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来春祭最終日は、朝からとても忙しかった。
ルミアは、城を離れる準備をしていた。古ぼけたボストンバックに普段着と母のドレス、数枚の金貨と銀貨、宝石を入れた。母が残してくれたものも、塔からもっていきたい物も少ない。母が生きていた時は、ルミアでも王女として扱われていた時があった。ルミアが持っている王女の衣装は刺繍や宝石が縫い込まれた美しい物だが、どれも子供用でもう着る事はないだろう。美しいが使えない衣装から取り外した宝石は、帝国までの旅費の足しになるかもしれない。国外へ出てからロイへ渡そうとルミアは思っていた。
昨日までに何人かの使用人仲間に、城を離れる事を告げた。ボンさんは驚き、とても心配そうだったが、納得しているようだった。
ボストンバックを持って塔の裏口へ持っていく。もうすぐ約束の時間になる。1階につき、ボストンバックを裏口へ置き、長い螺旋階段を見上げた。
きっともう帰ってこない。
螺旋階段の最上階には、まだ母がいるような気がする。美しい深紅の衣装を着て舞うように歩き、遥か彼方を見ながらただ涙を流す哀れな母が、、、
「さようなら。もういくね」
ルミアが塔から離れようとした時、
『ドン、ドン、ドン』
塔の正面玄関が強く叩かれた。
ルミアは、城を離れる準備をしていた。古ぼけたボストンバックに普段着と母のドレス、数枚の金貨と銀貨、宝石を入れた。母が残してくれたものも、塔からもっていきたい物も少ない。母が生きていた時は、ルミアでも王女として扱われていた時があった。ルミアが持っている王女の衣装は刺繍や宝石が縫い込まれた美しい物だが、どれも子供用でもう着る事はないだろう。美しいが使えない衣装から取り外した宝石は、帝国までの旅費の足しになるかもしれない。国外へ出てからロイへ渡そうとルミアは思っていた。
昨日までに何人かの使用人仲間に、城を離れる事を告げた。ボンさんは驚き、とても心配そうだったが、納得しているようだった。
ボストンバックを持って塔の裏口へ持っていく。もうすぐ約束の時間になる。1階につき、ボストンバックを裏口へ置き、長い螺旋階段を見上げた。
きっともう帰ってこない。
螺旋階段の最上階には、まだ母がいるような気がする。美しい深紅の衣装を着て舞うように歩き、遥か彼方を見ながらただ涙を流す哀れな母が、、、
「さようなら。もういくね」
ルミアが塔から離れようとした時、
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塔の正面玄関が強く叩かれた。
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