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限界離婚≪再≫

通じない言葉

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拓也は、妻の真理に離婚を告げられて驚愕した。

内心の驚きを表に出さず、いつものように微笑んだまま拓也は言った。

「離婚だなんて、どうしてそんな我が儘を言うの?」

その言葉を聞いた真理は不快そうに顔を顰めて拓也に罵ってくる。

「貴方は自分以外の人の気持ちを考えた方がいい。どうしてそんな言葉を言うの?我が儘だなんて!私は限界なのよ。もう実家に帰らせてもらいます。」

そういい、妻の真理は荷物を纏めて実家へ帰っていった。

拓也は困った。

今真理と離婚するわけにはいかない。

正直妻の真理は、声が大きく拓也の邪魔ばかりしてきて不快だった。

だけど、結婚生活がうまく行かないと、また母から叱られる。

それに、臨床医の仕事もなぜか上手くいかない事が多い。

妻に手伝ってもらわないといけない。だが、なぜか以前の妻である麗奈が出来た事を、新しい妻の真理は出来ないと言う。

同じ拓也の妻なのに、、、

なぜか、、、



拓也は、勇気を出して真理の実家に電話をかけた。

「すみません。妻がそちらに帰っているかと思いますが、、、、」

電話に出た義父は拓也に告げてきた。

「ええ、真理が帰ってきました。事情を聞きましたが、私も先生の発言や行動はどうかと思います。真理は離婚を決めているようです。」

拓也は、辛かった。

またここでも、拓也が悪いと言われている。

「僕は、、、、、」

義父は拓也に言う。

「私の見込み違いでした。これからの先生のご活躍を祈っています。」





拓也は過去に告げられた沢山の言葉を思い出す。

拓也の父は院長をしている。穏やかな父は時折拓也を心配そうに見て言ってくる。
「本当に医者になるのか?できるのか?辞めてもいい。」

拓也の母は、拓也に何度も言う。
「貴方は頭がいい。瑠蛇総合病院を継ぐのは貴方よ。従弟に負けないように勉強しなさい。貴方ならできるはずよ。」

父の妹の小児科医をしている叔母は拓也に言う。
「本当に大丈夫?好きな事をしたらいいのよ。辛かったら逃げてもいい。無理しないで。」

何かが違う。

医者をしている父と叔母は、拓也が医師を目指すと決めた時、険しい表情をしていた。母だけは、拓也が医師になれると信じている。

拓也だって自信がない。

ディスカッションで飛び交う沢山の言葉を聞き取れず、ちぐはぐな返答をして注意を受ける事がある。

真面目に書いたレポートを指摘され上手く修正できずに困る事が何度もある。

周りに怒られる事を恐れて、誘われるまま付いて行った先で病気を移されたり、意図しない出費が増えたり思い通りにいかない事も多い。

こんな自分が医師になれるのか?

以前は、麗奈が拓也の苦手な所をフォローしてくれていた。

麗奈がいれば、、、、

もう一度麗奈と、、、






拓也は、麗奈の元へ向かった。

また一緒に暮らそう。結婚できなくてもいい。

拓也は麗奈に助けて欲しかった。

今まで何度も麗奈が拓也を助けてくれたように、、、、




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