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第2話 山奥の洋館
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茶髪でそばかすの女性はアンの名乗った。アンはお喋りな女性で、リアナが相槌を打っていると気をよくしたのか、色々話しかけてきた。
「なんでもマイラー夫人の使用人が、また大量に解雇されたみたいなのよ。もちろんリアナさんも知っているわよね。何があったか知らないけど、今回の募集は近隣の住人限定で集めたみたい。私みたいな一般人がマイラー夫人の洋館で働けるなんて夢みたいだわ。」
リアナは、バスの中で何度も読み返した「九条リアナ」という人物の履歴書を脳裏に思い浮かべる。
お喋りなアンはリアナの事をハウスメイド志望の「九条リアナ」だと勘違いしている。他人の履歴書を持ち、使用人希望者面接専用のバスに乗っている人間なんている訳が無い。
早く誰かに伝えないと。
私は間違ってここにいるだけだと。
履歴書を拾っただけなのだと。
でも、そうなるとリアナが殺されそうになった事、リアナを殺そうとした人物についても話さなければいけない。
事故の後、彷徨いながらも、ずっとリアナは考え続けてきた。
あの時、会社の社長室へリアナが行った事を知っているのは、リアナの父と婚約者の彼しかいないはずだった。
そう、車を運転していたあの男と電話をしていた人物は、もしかしたら・・・・・・
信じたくなかった。
とても口にできるような内容では無い。
声に出してしまえば、現実になるような気がした。
リアナを殺そうとするほど恨む人物がいる。それも、リアナが最も信頼している二人のどちらかに。
また、頭の中をぐるぐる思考が駆け巡る。
その間も、リアナは前を見て歩いていた。隣を歩く、アンが瞳を輝かせながら洋館を見上げている。
早く告白しなければいけないと思いつつ、リアナは流されるまま、他人の履歴書を持ち広大な洋館の敷地の中を進んで行った。
森の中の広大な洋館の主人はマイラー夫人という名の女性らしい。バス数台と乗用車が10台以上停めれるような広い駐車場に、ロータリーまで設置されている。洋館の周辺には沢山の樹木が植えられ、生垣は、枝生の一本さえない美しい状態に整えられていた。
正面玄関だと思った大きくて広いドアは使用人専用入り口だったらしい。
茶褐色のドアを開き、アンに続いてリアナは洋館の中へ入っていった。
洋館の中では、沢山の人物が働いていた。キッチンでは十数人が入り乱れ、料理を作り盛り付けている。
シーツや洗濯物を運ぶ使用人等は、上質な白の従業員服を身につけており、授業員への対応の良さが窺い知れる。
ここで働けたなら、しばらく身を隠せるかもしれない。
リアナの頭に拾った履歴書の人物と成り代わり働くという考えが浮かんできた。
九条リアナという人物は、この洋館で働くつもりだったのだろう。電話を受け嬉しそうにバスを降りて行った彼女は、とても喜んでいた。働かなくていい理由ができたのかもしれない。きっと彼女は帰ってこない。
これも運命かもしれない。
今は、流れに身を任せよう。
どうしても父と婚約者の元へ帰る決心がつきそうに無いから。
リアナは、アンの後ろを小走りでついて行った。
「なんでもマイラー夫人の使用人が、また大量に解雇されたみたいなのよ。もちろんリアナさんも知っているわよね。何があったか知らないけど、今回の募集は近隣の住人限定で集めたみたい。私みたいな一般人がマイラー夫人の洋館で働けるなんて夢みたいだわ。」
リアナは、バスの中で何度も読み返した「九条リアナ」という人物の履歴書を脳裏に思い浮かべる。
お喋りなアンはリアナの事をハウスメイド志望の「九条リアナ」だと勘違いしている。他人の履歴書を持ち、使用人希望者面接専用のバスに乗っている人間なんている訳が無い。
早く誰かに伝えないと。
私は間違ってここにいるだけだと。
履歴書を拾っただけなのだと。
でも、そうなるとリアナが殺されそうになった事、リアナを殺そうとした人物についても話さなければいけない。
事故の後、彷徨いながらも、ずっとリアナは考え続けてきた。
あの時、会社の社長室へリアナが行った事を知っているのは、リアナの父と婚約者の彼しかいないはずだった。
そう、車を運転していたあの男と電話をしていた人物は、もしかしたら・・・・・・
信じたくなかった。
とても口にできるような内容では無い。
声に出してしまえば、現実になるような気がした。
リアナを殺そうとするほど恨む人物がいる。それも、リアナが最も信頼している二人のどちらかに。
また、頭の中をぐるぐる思考が駆け巡る。
その間も、リアナは前を見て歩いていた。隣を歩く、アンが瞳を輝かせながら洋館を見上げている。
早く告白しなければいけないと思いつつ、リアナは流されるまま、他人の履歴書を持ち広大な洋館の敷地の中を進んで行った。
森の中の広大な洋館の主人はマイラー夫人という名の女性らしい。バス数台と乗用車が10台以上停めれるような広い駐車場に、ロータリーまで設置されている。洋館の周辺には沢山の樹木が植えられ、生垣は、枝生の一本さえない美しい状態に整えられていた。
正面玄関だと思った大きくて広いドアは使用人専用入り口だったらしい。
茶褐色のドアを開き、アンに続いてリアナは洋館の中へ入っていった。
洋館の中では、沢山の人物が働いていた。キッチンでは十数人が入り乱れ、料理を作り盛り付けている。
シーツや洗濯物を運ぶ使用人等は、上質な白の従業員服を身につけており、授業員への対応の良さが窺い知れる。
ここで働けたなら、しばらく身を隠せるかもしれない。
リアナの頭に拾った履歴書の人物と成り代わり働くという考えが浮かんできた。
九条リアナという人物は、この洋館で働くつもりだったのだろう。電話を受け嬉しそうにバスを降りて行った彼女は、とても喜んでいた。働かなくていい理由ができたのかもしれない。きっと彼女は帰ってこない。
これも運命かもしれない。
今は、流れに身を任せよう。
どうしても父と婚約者の元へ帰る決心がつきそうに無いから。
リアナは、アンの後ろを小走りでついて行った。
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