【完結】リアナの婚約条件

第17話 訪問

リアナは、泥に沈み込むようにぐっすりと眠っていた。

ジョージの家の客室は広く、キングサイズのベッドが置かれていた。

分厚いマットレスは、実家で過ごしていた日々を思い出す。

リアナは、深い眠りに包まれていた。







『ピンポーン』





遠くから聞こえるインターホンの音でリアナは目を覚ました。

客室の窓には、分厚い防火カーテンがかけられており、カーテンの隙間から光が僅かに差し込んできている。

（もう、朝になっている。）

呆然としていると、客室のドアが開かれた。


「リアナ。警察が来た。少し話をしてくるよ。君は部屋から出ないでくれ」


「ジョージ。私は」


「大丈夫。心配ないから」


ジョージは、リアナに声をかけて部屋から出て行った。




リアナは、昨日の事を急に思い出した。


血だらけの父、裏口でリアナに刃物を向けた黒ずくめの人物、龍祈川にジョージが迎えに来た事。


ドキドキと胸が音を立てる。


（私じゃない。お父さん。私は殺していない）


警察が来たのなら、ジョージに迷惑がかかる。出て行かなければ。警察に事情を説明しなければ。


でも、なんて伝えたら？


薄暗闇の中リアナは考え込んでいた。


どのくらい時間がたったのだろう。客室のドアが急に開かれた。




ガチャ








「リアナ？」


「ジョージ。ごめんなさい。迷惑ばかりかけて。私やっぱりここにはいられない」


ジョージは、ベッドに座り込んだままのリアナの所へ歩いて来て、リアナの手を握りしめた。

「大丈夫だよ。ずっとここにいてもいい。警察は帰ったよ。昨日お義父さんと僕が会う約束をしていたから、事情聴取に来た。昨日は雨鳥家に僕は一歩も足を踏み入れていない。直前まで会議に参加していたし、屋敷の使用人の証言もある。リアナ、到着が遅れてすまなかった。」

「本当に？ここにいてもいいの？」

「ああ。警察はリアナの事を聞いてこなかった。リアナが僕の家にいる事は誰も知らないはずだよ。そもそも雨鳥リアナは、療養している事になっている。マイラー夫人の屋敷で働いていたのは九条リアナだろ。君と僕は結び付かないはずだ」

「ええ。そうよね」

リアナは、ジョージの手を握り返した。









翌日、姉と元婚約者ソウマが入籍したと発表された。父の死を悼みながら、二人で手を取り合って会社を立ち直すとアナウンスされている。テレビの地方ニュースで、仲良く並ぶ姉と元婚約者を見て、リアナは複雑な思いに翻弄された。