上 下
42 / 45

41

しおりを挟む
皇妃は焦っていた。

第3皇子アーロン・サンダースが再び皇城に戻ってきた。

皇妃は息子を皇帝にするため何度もアーロンを殺そうとしてきた。

皇后が産んだ第一皇子は既に死に、皇妃が産んだマキシム第2皇子が、当然のように皇太子に選ばれると思っていた。マキシムより10年遅れて産まれたアーロンは、難産で実母を亡くした。年齢も若く母親もいない。皇后が養育することになったが、第3皇子が息子の脅威となると思っていなかった。

アーロン第3皇子が、成人してから風向きが大きく変わった。能力が高く、皇后からの信頼も厚いアーロンは、諸外国との交渉を含め重要な実務を任される事が多くなった。
外交先の貴族や王族からの評判も高い。金髪で整った顔立ちの第3皇子の支持層は急拡大し、婚約を申し込んでくる姫や貴族が日に日に増えて行った。

対して、息子のマキシムはもうすぐ30歳を超えても重要な役職を任されず遊び惚けている。

いくら、皇妃の母国であるモンタスア国が後押ししても、帝国と敵対行為を繰り返すモンタスア国に賛同する貴族は少なかった。

城を離れたタイミングで、アーロンに何度も刺客を送り込んだ。

母国にインダルア王国のルキア王子が長期滞在していることが分かってからは、インダルア国を誘導し、第3皇子を弑逆させようとした。

負傷を負わすまでは至るが、第3皇子も危険を察知し名前を伏せ、身を隠すようになり、暗殺自体が難しくなってきた。

そんな中、ダイヤモンド宮に入り浸っている息子が病にかかった。
春先でまだ寒い中、女と水遊びをして、体調を崩し何日も高熱で寝込んでしまった。

息子の女遊びは皇妃が制御できない程、噂になり挽回できそうにない。

皇帝と皇后の支持は、皇太子になる為に必要不可欠だ。どうにかしなければならない。

皇妃はワイングラスを傾けながら、物思いにふけっていた。

「皇妃様。第3皇子を監視している者が、皇子が黒髪の女を自室に連れ込む所を確認しました。女は皇城の使用服を着ていたそうです」

「そう。ふふふ。使用人ねえ」

ダイヤモンド宮は、他国や貴族の賓客が滞在する場所で、侍女長以外の侍女や使用人は各国が雇った部外者だ。

だが、皇城の使用人達は違う。中には貴族の子女も含まれ、皇后の管理下におかれている。

「アーロンが、皇城の使用人に手を出した場面を皆が発見したら、、、」

どうやらわずかだが、勝機が回ってきたみたいだ。

「第3皇子部屋の監視を強めて。誰一人見逃さないように。明け方第3皇子の部屋にできるだけ人を集めて頂戴。私は、親愛なる皇后様を迎えに行かなければ」

(何度も息子の事を偉そうに注意してきたけれど、それも終わりだわ。貴方が育てたあげた自慢の皇子の評判が地に落ちる場面を一緒に見物しましょう)

皇妃は、芳醇なワインを飲み干し笑った。

「ふふふふ。楽しみだわ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バイバイ、旦那様。【本編完結済】

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
妻シャノンが屋敷を出て行ったお話。 この作品はフィクションです。 作者独自の世界観です。ご了承ください。 7/31 お話の至らぬところを少し訂正させていただきました。 申し訳ありません。大筋に変更はありません。 8/1 追加話を公開させていただきます。 リクエストしてくださった皆様、ありがとうございます。 調子に乗って書いてしまいました。 この後もちょこちょこ追加話を公開予定です。 甘いです(個人比)。嫌いな方はお避け下さい。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

いくら時が戻っても

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。 庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。 思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは――― 短編予定。 救いなし予定。 ひたすらムカつくかもしれません。 嫌いな方は避けてください。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

婚約者が他の令嬢に微笑む時、私は惚れ薬を使った

葵 すみれ
恋愛
ポリーヌはある日、婚約者が見知らぬ令嬢と二人きりでいるところを見てしまう。 しかも、彼は見たことがないような微笑みを令嬢に向けていた。 いつも自分には冷たい彼の柔らかい態度に、ポリーヌは愕然とする。 そして、親が決めた婚約ではあったが、いつの間にか彼に恋心を抱いていたことに気づく。 落ち込むポリーヌに、妹がこれを使えと惚れ薬を渡してきた。 迷ったあげく、婚約者に惚れ薬を使うと、彼の態度は一転して溺愛してくるように。 偽りの愛とは知りながらも、ポリーヌは幸福に酔う。 しかし幸せの狭間で、惚れ薬で彼の心を縛っているのだと罪悪感を抱くポリーヌ。 悩んだ末に、惚れ薬の効果を打ち消す薬をもらうことを決意するが……。 ※小説家になろうにも掲載しています

リアンの白い雪

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。 いつもの日常の、些細な出来事。 仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。 だがその後、二人の関係は一変してしまう。 辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。 記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。 二人の未来は? ※全15話 ※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。 (全話投稿完了後、開ける予定です) ※1/29 完結しました。 感想欄を開けさせていただきます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

政略結婚だけど溺愛されてます

紗夏
恋愛
隣国との同盟の証として、その国の王太子の元に嫁ぐことになったソフィア。 結婚して1年経っても未だ形ばかりの妻だ。 ソフィアは彼を愛しているのに…。 夫のセオドアはソフィアを大事にはしても、愛してはくれない。 だがこの結婚にはソフィアも知らない事情があって…?! 不器用夫婦のすれ違いストーリーです。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

処理中です...