[完結]想ってもいいでしょうか？

39

話しかけてきたのは、共にナリアお嬢様の侍女をしていたロキシーだった。果物が入った籠を持っている。

「心配したわよ。ルミー。アーロン殿下に連れていかれたって聞いたのに、全然帰ってこないのだもの。貴方大丈夫だったの？」

「ええ、大丈夫よ。アーロン殿下から逃げたの。でも、お嬢様の所に帰りづらくて、今は別の所で働いているの」

「まあ、そうなの。よかったわ。アーロン殿下と言えば交流会の後、ひどい熱にうなされて、まだベッドから起き上がれないそうよ。皇妃が酷くお怒りで、ルミーを探しているらしいわ。ダイヤモンド宮にいる群青色の髪の使用人は皆皇妃が連れて行かれたのよ。ルミーの方が被害者なのに。酷いわよね。あなた、本当に気を付けてね。」

ルミアは、ぞっとしながら群青色の鬘を手でなぞり頷いた。

「ありがとう。ロキシー。貴方も気を付けて。ナリアお嬢様は目的の為には手段を選ばない方だわ」

「そうよね。今回の事で私達もお嬢様の元を離れようかと思っているの」

「私、今皇后宮にいるの。よかったら訪ねて来て。いい待遇を保証するわ」

「ふふふ。ありがとう。ルミー」

ダイヤモンド宮へ向かうロキシーを見送って、ルミアは皇城１階の通路を皇后宮へ向かって歩いていた。

赤い大きなドアの前を通り抜けようとした時、ルミアは、急に手を引かれ、ドアの中に引き込まれた。