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皇妃は焦っていた。
第3皇子アーロン・サンダースが再び皇城に戻ってきた。
皇妃は息子を皇帝にするため何度もアーロンを殺そうとしてきた。
皇后が産んだ第一皇子は既に死に、皇妃が産んだマキシム第2皇子が、当然のように皇太子に選ばれると思っていた。マキシムより10年遅れて産まれたアーロンは、難産で実母を亡くした。年齢も若く母親もいない。皇后が養育することになったが、第3皇子が息子の脅威となると思っていなかった。
アーロン第3皇子が、成人してから風向きが大きく変わった。能力が高く、皇后からの信頼も厚いアーロンは、諸外国との交渉を含め重要な実務を任される事が多くなった。
外交先の貴族や王族からの評判も高い。金髪で整った顔立ちの第3皇子の支持層は急拡大し、婚約を申し込んでくる姫や貴族が日に日に増えて行った。
対して、息子のマキシムはもうすぐ30歳を超えても重要な役職を任されず遊び惚けている。
いくら、皇妃の母国であるモンタスア国が後押ししても、帝国と敵対行為を繰り返すモンタスア国に賛同する貴族は少なかった。
城を離れたタイミングで、アーロンに何度も刺客を送り込んだ。
母国にインダルア王国のルキア王子が長期滞在していることが分かってからは、インダルア国を誘導し、第3皇子を弑逆させようとした。
負傷を負わすまでは至るが、第3皇子も危険を察知し名前を伏せ、身を隠すようになり、暗殺自体が難しくなってきた。
そんな中、ダイヤモンド宮に入り浸っている息子が病にかかった。
春先でまだ寒い中、女と水遊びをして、体調を崩し何日も高熱で寝込んでしまった。
息子の女遊びは皇妃が制御できない程、噂になり挽回できそうにない。
皇帝と皇后の支持は、皇太子になる為に必要不可欠だ。どうにかしなければならない。
皇妃はワイングラスを傾けながら、物思いにふけっていた。
「皇妃様。第3皇子を監視している者が、皇子が黒髪の女を自室に連れ込む所を確認しました。女は皇城の使用服を着ていたそうです」
「そう。ふふふ。使用人ねえ」
ダイヤモンド宮は、他国や貴族の賓客が滞在する場所で、侍女長以外の侍女や使用人は各国が雇った部外者だ。
だが、皇城の使用人達は違う。中には貴族の子女も含まれ、皇后の管理下におかれている。
「アーロンが、皇城の使用人に手を出した場面を皆が発見したら、、、」
どうやらわずかだが、勝機が回ってきたみたいだ。
「第3皇子部屋の監視を強めて。誰一人見逃さないように。明け方第3皇子の部屋にできるだけ人を集めて頂戴。私は、親愛なる皇后様を迎えに行かなければ」
(何度も息子の事を偉そうに注意してきたけれど、それも終わりだわ。貴方が育てたあげた自慢の皇子の評判が地に落ちる場面を一緒に見物しましょう)
皇妃は、芳醇なワインを飲み干し笑った。
「ふふふふ。楽しみだわ」
第3皇子アーロン・サンダースが再び皇城に戻ってきた。
皇妃は息子を皇帝にするため何度もアーロンを殺そうとしてきた。
皇后が産んだ第一皇子は既に死に、皇妃が産んだマキシム第2皇子が、当然のように皇太子に選ばれると思っていた。マキシムより10年遅れて産まれたアーロンは、難産で実母を亡くした。年齢も若く母親もいない。皇后が養育することになったが、第3皇子が息子の脅威となると思っていなかった。
アーロン第3皇子が、成人してから風向きが大きく変わった。能力が高く、皇后からの信頼も厚いアーロンは、諸外国との交渉を含め重要な実務を任される事が多くなった。
外交先の貴族や王族からの評判も高い。金髪で整った顔立ちの第3皇子の支持層は急拡大し、婚約を申し込んでくる姫や貴族が日に日に増えて行った。
対して、息子のマキシムはもうすぐ30歳を超えても重要な役職を任されず遊び惚けている。
いくら、皇妃の母国であるモンタスア国が後押ししても、帝国と敵対行為を繰り返すモンタスア国に賛同する貴族は少なかった。
城を離れたタイミングで、アーロンに何度も刺客を送り込んだ。
母国にインダルア王国のルキア王子が長期滞在していることが分かってからは、インダルア国を誘導し、第3皇子を弑逆させようとした。
負傷を負わすまでは至るが、第3皇子も危険を察知し名前を伏せ、身を隠すようになり、暗殺自体が難しくなってきた。
そんな中、ダイヤモンド宮に入り浸っている息子が病にかかった。
春先でまだ寒い中、女と水遊びをして、体調を崩し何日も高熱で寝込んでしまった。
息子の女遊びは皇妃が制御できない程、噂になり挽回できそうにない。
皇帝と皇后の支持は、皇太子になる為に必要不可欠だ。どうにかしなければならない。
皇妃はワイングラスを傾けながら、物思いにふけっていた。
「皇妃様。第3皇子を監視している者が、皇子が黒髪の女を自室に連れ込む所を確認しました。女は皇城の使用服を着ていたそうです」
「そう。ふふふ。使用人ねえ」
ダイヤモンド宮は、他国や貴族の賓客が滞在する場所で、侍女長以外の侍女や使用人は各国が雇った部外者だ。
だが、皇城の使用人達は違う。中には貴族の子女も含まれ、皇后の管理下におかれている。
「アーロンが、皇城の使用人に手を出した場面を皆が発見したら、、、」
どうやらわずかだが、勝機が回ってきたみたいだ。
「第3皇子部屋の監視を強めて。誰一人見逃さないように。明け方第3皇子の部屋にできるだけ人を集めて頂戴。私は、親愛なる皇后様を迎えに行かなければ」
(何度も息子の事を偉そうに注意してきたけれど、それも終わりだわ。貴方が育てたあげた自慢の皇子の評判が地に落ちる場面を一緒に見物しましょう)
皇妃は、芳醇なワインを飲み干し笑った。
「ふふふふ。楽しみだわ」
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