上 下
44 / 45

43

しおりを挟む
ルミアは、貴重なライカー国産の絹をふんだんに使った白銀に輝くドレスに身をつつみ、ダイヤモンドのティアラと真珠のネックレスをつけて、ダイヤモンド宮の正門に馬車から降り立った。金髪で茶瞳のアーロン皇子がルミアと指を絡めて寄り添うようにルミアをエスコートする。

ロンは、刺客を避ける為に本名を隠していたらしい。ルミアもルミーと名前を偽っていた。お互い探そうとしてもいつも見つけられなかった理由がやっとわかった。

シルバーの指輪は、皇后から預かっていた大切な物だと後から聞き驚いた。ロンは、諸外国を訪れる際、ルミアの母リリアネスを探すように皇后から依頼されていたそうだ。ライカー国の王族のみ知る文字が書かれた指輪で、リリアネス本人か確かめる手段だったらしい。指輪はルミアの手に渡ったが、母は塔に閉じ込められたまま亡くなった。ずっと捜索されていたにも関わらず、それを知らず亡くなった母を想うとシルバーの指輪が熱を持つように感じる。








今日はダイヤモンド宮で、初めて第3皇子を招いた交流会が開催される為、滞在する全ての王女、貴族子女達が中庭に集められていた。

ルミアはアーロンと共に皆が集められている中庭にゆったりと歩いて行った。

正面奥のパラソルに座るのはイリーナ公爵令嬢だ。ルミアを見て眉間に皺を寄せ険しい顔をしている。

胸元が開いた真っ赤なドレスを着ているルーナ義姉姫と深い青のドレスを着たリーナ義姉姫は、ルミアを見て幽霊を見たかのように目を見開いている。

黒地に複雑な金の刺繍を施されたドレスを纏い、ルミアから奪った金のネックレスをつけたナリアお嬢様は、常に持っている金の扇子をボトリと地面に落とした。

他の王女や貴族達、付き従う侍女達も気が付いたのかザワザワと囁きあっている。

「皆様。お久しぶりです。私はルミア・ランカー。アーロン・サンダース皇子の唯一の婚約者です。今日でダイヤモンド宮は閉鎖する事に決まりました。今日中に一人残らず出て行ってくださいね」

ルミアは、にこりと微笑み沢山の自称婚約者達を見渡した。

あんぐりと口を開け、呆然とする彼女達に見せつけるように隣に立つアーロンに優しくキスをした。







END『想ってもいいでしょうか?』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました

海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」 「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」 「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」 貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・? 何故、私を愛するふりをするのですか? [登場人物] セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。  × ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。 リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。 アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?

本日はお日柄も良く、白い結婚おめでとうございます。

待鳥園子
恋愛
とある誤解から、白い結婚を二年続け別れてしまうはずだった夫婦。 しかし、別れる直前だったある日、夫の態度が豹変してしまう出来事が起こった。 ※両片思い夫婦の誤解が解けるさまを、にやにやしながら読むだけの短編です。

私のことは気にせずどうぞ勝手にやっていてください

みゅー
恋愛
異世界へ転生したと気づいた主人公。だが、自分は登場人物でもなく、王太子殿下が見初めたのは自分の侍女だった。 自分には好きな人がいるので気にしていなかったが、その相手が実は王太子殿下だと気づく。 主人公は開きなおって、勝手にやって下さいと思いなおすが……… 切ない話を書きたくて書きました。 ハッピーエンドです。

公爵令嬢の婚約解消宣言

宵闇 月
恋愛
拗らせ王太子と婚約者の公爵令嬢のお話。

友達の肩書き

菅井群青
恋愛
琢磨は友達の彼女や元カノや友達の好きな人には絶対に手を出さないと公言している。 私は……どんなに強く思っても友達だ。私はこの位置から動けない。 どうして、こんなにも好きなのに……恋愛のスタートラインに立てないの……。 「よかった、千紘が友達で本当に良かった──」 近くにいるはずなのに遠い背中を見つめることしか出来ない……。そんな二人の関係が変わる出来事が起こる。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

処理中です...