒は先日発売された"雪ノ下"に致しましょう」
何か特別な日にと思っていましたが…まあ、良いですよね。
紫様が喜んで下されば良いのですけど。
そう思いながら、僕は夕餉の支度をすべく台所へと向かうのでした。
年の瀬も近付いて来ましたし、普段は手に付けない処を整理しようと思ったのです。
「…あ…」
奥の方に懐かしい物を見付けました。
それを取り出して見れば、懐かしさに思わず口元が緩みます。
今となっては笑い話になるのでしょうが…あの頃の僕は真面目に悩んでいたのです。
◇
学び舎に通い出しまして、やはりと言いますか、改めて気付いた事があります。
今日は、それを克服致したいと思います。
馬鹿な僕ですが、これでも自尊心と云う物があるのです。
「あ、雪緒君、おはよ~」
「おはようございます、瑠璃子さ…ま…?」
学び舎へと近付きました頃、背後から声が掛けられまして、振り返りましたら。
「えへへ。気が付いた? 昨日ね、新しい下駄を買って貰ったの。今までのより、踵がちょっと高いんだ。雪緒君よりも高くなったかな?」
何と云う事でしょう。
草履よりは高さのある下駄を購入して履いて来ましたのに…。
また、高さのある下駄を探さなければなりません。
にこやかに笑います瑠璃子様には申し訳ないのですが、僕の気持ちはずんと沈みました。
そうなのです。
僕は、ご学友の中で一番背が低いとされている瑠璃子様と同じぐらいの身長しか無いのです。
男児ですのに情けないです…。
ですから、少しでも背を高く見せようとして、高さのある下駄を購入したのです。
下駄は草履よりも硬く履き難いのですが、身長の為ですと、頑張って履いて来ましたのに…。
◇
「ふふ…」
新品同様の下駄を見ていましたら、また笑みが零れてしまいました。
あの後、慣れない下駄のせいか足に豆を作ってしまったのですよね。
痛かったのですが、僕はそれを口にはしなかったのですが、何故かだん…紫様には気付かれてしまいまして。
夕餉の配膳の途中だったのですが『そこに座れ』と言われまして、足の手当てをされてしまったのですよね。そうして後の事は紫様がして下さったのです。
僕がやりますからと言っても『そんなもさもさ動かれては気が散る』と、むすりとした顔で言われてしまいまして…うぅん…中々な言い様だと思いますが…僕を心配しての事ですからね…。
結局、下駄を履いたのはあの日だけで、僕はまた草履に戻ったのですよね。
確か紫様が『背が高かろうと低かろうと、お前はお前だ』と、そう言って下さったから…。…ですから僕は下駄を履くのを止めたのですよね…。
そっとその下駄を撫でましたら、ふわりと胸が温かくなりました。
そうして、それをまた下駄箱の奥の方へと仕舞いました。
「…ああ、そうです。今日の晩酌のお酒は先日発売された"雪ノ下"に致しましょう」
何か特別な日にと思っていましたが…まあ、良いですよね。
紫様が喜んで下されば良いのですけど。
そう思いながら、僕は夕餉の支度をすべく台所へと向かうのでした。
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