上 下
12 / 45

11

しおりを挟む
「離して、離してよ」

ヒューーーーードーン

ルミアは必死に叫ぶが、来春祭最終日の花火の音にかき消される。

「大人しくして煩いわね」
「本当に忌々しい子」

ドン

首元に強い衝撃を受け、ルミアは意識を失った。
(約束があるの、今日だけは、、、、)






バシャー

頭から冷たい水をかけられ、ルミアは強制的に意識を取り戻した。

「キャア、ハアハア」

黴臭く、薄暗い冷たい室内はどうやら地下牢のようだ。すえた匂いと共に死臭を感じる。

鉄格子の向こうで、二人の姉姫達が口を歪めながら笑っている。
「惨めで汚いドブネズミちゃん」
「貴方みたいな子は地下牢がお似合いね」

「「クスクスクスクス」」

「離して、ここから出して。どうしてこんな事をするの!」


ルーナ姫は、黒光りする長い鞭を持ち、ルミアを思いっきりたたきつけてきた。

バシィ。

「どうして?アーロン皇子はね。私達を選ばなかったの。黒髪の娘が欲しいのですって」

鞭を渡されたリーナ姫は、愉悦の籠った笑みを浮かべながら、思いっきりルミアの背中を鞭で打ち付けた。

ビシィ。

「もちろんルミアの事じゃないわ。貴方は塔から出た事がないでしょ。ただ気に入らないの」

二人は、交互に鞭を持ちながら、ルミアを鞭でたたきつけてくる。

バシィ。

「お母様の言った通り、黒髪の娘は淫乱で不幸を招く」

ビシィ。

「もっと早く気づけばよかった。黒髪の娘は皆死ねばいい」

バシィ、ビシィ、、、

ルミアの母を酷く憎むリリアンナ妃とそっくりな狂気な瞳で、ルーナ姫とリーナ姫がルミアを睨みつけて言った。
「ルミア、この国には黒髪の娘は少ないわ。異国の血を引く証だから早死にするのかしら」
「ルミア、もう春だけど、この地下牢はとても夜寒くなるわ。ずぶ濡れで夜を越せるかしら」

「ふふふ。仕方ないわね。汚いドブネズミだもの」
「ふふふ。死んでもいいわね。少しだけ国が綺麗になるわ」

「「ふふふふふふふ」」

ルミアを牢に閉じ込めたまま、二人の陰険な姫と従者は去っていった。

ルミアの足には鎖がついており、背中は血だらけで、体はずぶ濡れになっている。地下牢には着替える衣服も体を覆う毛布もない。外につながる小さな小窓から、遥か彼方に浮かぶ満月が見えた。

「助けて、お願い誰か。ここから出して。約束があるの。絶対にいかないと。お願い誰か」

いくら叫んでも、どんなに願っても返事は帰ってこない。

「お願い。何もいらない。ただ私は、、、」

手足が冷たくなってきた。少しでも暖を取ろうと体を丸め、足指を手で覆い何度もさする。

「ただ、ロンに逢いたい。」

震えながら横になり、ルミアはゆっくりと意識を手放した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

次は絶対に幸せになって見せます!

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢マリアは、熾烈な王妃争いを勝ち抜き、大好きな王太子、ヒューゴと結婚したものの、結婚後6年間、一度も会いに来てはくれなかった。孤独に胸が張り裂けそうになるマリア。 “もしもう一度人生をやり直すことが出来たら、今度は私だけを愛してくれる人と結ばれたい…” そう願いながら眠りについたのだった。 翌日、目が覚めると懐かしい侯爵家の自分の部屋が目に飛び込んできた。どうやら14歳のデビュータントの日に戻った様だ。 もう二度とあんな孤独で寂しい思いをしない様に、絶対にヒューゴ様には近づかない。そして、素敵な殿方を見つけて、今度こそ幸せになる! そう決意したマリアだったが、なぜかヒューゴに気に入られてしまい… 恋愛に不器用な男女のすれ違い?ラブストーリーです。

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

女騎士と文官男子は婚約して10年の月日が流れた

宮野 楓
恋愛
幼馴染のエリック・リウェンとの婚約が家同士に整えられて早10年。 リサは25の誕生日である日に誕生日プレゼントも届かず、婚約に終わりを告げる事決める。 だがエリックはリサの事を……

こわれてしまいそうな恋心

橘祐介
恋愛
切なさや愛おしさ、そしてうれしさを描写した詩集です。 ちょっと疲れている方、癒されたい方、そして恋をしている方のために…。

悪役令嬢の幸せ

深月カナメ
恋愛
いつもは側に来ない貴方がなぜか、側にいた。

【取り下げ予定】アマレッタの第二の人生

ごろごろみかん。
恋愛
『僕らは、恋をするんだ。お互いに』 彼がそう言ったから。 アマレッタは彼に恋をした。厳しい王太子妃教育にも耐え、誰もが認める妃になろうと励んだ。 だけどある日、婚約者に呼び出されて言われた言葉は、彼女の想像を裏切るものだった。 「きみは第二妃となって、エミリアを支えてやって欲しい」 その瞬間、アマレッタは思い出した。 この世界が、恋愛小説の世界であること。 そこで彼女は、悪役として処刑されてしまうこと──。 アマレッタの恋心を、彼は利用しようと言うのだ。誰からの理解も得られず、深い裏切りを受けた彼女は、国を出ることにした。 一方、彼女が去った後。国は、緩やかに破滅の道を辿ることになる。

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~

岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。 本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。 別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい! そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

「好き」の距離

饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。 伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。 以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。

処理中です...