[完結]想ってもいいでしょうか？

プロローグ

星一つない暗闇を眺めながら、ルミアは一人涙を流した。

この世界のどこかにきっとあの人がいる。

逢いたくて、逢いたくて、逢いたくて仕方がない。

何度も後悔する。

でもどうしたらよかったのか、どうしてもわからない。

暗闇に目を凝らし、どこかに光を見つけようとルミアは外を見つめ続けた。





１８歳の時、ルミアは帝国から訪れている使者の一人であるロイと出会った。ルミアは出会ってすぐにロイに惹かれていった。城内の迷路庭園で、何度もロイと話をした。
インダルア王国の来春祭は１週間かけて開かれる。初日にロイから告白されたルミアはすぐに、ロイと一緒に帝国へ行く決心をした。
インダルア王国には愛してくれる家族もいない。使用人仲間に別れを告げて、来春祭最終日にロイと待ち合わせをして、王国から出ていくつもりだった。



だけど来春祭最終日ルミアは待ち合わせ場所に行くことが出来なかった。




何度も、何度も後悔する。

どうしたらよかったのか何度考えても分からない。

もうロイはいない。

毎日ルミアはわずかな期待を胸に待ち合わせ場所へむかう。

もしかしたら、また使節団が訪れるかもしれない。

もしかしたら、ロイが迎えに来てくれるかもしれない。

もしかしたら、


桜が舞い散り、灼熱の太陽に耐え、紅葉が終わっても貴方は帰ってこない。

あの日待ち合わせ場所へ行けなかったのはルミアだ。

戻って来るはずがない。

本当は分かっている。

もう二度と私の元へ貴方は帰ってこない事を。

雪の結晶がキラキラ輝きながら落ちてくる。

頬についた結晶はすぐに溶けて流れ落ちる。

私の涙と一緒に。

まだ、あと少し。

ううん、一生でも、私が朽ち果てるまで。

貴方の事を想ってもいいでしょうか？